マネジメント

銀行融資を受けるには、まず銀行員の言葉を記録すべし

 銀行は、企業との対話の内容をすべて記録しています。対する企業はどうかと言えば、銀行に何を話したかをしっかり記録している経営者と、そうではない経営者がいます。

 ただし、銀行員の発する言葉には、「スムーズに融資を受けるためのヒント」や、「融資返済の減額・猶予といったリスケジューリングを継続してもらうためのヒント」などが内包されています。

 また、銀行員との対話の中で、「こうしてください」といった指示を受けるケースもあります。例えば、融資継続の相談の中で、「今期は是が非でも経常利益を黒字にしてください」、あるいは「3カ月に1回は試算表を提出してください」といった要求を耳にするかもしれません。

 このような銀行員の言葉をしっかり受け止めることは、融資や返済のリスケジューリングを継続させるうえでとても大切なのです。

 実のところ、融資審査の稟議書に本部からのコメントや指示が添えられることがあり、銀行員が発する言葉は、そうした本部からの指示に基づいている場合があります。

 しかも、銀行の稟議書には、そうした指示・コメントが記録として残されており、企業からの融資の申し込みがあるたびに、それらの記録すべてが参照されます。

 したがって、仮にあなたの会社の前回審査の稟議書に、「今期の黒字を死守させること」といった本部のコメントが付されていたにもかかわらず、実際には赤字だったならば、新たな融資審査は非常に通りにくくなるのです。

 ですから、銀行員が発する言葉--とりわけ、指示に類する言葉は、一言一句、聞き漏らしてはなりませんし、記録しておくべきなのです。

銀行融資の極意① 自分の言ったことも忘れずに

 銀行員は、企業との対話の際に過去の打ち合わせ記録を参照しようとします。特に、銀行内で話をするときはその傾向が強まり、銀行の各支店には、顧客ごとの打ち合わせ記録が保管されています。

 銀行内での打ち合わせの場には、融資係長や支店長が出てくることがあります。言うまでもなく、彼らは、見なければならない顧客企業の数が数百に上り、個々の企業と話をするときには、打ち合わせ記録に頼らざるを得ません。

 そのため、例えば、前回の打ち合わせで、あなたが「今期は○○の売り上げを1億円にする」と言ったなら、融資係長や支店長は、前回の記録を見ながら、「社長、○○を今期1億円売り上げると言っておられましたが、達成できそうですか」と聞いてきます。そのとき、あなたが前回の発言内容をすっかり忘れていて、何も答えられないと最悪です。自分の発言に責任が持てない経営者と見なされ、銀行は融資に慎重になってしまうのです。

 そんな事態に陥らないためにも、銀行に自分が言った内容はしっかりと覚えておくことが肝心です。

 ちなみに、銀行では2〜3年に1回という高い頻度で人事異動があります。それも、かれらが、顧客との打ち合わせ記録を大事にする理由です。

銀行融資の極意② 常にメモを取る習慣を

 上の記述からも分かるとおり、銀行との打ち合わせ内容は常にメモに取り、記録として残しておくことが重要です。

 また、複数の銀行と付き合いがあるのなら、銀行ごとに対話記録を作っておくことをお勧めします。また、メモは必ず分かりやすい文章に起こして時系列で整理し、過去の打ち合わせの経緯がすぐに把握できるようにしておきましょう。

 また、対話の記録には、打ち合わせをした日付・時間・場所はもとより、「銀行の誰と話をしたのか」や、雑談の内容、その日の天候なども記しておきます。そうすることで、打ち合わせの本筋のみならず、場の雰囲気を記憶にとどめておくことができるからです。

 さらに、銀行との打ち合わせに臨む際には、前回の内容はもとより、過去の打ち合わせ内容について必ず復習しておくべきです。

 そして、例えば、前回の打ち合わせにおいて、銀行から「売り上げが年々下がっていますが、取引先の変化はありますか」といった疑問が投じられていたなら、次の打ち合わせまでに、現在の状況や打開策を分かりやすく示す資料を用意し、しっかりとした説明ができるようにしておきます。そうすれば、銀行の話に真摯に耳を傾け、経営に生かす経営者として、銀行から高く評価されるはずです。

 銀行は融資先の信用格付を行っています。

 この格付では、決算書などの定量部分と、経営者の能力などの定性部分が点数化されていますが、銀行との対話の内容を記憶(記録)し、言われたことに適切に対処する経営者の評価は当然高くなり、結果として、会社の信用格付もアップしていきます。

 銀行との関係は、あなたの会社の資金繰りを左右します。是非、彼らとの対話を記録し、銀行との関係強化に生かしてください。

 

筆者の記事一覧はこちら

経済界電子版 銀行関連の記事一覧はこちら

経済界電子版 金融関連の記事一覧はこちら

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

 企業経営者にとって「理念」や「志」が大事とはよく言われるものの、今一つピンと来ない向きも多いのではないだろうか。成功した経営者がいくら精神面の重要性を説いても、日々の現実と格闘している経営者にとっては、ただの綺麗ごとに聞こえてしまうかもしれない。 それでも、ビジネスを成功させるために最も大切なのは「志」だと…

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年3月号
[特集] 令和女史のリーダー哲学
  • ・元谷芙美子(アパホテル社長)
  • ・石黒不二代(ネットイヤーグループ社長)
  • ・小巻亜矢(サンリオエンターテイメント社長)
  • ・石渡美奈(ホッピービバレッジ社長)
  • ・戸田泰子(理化電子社長)
  • ・吉本新喜劇で初の女性座長は「イキらず、驕らず、高ぶらず」の支えるリーダー
  • ・敏腕ヘッドハンターが語る リーダーに求められる力は使命感に裏付けられた勇気
  • ・本と映画に学ぶ女史たちの生き様
[Special Interview]

 橋本聖子(女性活躍・東京五輪・男女共同参画担当大臣)

 女性が輝く新時代へ 政治家もOne Team

[NEWS REPORT]

◆CESでコンセプトカーを発表 ソニーが自動車メーカーになる日

◆アマゾンと提携したライフ 新規顧客獲得は成功するのか

◆ゴーン被告逃亡の影響は? 内田誠・日産新社長の前途

◆血液によるがん診断で日本の医療費は高騰する

[特集2]

 スタートアップ!関西

 日本の起業家たちが関西に注目する理由

ページ上部へ戻る