マネジメント

医療機器の販売、医療用システムの構築を主業務とするサンユーメディカル。先代社長の後を引き継いだ木下敦氏は日立製作所のシステム開発の部署で働いた経験を持ち、そのノウハウで会社に新たな息吹を取り入れた。その変革は現在も進行中で、先代とは違った新たな領域を切り拓こうとしている。

 

サンユーメディカルの沿革と事業概要

 

── まず、御社の概要をお聞かせください。

サンユーメディカル社長の木下敦氏。2012年9月、父・木下 靖氏より承継

サンユーメディカル社長の木下敦氏。2012年9月、父・木下 靖氏より承継

木下 当社の設立は1972(昭和47)年で、父が創業したのですが、その源流には祖父の存在があります。戦後間もなく、医療関連の会社を創業したのですが、具体的には東大病院などに通いつめて、使用済みの注射針を集めてきて研磨して納めるというような仕事をしていたそうです。

 祖父の考え方は、「人がやっていないことを率先してやろう」というもので、その精神は今の当社にも引き継がれています。紆余曲折があって、当時の祖父の会社はなくなりましたが、現在の会社は父が興したものです。

── 医療機関が使用する器材の卸業ですね。

木下 医療機器であったり、医療用の材料、例えば手術などで使うさまざまな材料の販売、卸しが主業務です。他には院内の物流管理、そして大学病院などから独立開業される先生向けには開業支援サービスもあります。

 他に、独占的に医療用の「クロックス」の正規ディーラーでもありますし、「Ai-met NEO(アイメットネオ)」という頭蓋変形矯正ヘルメットの開発を行っています。

 

木下敦氏のサンユーメディカル社長就任と新たな取り組み

 

頭蓋変形矯正ヘルメット「アイメットネオ」

頭蓋変形矯正ヘルメット「アイメットネオ」

── 医療用のシステム開発も事業化されているそうですね。

木下 私は大学を卒業後、日立製作所のシステム開発部門で働いていました。その時は、父の後を継ぐと決めていたわけではありません。しかし父が突然、体調を崩したため、私が入社せざるを得なくなったのです。

 その時考えたのは、医療機器の販売だけでは限界があるということです。長年、それ1本でやってきたのですが、当社でも新しいイズムを取り入れなければならない。

 そこで、まず医療用の「クロックス」の正規ディーラー業を始め、「人がやっていないことを率先してやろう」の精神を会社に根付かせました。そして、メーカーに近い発想で頭蓋変形矯正ヘルメットの開発にも取り組んだのです。システム開発もその一環で、現状とは違う新しい分野に挑戦したのです。

── 具体的には、どのようなシステムですか。

作業効率の向上のために創意工夫が求められるピッキング

作業効率の向上のために創意工夫が求められるピッキング

木下 システム開発を始めたのは、今から20年ほど前のことですが、当時、病院経営にいわゆる経営的視点はほとんどありませんでした。

 例えば1人の患者さんから得られる収入は簡単に把握できますが、その患者さんの治療に掛かった支出は分からない。

 また、手術ひとつに掛かった原価さえ、分からなかったのです。経営としてこれは課題であると感じたので、それぞれに掛かった経費や収入が分かるようなシステムを作ったのが最初です。それを手始めに院内の物流管理、運用システムなどの受託開発を行っています。

 収入と支出を明確にして利益を確保するという経営感覚は、今日では当たり前ですが、病院はそれが得意ではない。そこをわれわれがシステム運用という形でお手伝いしたのです。

 現在、当社は組織改正でホールディングスになって、システム開発はクリオ・メディシスという関連会社で行っています。開発する運用システムは特許を取っており、単にシステムの導入だけではなく院内業務のアウトソーシングを受けて、一括で受託することが増えています。

 当社の考え方の基本は、同じ医療に携わる企業として「患者さんのためになる」というのは当たり前なのですが、それに加えて、「病院のためになっているか」という意識を常に持っているかどうかです。

 

木下敦氏が語るサンユーメディカルの未来 

 

── 先にお話がありました頭蓋変形矯正ヘルメットというのはどのようなものですか。

木下 新生児のまだやわらかい頭蓋骨の変形を矯正するものです。これは一つ一つ、オーダーメードです。水頭症などの病気はもちろん、いわゆる絶壁といわれる頭も新生児のうちにこのヘルメットを使えば矯正できますので、徐々に普及してきました。

── 最後に今後の展望をお聞かせください。

木下 基本は、患者さんのためになることを第一に考えてやってきましたが、そうなるとどうしても量よりも質を追求しがちです。しかし、これからは質を維持したまま、量を増やしていかなければなりません。

 将来についてですが、私自身は、実は社長の椅子には全く固執していなくて、5年後には退くつもりでいます。無責任に聞こえるかもしれませんが、その間に、当社が次世代も生き残れるような会社になるべく“大工事”をしたいと考えています。

 例えばその一環が、頭蓋変形矯正ヘルメットやシステム開発なのですが、これらの部門をさらに強化しながら、新しい領域にも挑戦したいと思っています。それが、後継者としての私の任務だと思っております。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る