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中国との価格競争で日本企業に勝ち目はない

 日本の輸出製造企業はアベノミクスの異次元の金融緩和による大幅な円安で軒並み業績を改善している。しかし、もっぱら円安頼みの業績改善は長続きしない。行き過ぎた円安は資材の輸入価格上昇をもたらすからである。

 何よりも、目下の円安局面でも業績が改善していない企業がある。その代表はソニーである。要するに、アベノミクスで日本企業経営の中身が本当に代わったかどうかを見極める必要がある。

 ソニーは2015年3月期の業績予想として当初500億円の赤字としていたが、2300億円の赤字に下方修正した。その原因について、ソニーは主力製品のスマホが中国メーカーの台頭により思ったより売れていないということを挙げた。ソニーのスマホが予想より売れていないのは事実だろう。しかし、それが中国メーカーの台頭のせいかどうかについて、もう少し検証することが必要である。

 中国のスマホメーカーの強みといえば、その安い価格である。「小米」(シャオミ)は中国スマホメーカーの代表である。しかし、小米スマホのすべてはアップルのiPhoneを「山塞」(シャンザイ)、すなわち、コピーしたものである。

 日本の製造企業はこれまで20年余り、とことんまでコストの削減に取り組んできた。コスト削減の目的は当該企業のバランスシートを改善するためであり、同時に、その製品の価格競争力を強化するためでもある。

 しかし、すべての日本企業が価格競争力を高めるには限界がある。そもそも、1人当たりGDPが3万ドル以上の日本で、企業は人件費をどんなに削っても、1人当たりGDPが7千ドル程度の中国の企業にはかなわない。日本企業にとって無駄を省くことは必要だが、行き過ぎたコスト削減は企業の体力も削ってしまう。コストは削減するのではなく、最適化するものである。

 多くの日本企業はコスト削減で価格競争力を強化しようとしたが、総合的な市場競争力が強化されていない。日本の多くのメーカーは数年に1度リストラを発表し進めてきた。しかし、従業員のリストラを発表すれば、優秀な従業員が外国メーカーにヘッドハンティングされるなど優れた技術が流失してしまう。韓国の半導体メーカーと中国の家電メーカーの技術基盤は、こうした日本企業からの「技術移転」の恩恵を享受してできたものである。

 今回、ソニーは業績悪化を受けて同じ対処法を発表した。すなわち、モバイル部門について1千人のリストラを実施するといわれている。

 1千人のリストラを実施すれば、バランスシートは幾分改善する可能性が出てくる。しかし、その効果は一過性のものであり、経営体質を改善しなければ業績がすぐさま再び悪化してしまうだろう。

新たなライフスタイル提唱ができなくなった日本企業

 そうすると、日本企業はもっと技術力を高めなければならないというのだろうか。残念ながら技術だけでは日本企業は助からないだろう。ここ数年、ソニーはすべての技術力を統合して研究・開発に取り組んできた。問題は、たとえ技術で製品の性能を改善しても、日本企業はそこで韓国製品や中国製品と差別化できなくなっていることだ。

 自動車を例にとれば、日本車と韓国車は性能的にどれほどの差があるのだろうか。そして、スマホについて、iPhone、小米スマホとソニーのスマホの性能を比較しても、ソニーはその技術力を誇示できていない。小米はその低価格を消費者に認知させることに成功した。問題は、iPhoneの一体どこが魅力的なのかという点にある。

 iPhoneのキーコンポーネントは、日本企業にアウトソーシングされている。それ以外の部品とアセンブリは中国企業に委託している。アップルはiPhoneの設計、デザインとアーキテクチャーのみ行っている。iPhoneを手に取った消費者はその性能のすごさだけでなく、洗練されたデザインと格好よさに心をとらえられている。

 スマホのような商品は、消費者にとって単なる通話の道具やインターネットにアクセスするツールではない。それをもって新しいライフスタイルを実現する可能性を入手するというところが魅力なのだ。メーカーは自分の消費者に新しいライフスタイルを提案できなければ、いずれ消費者に見放されてしまう。

 かつてソニーが元気だった時、大賀典雄社長の主導でウォークマンを開発し、人々のライフスタイルを変えた。大賀氏は半導体の専門家ではなく、クラシック音楽の大家だった。日本企業は20年以上にわたってとことんまでコストを削減した結果、経営者と従業員の心にゆとりをなくしてしまったのである。

 ゆとりのない人間が、消費者に新しいライフスタイルを提案するというのは無理な注文である。

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