テクノロジー

問われる再生可能エネルギー導入の本気度

 さる9月24日に、九州電力から「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について」という文書が発表されました。内容は、再生可能エネルギー(以下「再エネ」)の申し込みが、約1260万キロワットになり、このままでは、冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時などには、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需給バランスが崩れ、電力を安定して届けられなくなるかもしれないので、しばらく、再エネの接続の申し込みに対する回答を見送るというものです。

 要は、思った以上に再エネの発電量が多くなり過ぎたので、それを受け入れられなくなったということ。その後、追随する電力会社が4社あります。

 東日本大震災直後に、太陽光発電に期待が高まった際に、一部では、太陽光発電では、原発一基分の発電をするためには、山手線内に太陽光パネルを敷き詰めることになり、土地の限られた日本では現実的ではないとの指摘がなされました。今回、九州電力で申し込まれた約1260万キロワットという発電容量は、そのすべてが太陽光発電だとして、稼働率12%をかけても、原発約2基分に匹敵します。九州管内だけで、山手線内2つ分の太陽光発電施設を設置したいという要望がきたということです。

 さらに、まだ接続申し込みがされていない認定設備はもっとたくさんあるので、そういう意味では、この日本でも、それだけの再エネを導入するだけの土地があったと喜ぶべきですが、今の送配電設備ではそれらを受け入れられないというわけです。

 今年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、「わが国が目指すべきエネルギー政策」として、「再生可能エネルギーの導入加速化」が明記されました。そうした方針を掲げている国において、再エネの導入が、想像以上に進んだので、ちょっと待ってくれというのが正しいことなのでしょうか。本気で、再エネを推進するのであれば、足踏みを考えるのではなく、それは進めたまま、何ができるかを、国が考えるべきではないでしょうか。

再生可能エネルギーの〝発電し過ぎ〟問題にどう対応するか

 では、国が本気になったとして、具体的に、再エネ発電が急激に増加することへの対応はどうすればいいのでしょうか。

 送配電側の対応として、短期的にも、予測技術の精度化による需給調整、広域運用や揚水発電の活用などの措置は取れるはずですし、中期的には、送配電設備の増強を図っていくということが考えられるでしょう。

 さらに、需要が少ない時期に発電量が多過ぎることで停電が起こる可能性のある時期は、1年の中のごく一部だと考えられます。そのために多額の設備投資をするよりも、もっと効果的な方法が考えられます。発電予測の精度を高め、発電量が過剰になりそうなときに、再エネの発電所に発電を止めてくれれば、対価として〇〇円払うという制度を作る、あるいは、工場に対し、明日は需要が足りなさそうなので、電気をより使ってくれたら、いくら払いますというメニューを作るという考え方もあります。

 要は、夏や冬の電力が足りない時期向けに考えられた需給調整システムの逆の制度を作ればいいのです。震災後の3年間で、デマンドレスポンス(電力が逼迫した時に需要を抑制する)やネガワット(電力が逼迫した時に需要を抑えるとお金がもらえる)といった仕組みが広がってきました。従来の電力の供給側が需要に合わせるという発想を転換したわけです。これは、この再エネが発電し過ぎの問題にも使えるはずです。

 なお、これらのネガワットやデマンドレスポンスの仕組みは広がってきたものの、実際に発動される機会はあまりないようです。当初、懸念されていたほど、電力の需給の逼迫という事態は生じなかったからです。同様に、再エネの発電が多過ぎて、需要を上回る事態は頻繁に起こらない可能性も高いと思います。

  [連載] エネルギーフォーカス 海外では、スペインが2020年に40%、ドイツが30年に50%、米国のカリフォルニア州は20年に33%という目標を掲げ、その実現を前提として、系統運用も含め、何が必要かを検討し、実現に向けて進んでいます。そして、一部の国では、再エネが基幹電源となっています。日本も、高い目標を掲げて、実現に向けて邁進すべきです。

 その際、決して、フォロワーになる必要はありません。日本こそが、世界に誇る停電が最も少ない送配電設備や系統運用の技術を持っているわけですから、それを武器に再エネの世界のトップランナーという目標を掲げてはどうでしょうか。目標を掲げて進むことが、国の大きな役割であり、そこには、一種の決断が伴います。再エネで世界トップという目標は、十分、その決断に値するものと考えます。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

会員制ホテルなどを展開するリゾートトラストは4月1日付でトップが交代し、創業者の1人である伊藤與朗会長は代表取締役ファウンダーグループCEOに就いた。共同創業者の伊藤勝康社長は代表取締役会長CEOとなった。伏見有貴副社長は代表取締役社長COOとなり、創業45年で初めて代表取締役3人体制となった。聞き手=榎本正…

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る