文化・ライフ

 ヴァイオリニストとしての活動はもちろんのこと、芸人顔負けの歯に衣着せぬ発言に注目が集まり、テレビ番組出演などでも引っ張りだこの高嶋ちさ子さんをお招きしました。高嶋さんは、7歳と5歳の男の子の母親としても忙しい日々を送られていますが、その経験が音楽活動にも大きな影響を与えているようです。

高嶋ちさ子氏が長男の一言でシャチがテーマの新曲を制作

高嶋ちさ子

高嶋ちさ子(たかしま・ちさこ)
東京都生まれ。6歳からヴァイオリンを始め、桐朋学園大学を経て、1994年イェール大学音楽学部大学院修士課程アーティスト・ディプロマコースを卒業。97年に本拠地を日本に移した後は、フジテレビの軽部真一アナウンサーとの共同プロデュースによる「めざましクラシックス」をはじめ、トークとコンサートの両方が楽しめる「ちさ子の部屋」など多彩なコンサートを企画・プロデュースし、開催。演奏活動に加え、テレビなどの各種メディア出演、執筆なども行う。

佐藤 7月に新アルバム「COLORS」をリリースされました。このアルバムには自ら作曲された曲も収録されています。

高嶋 これまで10年に1曲ぐらいのペースで作曲してきましたが、今回は4曲の作曲に挑戦しました。

佐藤 「オーシャン・ブルー 〜ORCA〜」は息子さんのために書き下ろしたそうですね。

高嶋 そうなんですよ。シャチの兄弟愛を描きました。

佐藤 深い海を連想できました。

高嶋 これを作曲した時は、「曲書かなきゃいけないから邪魔しないで!」なんて子どもに言ったら、「シャチの曲を書いて」と、シャチが大好きな長男に頼まれたんです。

佐藤 それでシャチがテーマになったのですね。

高嶋 私は毎晩、子どもたちに「今日の反省と明日への教訓」を織り込んだ自作の〝日本作り話〟を即興で作って、聞かせているのですが、その中で披露した「シャチの物語」の曲が聞きたいと長男に言われたんです。シャチの兄弟が主人公で、兄が弟を助けるという内容です。私が兄とケンカばかりしていたので、息子たちには兄弟仲良くしてほしいという思いを物語にしました。

佐藤 アーティストらしい想像力を子育てに生かされているのですね。子育てと演奏活動の両立はご苦労もあるのでは。

高嶋 長男を出産してすぐ仕事に復帰し、コンサートに乳児を連れて行っていた頃は大変でした。コンサートの合間に授乳したり、体力的につらかったです。

スポンサー集めは高嶋ちさ子氏自ら営業して歩く

高嶋ちさ子佐藤 そうした経験が、高嶋さんが企画されるベビーカーに乳児を乗せたままで入場可能な「バギーコンサート」のアイデアにつながったのでしょうか。

高嶋 これは、ママ友から「家でヴァイオリンを弾いてほしい」と言われたことがきっかけです。乳児の頃からいろんな経験をさせたいというお母さまが多いんです。「コンサートにベビーカーで行ける?」「おむつを替えるスペースはある?」という問い合わせもあったので、すべて対応できるコンサートにしました。

佐藤 ママ友の声に応えた企画だったのですね。

高嶋 はい。会場にはベビーカーを試乗できるスペースや、バイオリンを弾くまねをして写真を撮るコーナーなども作りました。スポンサー集めが大変で、自分でベビーカーのメーカーなど10社以上を回りました。

佐藤 え! ご自身で営業されたのですか。先方は驚かれたでしょう。

高嶋 代理人に行かせても、私の思いは伝わらないので、自ら足を運びました。「ご本人が来るとは思いませんでした」と驚かれることもありました(笑)。私としても、スポンサーとして長くお付き合いしたいので、協賛金を出した分だけメリットを感じてもらえるようなことを必ず用意していました。

佐藤 素晴らしい! ビジネスの才能がありますね。

高嶋 どんぶり勘定なんで、とんでもないです(笑)。

演奏会で松田聖子さんの曲を弾くのも許される時代

高嶋ちさ子

佐藤 クラシック音楽のステージには、どのような感覚で挑まれているのですか。

高嶋 いまだに怖気づきますよ。

佐藤 今でも?

高嶋 はい。でも、自分で決めた道ですし、お客さまからお金をいただいて開く演奏会が「つまらない」と言われたら詐欺になりますから、楽しんでもらえるように努力しています。

佐藤 経営者が持つ感覚も似たところがあります。

高嶋 母に「あなたの仕事は人さまからお金と時間を頂いている。それを無駄にしてはいけない」と言われた影響があると思います。

 日本クラシック界は、国際コンクールに入賞していなければ人前で弾いてはいけないといった風潮があったのですが、今では私が好きな松田聖子さんの曲やアニメの曲を演奏会で弾くことも許される時代になったことをとてもうれしく思っているんです。

佐藤 それなら、クラシック音楽に対して敷居が高いと感じていた観客でも気楽に楽しめますね。高嶋さんは演奏活動以外にプロデューサー業にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。

高嶋 これも演奏活動と同じで、お客さまが楽しめるものを作りたいという思いでプロデュースしています。2006年から活動している「12人のヴァイオリニスト」も、「観ても、聴いても、美しく、楽しいヴァイオリンアンサンブル」をコンセプトにしています。2時間の演奏会を楽しめるように、曲目や衣装なども自分で考えるんです。

高嶋ちさ子氏の将来の目標とは

佐藤 今後挑戦してみたいことはありますか。

高嶋 将来、オーケストラを作りたいんです。

佐藤 それはすてき!

高嶋 「12人のヴァイオリニスト」が大きく発展していけばいいなと思っているんです。

佐藤 将来の目標につながっている活動だったのですね。

高嶋 はい。実現のためにはスポンサーも必要ですから今は、頭を下げなければいけない時かなぁと。

佐藤 高嶋さんは経営センスも兼ね備えていらっしゃるので、きっと実現できますよ。

高嶋 私にあるのは笑いのセンスだけですから(笑)。

佐藤 それも才能ですね!

高嶋 訓練のたまものです(笑)。アーティストの活動は、必ずしも世の中に必要なものではありません。でも人を傷つけない、人を喜ばせることができる仕事ですから、この道を選んでよかったと思いますし、私は仕事が大好きです。だから仕事が楽し過ぎて、家族に罪悪感を感じることもあるんです(笑)。


対談を終えて対談を終えて

アーティストである高嶋さんですが、対談途中、女性経営者と話しているように錯覚してしまうことがたくさんありました。やんちゃ盛りの男の子を育てながらの演奏活動やプロデューサー業にお忙しい高嶋さん。オーケストラを作りたいという夢に向かって突き進んでください。

 

 

 

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