政治・経済

 春である。うちの慶応ビジネススクール(KBS)も卒業生を送り出し、新しい大学院生が100人余り入ってくる。

 ビジネススクールの学生というと、ぎすぎすした、アメリカナイズされ、カネのことだけ考え、常にカタカナとアルファベットの略語ばかり使って、要領が良く、戦略的で、パワーポイントのプレゼンだけうまくて中身がない、というイメージかもしれない。しかし、うちの学生はその対極だ。

 彼らは、全く戦略がない。この学校は全日制で2年間である。せっかく大企業に入ったのに30歳前後で退職して学び、パワーアップしても、就職先は、いわゆる大企業はあまりない。中途採用を積極的に行っている外資系とか目立たない中堅実力企業に限られる。卒業生は、それなりにいい就職をするが、彼ら、彼女たちはもともと優秀だから、うちに来なくても同じような就職はできたような気がする。だから、戦略的には、うちのビジネススクールに来たのは失敗なのである。

 それにもかかわらず、卒業生の満足度はものすごく高い。みんな来て良かったと言う。転職に大成功した学生も、しなかった学生も、本当に来て良かったと言って卒業していく。そして、みんな親友を得て、卒業していく。

 確かに30歳にもなって、親友を得るというのはなかなかないかもしれない。2年間も毎日授業があり、議論し、飲んだくれ、これ以上ないほど裸でぶつかり合う。まさに、戦友(敵はわれわれ教師か)、同じ釜の飯を食った友、というところだ。

 しかし、これは、当初から戦友を得ようとして、親友を得るために来たのでは得られなかったのではないか。皆がそんなことを期待せずに集まった集まりだからこそ、得られたのではないだろうか。

 人脈作りの異業種交流会では知り合いはできるが、友人はできない。下心で知り合った知り合いは使えるネットワークではない。

 日本企業は戦略がないとよく言われる。しかし、戦略がないからこそ、価値のある発明、技術は生み出されるのではないか。合理的な投資、エネルギーの投入では、ブレークスルーは生まれない。理屈を超えた技術に対する愛、製品対する献身、そういったものが素晴らしい技術や製品を生み出すのではないか。

 現代は不透明な時代。だからこそ、戦略的な戦略は役に立たず、ひたすら真摯に目前の問題にぶつかり、製品や顧客を愛することからしか、新しいイノベーションは生まれないのではないか。

 

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