[大型IPOの虚と実]
「市場の変化は激しいが、われわれの目標は変わっていない」--大塚周一(ジャパンディスプレイ社長)
2014年10月16日

ジャパンディスプレイは、日本のディスプレー産業の立て直しのために、産業革新機構(INCJ)の出資を受け、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶事業部門を統合し、2012年に誕生した。統合の成果を着実に積み重ね、当初の予定を前倒して今年3月に株式上場を果たした。上場時にはこの春の注目銘柄として株式市場の期待は高かったが、今年に入ってからのディスプレー市場の急変もあり上場後の株価は期待ほどには伸びていない。市場の変化が激しくなり、難しい舵取りが続く中、同社の現状と今後について、大塚周一社長に話を聞いた。
誤算はマーケット変動とタブレット需要の停滞

大塚周一(おおつか・しゅういち)
1951年生まれ、福岡県出身。佐賀大学理工学部物理学科卒業後、進工業を経て、80年日本テキサス・インスツルメンツに入社。98年ソニー入社、2002年エルピーダメモリ入社、04年同社取締役COO、11年6月退任。12年4月ジャパンディスプレイ代表取締役社長CEOに就任。
-- 現在の足元のビジネスの状況は。
大塚 今年の1〜3月から4〜6月にかけて、われわれは非常に厳しい状況にあるというのが、市場の一般的な認識だと思います。一番の問題はマーケットそのものがものすごいスピードで変化していることです。
この2年間のトレンドとして、中国メーカーの台頭があります。われわれは、グローバルなブランドメーカー向けにある程度のベースラインがあり、その上に中国メーカーの立ち上げを期待していました。ところが中国メーカー向けの売り上げは確かに増えていますが、グローバルメーカー向けの売り上げが大きく落ち込み、トータルで見ると飛躍できていない。それが大きな誤算となっています。
もう1つの誤算は、タブレットをもう少し期待していました。残念ながらスマートフォンが大型化する中で、この1〜3月あるいは4〜6月はタブレットが軒並み駄目になっています。ここはわれわれの期待をかなり外れたと思っています。
そういう動きがクイックに来ている中で、残念ながら結果的に季節要因のボラティリティーを吸収できませんでした。この7〜9月も一番大きなリスクは大口顧客向けの立ち上げがどのくらい順調に進むかですが、かなり厳しいというのが実態です。
-- この3月に上場しましたが、当初の予定をかなり前倒ししたと認識しています。それまでは順調だったのですか。
大塚 順調でした。しかし1〜3月あるいは4〜6月の落ち込みがひどかった。それまでの好調に比べると、1〜3月に相当大きくマーケットが動いたことは事実です。
1〜3月に720HDという規格の単価が約30%急落しました。これは、ある意味で仕掛けられていた可能性もあります。われわれが業界の中で出ようとしているところに対して、快く思っていない人たちもいますから。
-- 貴社はこの春の上場の期待銘柄の1つでしたが。
大塚 われわれもこんな状況になるとは、夢にも思っていませんでした。われわれが成長していくための資金調達手段として、株式上場は一番良い手段だと思っていますし、株式上場そのものに対しては結果的に正解だったと思っています。正解でしたが残念ながら株価を見た時に、株主の方々に対しては大変申し訳なく思っています。
市場の変化に対する備えができていなかったという点では、基本的にはわれわれの問題だと認識しています。
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