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マクロ要因だけでは説明できない米国株上昇とは

 米国株の上昇が続いている。世界の主要先進国の中でも、米国株の上昇率は圧倒的に高い。そこで、米国株上昇の構造要因を探り、今後を展望する。

 世界を戦後最大の不況に引きずり込んだのは、リーマンショックの発信源である米国だ。ところが、リーマンショックの半年後に世界の株式相場は底を打った後、米国株の上昇率は他の市場よりも圧倒的に高い。2009年3月安値から今年8月末までの米国株の上昇率は233%(MSCI株価指数)と、欧州の140%、新興国の136%、日本の102%を大きくしのぐ。それも、米国の年間の株価上昇率は、10年15%、11年2%、12年16%、13年33%、14年8月末10%(年初来)と安定している。

 日本のそれは、10年1%、11年19%下落、12年22%、13年55%、14年8月末2%下落(同)と乱高下している。日本株は、アベノミクスの出発点である12年11月15日から14年1月8日の高値まで、わずか1年2カ月で86%も上昇したが、それ以外の時期は低迷している。

 米国株は、なぜこれほどまでに持続的に上昇しているのか。 第1に、米国の経済成長率が高いことが挙げられる。10〜14年の年平均経済成長率(14年はシティグループ証券予想)は、ギリシャ危機など大きな経済混乱があったユーロ圏が0・7%、東日本大震災と史上最高の円高があった日本が1・6%にとどまった。しかし、米国は2・1%とこれらよりも高い。つれて、企業業績も急速に回復した。

 第2に、シェール革命による原油生産の急増の恩恵が大きい。今年4月の米国のオイル生産量(日産)は1327万バレルと、サウジアラビアの1168万バレルを大きく上回り、世界最大だ(出所:EIA)。06年が831万バレルだったので、生産量は1・6倍に増加した。米国がオイルの純輸出国になるのも時間の問題だ。米国の経常赤字対GDP比は06年5・8%から18年には1・4%へと大幅に減少し、この分、経済成長率を押し上げる見込みだ。

 景気が回復して、かつFRBがマネーをふんだんに供給すれば、株価が上がるのは当然だ。ただし、こうしたマクロ要因だけでは、これほどまでの上昇を説明することはできない。例えば、経済成長率は新興国のほうが米国よりもはるかに高い。しかし、株価上昇率は、米国が新興国をはるかにしのぐ。金融緩和は、米国だけでなく、日本や欧州も積極的に実施している。

米国株上昇のミクロ要因とは

 マクロ要因だけで説明できなければ、ミクロ要因で説明するのが、株式市場のオーソドックスな分析手法だ。ミクロ要因は数多いが、最も重要なのは、企業業績と長期的な成長力だ。

 過去1年間(8月末)で、世界の株式時価総額増加額が最も大きいのが、グーグル(情報通信)の13兆円(時価総額は41兆円)、2位がフェイスブック(情報通信)の10兆円(同20兆円)、3位がジョンソン・エンド・ジョンソン(ヘルスケア)の7兆円(同30兆円)だ。ITや薬品などハイテク分野が米国の株価上昇をリードしている。

 米国の特徴は、新陳代謝が激しいことだ。米国のITと言えば、かつてはIBM、モトローラ、ゼロックスなどが代表的な企業であった。ところが、現在では、これらに代わって、アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾンなどが主力企業だ。フェイスブックは上場してわずか2年しかたっていないのに、時価総額は20兆円にも達している。アップルの時価総額は64兆円と、世界最大だ(トヨタ自動車の3倍以上)。

 ギリアド・サイエンセズと言っても、日本ではほとんどなじみはない。米国のヘルスケアと言えば、かつてはメルク、ファイザーなどが代表的な企業であった。感染症薬開発で急成長するギリアド・サイエンセズの時価総額は17兆円であり、過去1年間で8兆円増えた。

 情報通信では、米国外で最大の企業はサムスン電子(時価総額18兆円)であり、その後、中国の通信サービス会社のテンセントHD(同16兆円)、台湾の半導体メーカーTSMC(同11兆円)、インドのITソフトウエア会社タタコンサルタンシー(同8兆円)とアジア企業が続く。一方で、これらと比較して、欧州や日本の企業は小さい。

 日本の情報通信で最も時価総額が大きいのがキヤノンの4・5兆円。ヘルスケアで最も時価総額が大きいのが武田薬品の3・8兆円だ。これらは、米国のハイテク企業と比較すると著しく小さい。

 このように、バイオベンチャーやITベンチャーが続々と登場するのが、米国の特徴だ。米国の強みは、世界最高水準のハイテク企業やユニークなグローバル企業を生み続ける土壌を持つことだ。世界最多のノーベル賞受賞者を生む科学技術力、世界から流入する優秀な頭脳、スタンフォード大学を核とするシリコンバレー、それを支えるベンチャーキャピタルなどの豊富な投資資金など、米国は多くの強みを持つ。これらが変化しない限り、続々と登場するベンチャー企業が米国株をリードする構図に変化はあるまい。

 

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