政治・経済

写真を中心としたコンテンツのライセンスビジネスを展開するゲッティ イメージズ。テレビや新聞などで同社クレジットの報道写真や映像を目にする機会も多い。同社の事業展開について日本法人社長の島本久美子氏に話を聞いた。 (聞き手・本誌/村田晋一郎)

グローバルでコンテンツを流通できる強み

―― 貴社のビジネスの概要は。

島本 当社は企業やメディア、広告代理店、制作会社向けに、写真を中心に動画、音楽などのデジタルコンテンツをライセンスしています。1995年にスタートし、世界で初めてオンラインで写真を検索・購入できるEコマースサイトを作りました。現在、一般的に使われている写真のライセンスモデルはある意味、当社が確立したものであり、オンラインでコンテンツをライセンスする先駆者と言えます。当初は宣伝や広告に使われるイメージ写真が中心でしたが、報道にも力を入れ始め、現在は動画、音楽も展開しています。

 当社の強みは、グローバル規模で著作物を流通できることです。当社が預かっているコンテンツの中には、有名なブランドがあります。

 例えば、IOCやFIFAの公認フォトエージェンシーになっていますし、MLBやPGAでは試合中の写真を商業目的で利用する場合、当社が独占的にライセンスできます。これら名の通っている機関が当社にコンテンツを預ける理由は、グローバルで提供できる会社がほかにないからです。当社は著作物をどういう価格でどういうライセンスにすれば、うまく早く流通させることができるかというノウハウを持っています。

 また、オンラインならではの特性があります。ひとつはライセンスの価格に幅広いバリエーションがあります。例えばグローバルでテレビのCMに使う時の価格と、自営業の方が自社のウェブサイトに使う価格とでは、同じ写真でも人が目にする範囲が異なるため、価格が非常に細かく分かれています。それもオンラインだからこそで、素材に合わせていろいろな価格のパターンが設定できます。

 さらに世界中のプロのデザイナーやジャーナリストが、毎日当社のウェブサイトに検索に来ます。彼らが検索するキーワードやダウンロードされた画像などを分析することで、今どういったコンテンツを市場が求めているのかという情報がどこよりも集まる会社なのです。その情報をフォトグラファーに伝えたり、カバーしていない素材を持っている会社を探して提携したりしています。

―― 写真の提供に関して、他の通信社に対する強みは。

島本 報道写真については、基本的に写真だけでいかにニュースを伝えられるかというスタンスです。報道はスポーツから始めましたが、普通の新聞社や通信社が撮るスポーツの写真と、当社が撮るスポーツの写真には、大きな違いがあります。例えば、単に試合の勝ち負けが分かるような写真ではなく、当社の写真は試合中の臨場感を伝えることを目的としています。今では各通信社が逆にこのスタイルを真似するようになってきました。当社は常に新しい撮り方、ニュースをビジュアルで伝える方法を心掛けています。

 オフィシャルフォトエージェンシーだからできることですが、昨年のロンドンオリンピックでは天井にカメラを設置し、例えば、カンヌ映画祭のレッドカーペットでも他社のフォトグラファーが立つ位置と当社のフォトグラファーが立てる位置は違っています。被写体に合わせてさまざまな写真の入手の仕方とライセンスがグローバルで提供できます。

日本のコンテンツを海外に出していくために

―― 日本での展開は。

島本 日本で伸ばしていきたいことは2つあります。日本でストックフォトを利用している企業はまだまだ少なく、市場が非常に小さいです。ストックフォト市場は軽く5倍に拡大してもおかしくないと思います。

 特に日本企業が海外に出ていく場合、ビジュアルをもっと効果的に使っていかなければいけません。今はブランドの構築が難しい時代になっています。日本の場合はテキスト中心のプレスリリースがほとんどですが、それでは海外ではほとんどニュースになりません。インパクトのあるビジュアルも併せて提供しない限りはニュースにならないのです。逆にビジュアルが良いからニュースになるケースも非常に多いです。日本の企業がグローバルでブランドを構築するために、当社が少しでも貢献していきたいと思います。これがまず1つ。

 もう1つは、世界で日本のことが忘れられないように、日本のニュースが世界でもっと取り上げられるために日本のビジュアルのニュースがどんどん海外に出ていくようにしていきたいです。私は長い間、当社の欧州における報道ビジネスの責任者をやっていました。日本から海外に出ていくビジュアルがあまりにも少ないがために、日本のことがニュースにならないケースが非常に多いです。そこは日本人として問題意識をすごく感じていました。

 海外においてもっとニュースになるためには、もっとビジュアルを提供していかなければいけないと思います。そのために朝日新聞や産経新聞、共同通信などと提携していますが、今後も報道機関との提携は増やしていきたいと思っています。それは日本のコンテンツの輸出にもつながると思います。

―― 日本での目標は。

島本 日本のストックフォトの市場を今後3~5年で5倍にしていきたいです。そのための啓蒙活動をいろいろとやっていきます。それに合わせて当社の売り上げも伸びていくと期待しています。

 コンテンツについては、当社が扱っている静止画は全体で1億3千万枚ですが、日本からのコンテンツはわずか0・4%です。日本のコンテンツが海外でもっと使われていくためには、5%くらいまで持っていかなければいけないと思っています。

 日本はコンテンツを多く作っている国ですよね。それなのにどうして海外に出していかないのかという思いがあります。いろいろな会社と提携していきながら、何かの時点で変化をもたらしたいと思っています。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る