政治・経済

 先の民主党政権の際、センセーショナルな〝仕分け〟が話題となりテレビでも連日その模様が放映された。仕分けそのものは決して否定しないが、政権のスタンスには大きな疑問があった。即ち、「自民党のやってきた55年体制のすべてが悪い、民主党政権はそのすべてをいったん否定した上で新しい時代を切り拓くのだ」というスタンスだと私は感じた。

 しかし、国民は戦後一時の期間を除いて自民党政権を支持してきた。したがって自民党の多くの功績は国民自身が認めるところであった。

 さて、私は5年前、カルビーの会長兼CEOの職に就いた。直ちに着手したことが棚卸しと仕分けだった。当事カルビーは苦境にあったわけでもなく、特に大きな問題に直面していたわけでもなかった。強いて挙げれば、売り上げの成長が鈍化し利益が1%台と極端に低かったことだ。

 しかし、これはカルビー固有の問題でなく、日本の多くの食品会社における共通の問題で、あえて言うなら、〝低成長・低収益を問題としない〟業界共通の意識と体質の問題だった。ところが海外に目を向けると食品産業は利益率の高い産業でグローバルのスタンダードは営業利益率15%であった。私の前職は世界最大のヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人の社長だった。その高成長・高収益の外資系医療産業から飛び込んだ私の目から見れば、この低利益率はただただ悲しい驚きだった。

 そこで、就任直後、2日間をかけて社外の施設にカルビーとグループ会社の幹部約50人を招き、カルビー60年の棚卸しと仕分けを行った。新米の私は極力口を挟まず、聞き役に徹した。

 まず過去60年間を振り返り(1)「良かったことは何か」を時間をかけてリストアップしてもらった。次にやはり同じくらいの時間をかけて(2)「良いことだけれどできていないことは何か」を、そして最後に、(3)「やっているけれど意味もなく時間と金のムダだからやめたほうがいいことは何か」をリストアップしてもらった。

 カルビーは当時でも日本のスナック業界ではダントツNo・1の企業であったから、良いことはたくさんあった。しかし、やめたほうがいいことも相当あった。そこで、初めて私の出番が回ってきた。やめたほうがいいことを直ちにやめるということを決断したのだ。だが、決して前政権の批判はしなかった。事実、前政権、前経営者が悪かったということはなかったし、むしろ、カルビーをここまで成長させた貢献度は大きい。以降、この棚卸しと仕分けは年に2回必ず実行している。

 会長就任後5年余りが経過した。業績は5期連続増収増益を達成している。株価は3年前の上場以来約7倍に上昇している。しかし、5年や6年の連続増収増益など何の自慢にもならない。「現状維持即是脱落」だ。

 今、私が必要だと信じてやっていることでも、「松本さん、そんなことやめたほうがいいヨ!」という従業員の声に、いつも耳を傾けようと心掛けている。

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