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髙松富也・ダイドードリンコ社長に聞く「自動販売機市場の今後と創業家出身社長としての思い」

ダイドードリンコ社長 髙松富也氏

ダイドードリンコは商品の約9割を自動販売機チャネルで販売する清涼飲料メーカー。消費税増税やコンビニチェーンのカウンターコーヒーの出現など、競争環境はますます激化しているが、先代が築き上げた、主販路を自動販売機チャネルとする独自戦略に揺るぎはない。創業3代目にあたる髙松富也社長は、既存事業の深耕に加え海外進出など、新たな領域に挑戦する。

 

髙松富也・ダイドードリンコ社長プロフィール

髙松富也氏

髙松富也氏(たかまつ・とみや)―― 2001年京都大学経済学部卒業。同年三洋電機(現パナソニック)入社。04年ダイドードリンコ入社。08年取締役、12年副社長を経て14年4月に社長に就任。

 

 髙松富也氏が語る自販機市場 

 

自販機設置場所のシフトが安定的な収益源に

── 飲料メーカー、特に御社の主力商材である缶コーヒーは市場環境として、厳しい状況ではないですか。

髙松 まず、消費税増税という全体的な問題もありますが、缶コーヒー市場は特に厳しくなってきています。最近ではコンビニエンスストアで販売されるカウンターコーヒーの登場で受けた打撃が大きかったですね。1杯100円で、その場で挽いたコーヒーが買えるわけですから、それまでの常識にはなかったことです。

 缶コーヒーそのものもプライベートブランドが増えて、コンビニやスーパーでわれわれメーカーが置いていた棚が減少しています。

 このような流れは店頭販売に限らず、自動販売機の売り上げにも少なからず影響があると思います。

── そのような環境変化への対応策は。

髙松 1つは需要が減少しつつあるプルトップ型からボトル缶へのシフト、拡充があります。ボトル缶はキャップで締めることができるので、一度に飲みきらなくてもいい。プルトップ型よりやや高めの価格になりますが、持ち歩けるという点で新たなニーズが高まっており、実際に売り上げも伸びています。

── 主力の自動販売機は、競合メーカーも多く、設置場所も飽和状態ではないですか。

髙松 当社は、売り上げの約9割以上が自動販売機チャネルの飲料メーカーです。確かに自動販売機の設置台数はこのところ業界全体でも横這いで、飽和状態にあります。ただ、中身は変化しています。

 従来のロードサイド、商店の店頭に置くのではなく、オフィス内あるいは工場内に置く、インドアのロケーションへのシフトが起こっています。実はここが安定的な売り上げなのです。

ブランド力向上を目指して小売店の販売にも注力

── 他社に負けない工夫はどうですか。

髙松 自動販売機台数は当社が28万台で業界3位ですが、当社は自動販売機チャネルが主力ですので、いかに差別化していくか、付加価値を高めていくかということは常に考えています。

 自動販売機は大きなイノベーティブな変化があまりない機械なので、差別化が難しい。でも当社では、例えば「当たり付き」の自動販売機があります。

 これは、当社だけが持つ独自の機能です。他にも、ポイントカード付き、「いらっしゃいませ」「午後も頑張ってください」といったおしゃべり機能付きとか、お客さまを飽きさせない機種も数多く設置しています。おしゃべり機能付き自動販売機は、地域に合わせて方言で話す機能もあります。ポイントカード付きの自動販売機は、当社が設置している自動販売機の3割程度を占めています。

髙松富也・ダイドー社長

「ヘルスケア、健康関連市場にもさらに力を入れていきます」

 

── 自動販売機に注力するという戦略は、今後も変わらないのですね。

髙松 自動販売機にはもちろん力を入れていくのですが、ブランド力の向上という意味も含めて小売店での販売にも力を入れていきます。

 看板商品の「ダイドーブレンド」のリニューアルの他、「ゆずレモン」といった果実系飲料、それにハーブティーやアジアンティーといった他社にはない商品を投入していくことで、飲料メーカーの中でもユニークなポジションを強めていきたいと思っています。

 2年前にダイドーブレンドを全面リニューアルした際には積極的にTVCMも打って、ブランドの認知向上を図りました。どの小売店の店頭にも必ずダイドーブレンドが置かれている状況をつくりたいと思います。

 

 髙松富也氏が語るダイドーの戦略 

 

モスクワ市に自動販売機1万台を設置へ

── 自動販売機の売り方もさまざまな方法があるようですね。

髙松 そうですね、例えば缶コーヒーを買うお客さまが自動販売機で商品を選ぶ時に、どのような買い方をしているのかについて「アイトラッキング」という方法で検証しました。お客さまは、ディスプレーの左上からZの文字のように順繰りに目が動くといわれていたのですが、検証したところ左下から見ているという結果が出ました。従来の常識は間違っていたのです。そこで、主力商品を左下に配置したところ、売り上げが大きく伸びました。

 また、省エネ機能も進歩していて、数年前の機械に比べて半分程度の消費電力になっています。東日本大震災の直後に計画停電が実施された時、自動販売機は電気の無駄使いだという声が多く聞かれました。実際はそれほどでもなかったのですが、それをきっかけに今まで以上の省エネ化に取り組みました。自動販売機の省エネはここまで進んでいますというアピールも積極的に行っています。

── 海外へも積極的に展開されているようですね。

髙松 6年前からロシア極東のウラジオストクに百数十台の自動販売機を展開しています。その結果、当社商品も現地で十分に受け入れられることが分かってきました。

 現在はモスクワ市で、本格的に展開しようと準備しています。昨年1年間、テストマーケティングを実施して、日本製品に対して非常に良いイメージが浸透していることが分かってきました。現地の製品が60ルーブルで販売しているところを80ルーブル(日本円で約230円)で販売しても受け入れられます。実際のところ、最初は自動販売機で飲料を買うという文化が受け入れられるのか不安があったのですが、テスト販売の結果、日本と変わらない良好な結果が得られました。

 また、モスクワ市では現在、市内に飲料などの自動販売機を増やす計画があります。市内の路上には小さな売店がたくさんあるのですが、これが景観を乱しているという判断で、撤去される方向です。その後、自動販売機に順次切り替えていくという施策を打ち出しているのです。そういった条件も重なって、モスクワ市への本格参入を決めたのです。

 今はまだ100台程度ですが、2018年をめどにモスクワ市で1万台の自動販売機を展開したいと思っています。いずれは現地のニーズに合わせた商品の開発なども視野に入れていきます。

── 新規事業の計画などはありますか。

髙松 現在の中期経営計画では、新規事業で270億円の売り上げを作っていくという計画です。具体的には飲料以外の食品、健康関連市場を視野に入れています。既にある健康食品、サプリメント関連は通信販売ルートで約4億円の売り上げがありますが、健康食品事業は将来的にも有望なので、今後も一層力を入れていきます。

医薬品製造の知見を生かして展開

── M&Aも積極的に行っていくのですか。

髙松 12年にゼリーで有名な㈱たらみ(本社・長崎市)を買収しました。たらみは非常にブランド力がある会社ですから、その力を生かして新商品、新カテゴリーの商品開発を考えています。既に、たらみと共同でゼリー飲料を開発して一緒に販売しています。

 また、たらみは、当社の弱点だったコンビニエンスストア、スーパーなどの小売店に圧倒的なシェアを持っていますので、その販売チャネルを飲料でも活用していこうと考えています。流通各社と一緒になったキャンペーンなどもやりやすくなるでしょう。中期経営計画の新規事業で270億円という達成目標は、自社のリソースだけでは実現が難しい。そこで今後ともいいご縁があれば積極的にM&Aを検討していきます。

「飲料を自動販売機で買う文化は海外でも通用することが分かりました」

「飲料を自動販売機で買う文化は海外でも通用することが分かりました」

 当社はもともと大同薬品工業というバックボーンがあり、医薬品製造の知見がグループ内にあるのです。それを生かして、飲料から食品、医薬品までのポートフォリオを埋めていくイメージを持っています。ヘルスケア、健康関連市場は、今後拡大していくと思いますので、そこでも当社の強みを生かした展開をしたいと思います。

 

創業家出身社長として髙松富也氏が思うこと

 

── 創業家3代目の社長となりますが、経営を引き継ぐということは昔から意識されていたのですか。

髙松 最初に入社したのは三洋電機でした。いずれは会社を継ぐと意識しておりましたので、まずは異業種を経験しておきたかったのです。広告代理店やコンサルティング会社への就職も考えたのですが、最終的にはモノを作っている会社が良いと思ったのです。三洋電機では、主に人事部門にいました。

── 同族で社長を引き継ぐ上でのメリットやデメリットを感じたことはありますか。

髙松 創業家出身なので求心力が働き、グループ全体でも分かりやすい社長交代だったという点は良かったと思います。会社全体の一体感を高めることもできますし、企業文化やグループ理念を浸透させていくためにも、創業家出身の社長はやりやすい立場だと思っています。

 一方、ガバナンス強化の意味で今期から初めて、社外取締役を2名選任しました。江崎グリコ取締役専務執行役員の江崎悦朗さんと社外監査役だった弁護士の森真二先生です。社外の取締役が入ると、取締役会に良い意味で緊張感が生まれます。従来、当たり前だった内容に質問があって、きちんと説明しなければならない。議論のポイントも少しずつ、変化してきていると思います。取締役会は確実に活性化しており、それが会社全体にもいい影響を与え始めていると感じています。

 そういった意味で、私の社長就任も、会社全体が大きく変革するためのターニングポイントになるのではないかと思っています。

 既存事業を発展させつつ、新しい分野にもチャレンジしていくには異なった視点も求められます。次の時代へ向けて飛躍できるよう努力します。

 
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