マネジメント

 平成24年度の統計によれば、フランチャイズ・チェーンの数・店舗数はともに増加傾向にあり、教育・介護など、従来とは異なる業種のフランチャイズ化も進展しています。そんな中でにわかに浮上してきたのが、「独占禁止法」に絡んだ問題です。今回は、株式会社セブン–イレブン・ジャパン(以下、セブン–イレブン)の事例を基に、フランチャイズ展開におけるブランド戦略のあり方について考察します。

 

セブン-イレブンのフランチャイズで起きた問題

 

 セブン–イレブンは、顧客からの信頼を得るために、統一性のある事業イメージの確立を志向してきました。そのため、各加盟店に対し、セブン–イレブンのブランドイメージに即した商品陳列、品揃え、在庫管理などを徹底的に指導してきたのです。

 この指導は、時として、加盟店オーナーにとって過酷なものでした。

 例えば、オーナーの中には、在庫の廃棄で経営が苦しくなるのを避けるために、見切り販売(販売期限直前の商品を特価で割引販売すること)を希望する向きもありました。しかし、セブン–イレブンは、事前の研修においてブランドイメージの確保を優先させ、見切り販売を避けるよう助言・指導を行ったほか、店舗のレジシステムについても、見切り販売を行うためには通常とは異なる入力が必要な仕様にしていたのです。

 加えて、いくつかの加盟店舗に対しては、「見切り販売をしたら店を続けられない」といった、脅しにも聞こえるような指導も行っていました。

 こうした行為について、公正取引委員会は、「優越的地位の濫用」と判断。それらの行為を止めるようセブン–イレブンに命じました。

 そして、この命令を機に、セブン–イレブン側の圧力で見切り販売の取りやめを余儀なくされた4人の加盟店オーナーが合計1億4千万円近い賠償金の支払を求める訴えを起こしたのです。

【解説】

セブン-イレブンのブランド志向が招いた災い

 

 東京高裁は、セブン–イレブンに対し、4人の加盟店オーナーに合計1140万円の賠償金の支払を命じる判決を言い渡しました。

 賠償金こそ請求額に比べ低額だったものの、判決には、原告の4人が10年近くにわたり見切り販売を不当に制限されていたことが明記されました。これは、各加盟店舗で指導に当たっていたセブン–イレブン社員のブランド志向が強過ぎた結果と言えるでしょう。

 セブン–イレブン事件の判決で、東京高裁は次のような興味深い指摘をしています。

 (1)発注精度を高め、廃棄商品を減らしていくことがセブン–イレブンという「のれん」の価値を高め、加盟店もこれを享受することができるとの考えに基づき、見切り販売を勧めずに、できる限り推奨価格を維持して販売することを助言・指導するにとどまる場合は優越的地位の濫用には当たらない。

 (2)助言・指導の域を超えて経営判断に影響を及ぼす事実上の強制を加え、見切り販売の取りやめを余儀なくさせることは、優越的地位の濫用に当たる。

 (3)研修期間中の指導や、レジシステムの導入自体を、組織的な見切り販売の妨害と評価することはできないが、ブランドイメージの協調と相まって、加盟店オーナーとしては見切り販売が嫌忌されているという認識が相当強くなっていたと推認される。

 

判決はブランド戦略に配慮の面も

 

 セブン–イレブンのようなフランチャイザーにとって、ブランド志向・戦略はフランチャイズ化で収益を上げるための土台を成すものです。

 上述した「(1)」の指摘は、そんなフランチャイザーのブランド志向・戦略に一定の配慮を示したものと言えるでしょう。

 それに対し、「(2)」の指摘は、「経営上の判断に影響を及ぼす事実上の強制を加えるような指導」を行ってはならないことを示しています。セブン–イレブン加盟店のようなフランチャイジーにとっては、ブランドの庇護下にありながら、独自の経営判断が下せる点が大きなメリットです。「(2)」は、そうした利点を潰さないような配慮をフランチャイザーに求めているわけです。

 さらに興味深いのは、「(3)」の指摘です。ここでは、組織全体に対する研修・指導、レジシステムの導入自体は、ブランド戦略の一環として許容されるとしながらも、そうした組織的な取り組みが徹底されている以上、個別的な助言・指導には慎重を期すべきとしています。

 要するに、セブン–イレブン事件で原告の賠償請求が認められた大きな理由も、4人のフランチャイジーに対する個別的な助言・指導に配慮がなかったためとも言えます。

 セブン–イレブン事件は最高裁に上告されており、その判決に注目が集まります。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る