政治・経済

5月の既存店売上高で、14カ月ぶりに対前年を上回ることとなった日本マクドナルドホールディングス(HD)。一見、最悪期を脱した感のある同社だが、そこに見えてきたのは、〝従来型のビジネスモデルからの脱皮〟という指摘もある。 (本誌/大和賢治)

回復要因は料金改定!?

 14カ月ぶりに既存店売上高が対前年比をクリアした要因について、日本マクドナルドHDでは「100~200円の価格帯商品を充実させた『バリューピックス』の導入や、期間限定で人気定番メニュー『チキンタツタ』の商品バリエーションを拡大させたキャンペーンが大きく貢献した」との見解を示した。

 景気低迷による価格競争の波に翻弄され続け、企業体力を消耗してきた外食各社の中にあって、〝一人勝ち〟といわれてきた日本マクドナルドHDだが、その業績に陰りが見えたのは、昨年4月のことだ。

 短期的な売り上げを確保するためのディスカウントを否定、低価格商品で集客を伸ばしながら、他の商品への購買を喚起し、客単価を上げるという戦略で成功を収めてきた同社のビジネスモデルは、景気低迷下で収入減に見舞われてきた消費者の高い支持を受け長らく好調を維持してきた。

 順風満帆に見えた同社ではあったが、昨年4月から既存店売上高の前年割れが一転して常態化。さらに成功モデルの根幹とも言える来店客数でも昨年11月からマイナス基調に陥り、以降、苦戦が続いていた。

 そんな厳しい状況にあった同社だが、5月にはようやく既存店売上高がプラスに転じたことから、最悪期は取りあえず脱したかにも見える。

 しかし、一方で、ある業界関係者は同社の見解に関し次のような疑問を投げ掛ける。

 「プラスに転じた要因は5月に実施した料金改定です。安定した売り上げを見込めるハンバーガーやチーズバーガーを値上げしたことが1つ。120~200円の商品バリエーションを持たせた『バリューピックス』にしても、要はこれまで100円しか払わなかった顧客に対し、目先を変えることで、プラス20~100円の購買を喚起することに成功したのです。この『バリューピックス』は、値下げ、据え置き、値上げが混在する商品群ですが、〝100円マック〟一辺倒の頃より、確実に売り上げの底上げに寄与しています。それを証拠に5月の数字を見ると客数が3・1%減になっているにもかかわらず客単価は逆に3・7%増になっている。5月の復調は商品値上げによる一過性の要素が強く、完全な回復基調に立ったとは言えない」

 確かに既存店売上高はかろうじて前年をクリアしているが、同社がこれまで成長の基本モデルとして位置付けてきた客数は依然として前年割れ、客単価の上昇で客数減少を補ったという見方もできる。

 そこで見えてくるのが、従来型のビジネスモデルからの若干の軌道修正である。来店客数を常に増加させるこれまでの戦略を踏襲しながら、商品単価を上げて同時に高い利益も確保したい意向が働いているのではないか。

 しかし、同社ではこの見方に対し、「すべての価格帯で常にバリュー・フォー・マネーを実現していくかが重要です。価格に関しても、これまでどおりお客さまを増やすための戦略的ディスカウントは実施しますが、短期的な売り上げを確保するためのディスカウントは今後も取りません。100~200円の『バリューピックス』にしても、500円台の『クォーターパウンダー』など、すべての価格帯で価格以上の高付加価値商品を実現していくのが重要なのです。高価格でもお客さまがサービスを含め満足していただければ次の来店動機につながるのです」(広報)と述べる。

 それでは、戦略にブレはないと言いながらなぜ、長期にわたる苦戦が続いたのか。巷間、中食強化を打ち出しているコンビニや牛丼に需要を奪われたなど要因は諸説、指摘される。同社の言う、付加価値を消費者に伝えるようなことができず、それが顧客離れを誘発したのだろうか。

成功モデルの転換期

 確かに最近の同社を見ていると、大々的な商品キャンペーンを実施しておらず、業績低迷の一因とも十分に考えられる。

 「マクドナルドが要因を認識しながらもテコ入れとなる新商品を投入しなかった背景にあるのは、昨年発売した海外のご当地バーガーを再現した『世界のマック』シリーズが不発に終わったことです。新商品を開発・発売するにはそれ相応な投資が必要となります。ただでさえ、本国から利益率が低いといわれている中で〝世界のマック〟の不発はダメージが大きかった。同社が新商品の開発に慎重になるのは当然です」(業界関係者)

 確かに、ここ数カ月の同社の商品戦略を見ると、5月31日から期間限定で発売した「ポークタツタ」は、人気の「タツタ」シリーズの派生型商品でチキンタツタの高いブランド力を生かした商品。

 また、6月24日から発売を開始している夏季限定商品「クォーターパウンダー BLT」、「クォーターパウンダー ハバネロトマト」も同様。ゼロベースから商品開発を行うのではなく、既存のブランド力を有効に利用しながら同時に投資を極力抑えたいという意向が見て取れる。

 特に「BLT」では、単価570円という同社で過去最高価格の商品。従来どおり、集客力にフォーカスしながらも、横にらみで客単価を高めていきたいという意図も見え隠れする。

 5月の数字だけを見れば復調の兆しが現われている。しかし、これら同社の商品戦略を見る限り、第2の成長モデルを模索しているのかもしれない。

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