政治・経済

 日本の失われた20年とは何だろうか。

 一般的には、バブル崩壊後の1990年代を失われた10年と呼ぶが、結局今まで、経済の復活はないということで、失われた20年、あるいは25年が続いているという人もいる。

 その評価は分かれるところだろうが、この20年で確実に失われたものは、専門家、専門知識への敬意である。

 90年代は、大蔵省批判に始まる官僚不信、バブル崩壊からの金融不信となった。そして小泉氏引退後の政治不信、さらに原発事故後の電力会社、専門家不信。直近では、金融専門家の日銀への不信だ。インターネットメディアなどからの既存のメディア批判もプロのジャーナリストおよび報道機関への不信から生じたものかもしれない。

 この20年は、専門家がその権威を失い、世論は、専門家よりも利害関係が全くないと思われる素人の意見の方が信用できるということが暗黙のコンセンサスとなった。健全なる素人、という概念は確かにあるが、それは専門家集団に対するあくまでチェック機能としての役割にすぎない。それが、専門家の意見を聞かずに、素人の意見が、既得権益に縛られず、穢れなく美しいものだ、という考えに傾いてしまった。

 これは日本社会における最も大きな損失だ。すべての日本の専門的知識、技術などが社会に活用されなくなる。過度な現場重視、ボトムアップ重視、職人重視。こう批判すると、筆者が四面楚歌になるのは間違いないが、現場軽視ではなく、専門の最先端の知識に対する軽視に問題があると思う。大学教育への期待がないことは、大学側の要因もある。しかしもともと期待していない、ということにも問題がある。

 今後、これは日本がグローバルに戦っていく中で、最も致命的なボトルネックになると思われる。すべての分野での専門化、知識の高度化は世界の潮流である。

 昨今の金融政策の議論に見られるように、専門家に対する頭ごなしの否定、陰謀説に近い組織への批判は、その批判が妥当かどうかではなく、金融の専門家を、政治の専門家、つまり金融の素人が直接批判しているという構図にある。健全な議論は、専門家同士が議論を戦わせることである。現在のように政治の専門家やテレビのコメンテーターがよってたかって批判するというのは専門家への敬意不足、専門知識への不信から来ていると推測される。

 日本は、今後、時代を逆流していくことになるのだろうか。

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