国際

7年前からネット企業のサーバー監視を始めていたNSA

 米情報当局が市民の通信を盗聴していた疑惑がある、インターネット監視システム「プリズム」の余波が、報道から2週間たっても消えない。英紙ガーディアンと米紙ワシントン・ポストが6月5日から6日にかけて報じたものだ。

 プリズムは、米国に住む外国人と海外の市民が対象とされ、メールや電話などの通信が監視されているという。また、グーグル、ヤフー、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、スカイプなど、大手のインターネットサービス企業9社のサーバーも監視の対象となっていた。

 ワシントン・ポストは、プリズムを実施している米国家安全保障局(NSA)のアナリストが作成したスライドをオンラインに掲載した。

 スライドは、世界のインターネット利用者はほとんど、グーグル、フェイスブックなど米企業のサービスを使っているため、これらの企業が提供するサービスを監視すれば、テロリストの活動を事前に察知することができると説明するものだ。スライドでは、監視対象となるネットサービス企業のロゴまで刷られ、メール、チャット、ビデオ、写真、保存データ、ファイル交換、ビデオ会議、スカイプ通話などが監視できるとしている。いかに広範囲の市民のデジタルデータが監視されているか分かる、衝撃的なスライドだ。

 また、NSAが各企業の監視を始めたのは、マイクロソフトが最初で2007年から、グーグルとフェイスブックが09年、ユーチューブが10年、スカイプが11年からとなっている。実に過去7年あまりにわたって、インターネット企業のサーバーの監視が続いていたことになる。

 これらの資料と情報をワシントン・ポストとガーディアンにもたらしたのは、米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン氏。米ITコンサルタント企業ブーズ・アレン・ハミルトンからの派遣職員として、ハワイにあるNSAに勤務。その間に、NSAのプリズムについての情報を収集し、香港に逃亡して、 NSAと英諜報機関GCHQによる市民の監視システムを、ガーディアンのグレン・グリーンワルド記者にリークした。

 また、スノーデン氏は、香港滞在中、英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材を受け、ブーズ・アレン・ハミルトンに勤務したのは、NSAによる諜報活動の情報を得るためだったことを明らかにした。これに先立ち、今年1、2月にグリーンワルド記者らに、米政府の諜報活動について情報提供したいと持ち掛けていた。

「ヒーロー」か、政府をスパイした「国家の裏切り者」か

スノーデン氏の亡命を伝えるニューヨーク・タイムズスクエアの電光掲示板(写真:津山恵子)

スノーデン氏の亡命を伝えるニューヨーク・タイムズスクエアの電光掲示板(写真:津山恵子)

 スノーデン氏の「告発」に対して、米メディアや市民の反響は、真っ二つに分かれた。

 言論の自由とインターネットの自由を守ろうとする「ヒーロー」か、政府をスパイした「国家の裏切り者」か議論が続く。CNNの世論調査によると、52%の人が、スノーデンの告発を「支持できない」とし、「支持できる」としたのは44%だった。

 一方で、オバマ大統領の不支持率が54%と、11年11月以来、初めて5割を超え、政権に打撃を与えていることを示している。

 ベトナム戦争が長期化し、国家に負担がかかることを米政府要人が知りながら、戦争に介入した経過を暴いた「ペンタゴン・ペーパーズ」のコピーを米紙ニューヨーク・タイムズに提供した元軍事アナリスト、ダニエル・エルズバーグは、こう語る。

 「ペンタゴン・ペーパーズとともに、歴史上最も重要な告発は、スノーデンのNSA告発だ」

 これに対し、米誌ニューヨーカーのジェフリー・トービンは、コラムでスノーデン氏をこきおろした。

 「誇大妄想的なナルシストで、刑務所行きにうってつけだ」

 オバマ政権は、NSAの活動を支援するのに躍起となっている。NSAのアレグザンダー局長は議会証言で、01年の米同時多発テロ以降、プリズムを使って、米国など20カ国以上で50件以上のテロを未然に防ぎ、「米国と同盟国を守ってきた」と強調。オバマ大統領もこれを繰り返した。

 また、司法当局は、スノーデン氏をスパイ活動取締法違反で訴追し、香港滞在中に中国政府に身柄引き渡しを求めた。しかし、同氏は、香港からモスクワに出国し、エクアドルへの政治亡命を希望している。

 世界の主要航空会社が、スノーデン氏の香港からの出国を支援しない、と公表していたが、ロシアのアエロフロート航空は、スノーデン氏の出国を助けた。プーチン大統領も6月25日現在、スノーデン氏がモスクワの空港内にいることを発表し、米露関係に大きな影響を与えそうだ。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

グローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英語力の向上は大きな関心事の1つ。日本人が相変わらず英語を苦手とする理由と解決策について、英語学習アプリで展開するポリグロッツの山口隼也社長を取材すると共に、同社が提供するサービスについても聞いた。(取材・文=吉田浩)日本でますます高まる英語学習熱  201…

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る