マネジメント

人材育成① 当事者にとっては、言い訳の内容こそが〝事実〟

 仕事上で何かトラブルが起こると、「クライアントがわがままで……」とか、「上司から言われていなかったので……」などと、言い訳を重ねる人というのは珍しくありません。聞かされる立場からすると、言い訳は責任逃れの発言としか思えませんし、そのたびにイライラする方も多いのではないでしょうか。中には「言い訳するんじゃない!」とつい怒りを顕わにしてしまう、という方もいらっしゃるかもしれませんね。

 子どもの場合、言い訳はまさに日常茶飯事。なぜかと言うと、彼らが、「大人に依存して生きている」というゆるぎない事実の前で、自己防衛本能を働かせているからにほかなりません。そんな彼らに対し、例えば「イタズラしたからおやつはなし!」などという生活を脅かすような対応を続けていると、自分を守るためのさらに巧妙な言い訳を重ねるようになります。そういう意味では大人の場合も「ミスをしたら減給」などといった厳しいルールは言い訳を助長することになりかねませんから注意が必要です。

 ただ、大人の場合、言い訳のコアにあるのは、「他責」であり、それは当事者意識の欠如の表れとも言えます。大人たちの間違った対応によって子どものころに備えた自己防衛本能が、やがて「つねに自分に非はない」と思い込むメンタリティーに形を変えるのではないかと私は考えます。

 つまり、子どもでも大人でも言い訳の発端は同じ。そして、本人に言い訳の自覚がないのは、彼らにとってそれこそが〝事実〟だからです。

 「言い訳」を聞く側は、そこで本当は何か起こっていたのかを丁寧に見極める必要があります。

人材育成② 自分の選択ゆえの結果という認識が重要

 例えば、子どもが友だちをたたいてケガをさせたとしましょう。たたいたほうの子どもに理由を聞くと、たいてい「だって〜」と言い訳が始まります。その時大事なのは、その言い訳、つまりその子にとっての〝事実〟をまず受け止めること。「だって最初に〇〇君がたたいてきたから」と訴えたのであれば、「そうか、〇〇くんにたたかれてくやしかったんだね」と共感してあげることが大切です。

 その上で、「友だちをたたいた」という事実を振り返り、「言葉でやめてって言うとか、たたく以外の方法もあったんじゃないかな」と別の選択肢を提案して、解決方法は決して1つではないことを伝えていきます。そうすると、その中から、たたくという解決方法をとったのはほかでもない自分だ、ということを、子どもは次第に理解するようになっていきます。そういう対応を続けていれば、子どもはさまざまな問題の解決方法を学ぶと同時に、自分の行為は、ほかの誰でもない自分自身がそれを選択したゆえの結果であるという意識が身に付くのです。

 当事者意識に欠ける大人に対しても、同じような態度で接すると、効果があります。

 つまり、「そうか、お客さんがわがままなんだね」という言い訳の主にとって、最も重要な「事実」の部分にまずは共感します。その上で、トラブルの経緯を一つひとつ一緒に振り返ってみてください。

 そして「この段階で上司に相談する、という方法もあったよね」「この時、上司に同行してもらう判断をすべきだったのでは?」などと冷静に話をすれば、実は問題を未然に防ぐ手段はさまざまあったのだということを学びます。

 問題解決能力が高くない人の多くは、問題の解決方法を知らないだけ、というケースがほとんど。ですので、その方法を学ばせることには大きな意味があるのです。さらに、「そういう選択肢があったのに選ばなかった、もしくは違う選択をしたのは、ほかでもない自分である」ということに気付かせる必要があります。それによって、すべての責任がいつも自分以外にあるという発想を矯正し、仕事に対する当事者意識、ひいては責任感を育みます。

 そもそも当事者意識が欠如したままでは、本当の意味での仕事の楽しさなど感じることはできません。

 つまり、言い訳をする人というのは、何事においても「やらされ感」を払拭できていない人なのです。社員に仕事のやりがいを感じてほしい、楽しさを感じてほしいと願っているのであれば、まずは、当事者意識を育てること。そのためには、ある程度の責任を負ったうえでの達成感や成功体験を積ませるミッションを積極的に与えることが大切でしょう。

言い訳を受け止めた上で、「事実」を一緒に振り返る

 

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