政治・経済

日本橋のアイデンティティを生かしたまちづくりを進める三井不動産

 三井不動産が中心となり進める「日本橋再生計画」が着々と形になり始めている。

室町古河三井ビルディング

室町古河三井ビルディング

 今年2月、室町東地区で「室町古河三井ビルディング」、「室町ちばぎん三井ビルディング」が竣工。3月には両ビルの低層部に位置する商業施設、コレド2、3がそれぞれオープンした。今後も、武田薬品工業などがオフィスビルを建設する「(仮称)日本橋本町二丁目特定街区計画」や、重要文化財でもある髙島屋日本橋店に隣接する形で開発する「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」など8プロジェクトが予定されている。

 日本橋は江戸時代、東海道など五街道の基点となり、人、モノ、金の集まる商人の町として栄え、創業100年を超える老舗企業も多い。三井不動産のルーツである、三井越後屋の創業もこの地だ。それだけに、日本橋における賑わいの創出に気迫が感じられるが、本格的に「再生」に向けて取り組み始めたのは、意外にも2000年代に入ってから、東急百貨店の閉店が決まったころからだという。

 「日本橋の地域の一員」としてのスタンスを崩さないことも特徴的だ。東京駅を挟んで反対側を見ると、三菱地所が丸の内〜大手町で開発を進める。同社はここに古くから土地を所有しており、一つひとつの区画も広い。一方の三井不動産が行う日本橋再生計画の多くは、地権者との共同開発でありプロジェクトマネジャーとして携わるものもある。商人の町らしく、老舗企業が古くから土地を所有し続けていて、区画の一つひとつも小さい。地権者も多いため、丸の内の開発とは色合いが違う。

室町ちばぎん三井ビルディング

室町ちばぎん三井ビルディング

 室町東地区開発計画が竣工した際、菰田正信社長は都市再生の意義について、「都市間競争に勝つためには、国際ビジネス拠点にふさわしい魅力的な都市空間の創造が求められる。そこには街固有の歴史などアイデンティティを生かし、環境と共生した持続可能な都市への視点が必要」と述べている。古い建物を作り替え、容積率が高く、高機能な建物にするだけではディベロッパーの役割は果たせないことを示している。

 この前提をふまえ、日本橋での街づくりは進む。日本橋再生計画のコンセプトは「残しながら、蘇らせながら、創っていく」だ。

 例えば室町東地区の開発事業では、約1100年の歴史があると言われる福徳神社の社殿を再建し、参道を含めて一体整備した。また、中央通りに面した開発では、重要文化財に指定されている三井本館の外観と調和させるため、高層ビルの低層部を31メートルに揃え、外観の統一性を図っている。この考えに野村不動産も賛同し、中央通り沿いの開発を行う民間企業同士が共通見解を持ってまちづくりを進めている。

 また日本橋には古くから製薬会社などが多い特色がある。この特色を生かし、ライフサイエンスにかかわる産学官の情報交流拠点を作り、新たな産業を創造する方針で、ライフサイエンス関連の国際企業を誘致する流れを作る考えだ。

 多くの人が気になるのは、首都高速道路の陰になっている日本橋の景観だろう。舛添要一都知事も視察に訪れ高架橋の撤去に言及しているが、関係機関、企業の動向を見守る必要がありそうだ。三井不動産としても、今後の開発では水辺空間を活性化する整備を行う方針で、「川を背にした建物」から「川を楽しむ建物」への再生を計画する。

都市型スマートシティで三井不動産らしさを出す

 こうして日本橋らしさを生かした新しい都市の姿が編みだされているが、三井不動産らしさを加えているのが「都市型スマートシティ」の要素だ。日本橋では、都市ガスを燃料とした高効率の大型ガスコジェネレーションシステムを導入し、発電時に発生する廃熱を冷暖房や給湯などに有効利用する「地域電気・熱供給事業」を2019年度にも始める予定だ。「日本橋室町三丁目地区市街地再開発計画」では、施設内に発電設備を備える予定で、コレド室町でも電力、熱の供給を受ける予定だ。これによって地域共生を行い、持続可能な都市を目指す。

 8つのプロジェクトのうち、いくつかのプロジェクトは、20年までの実現を予定している。日本橋以外にも多くのプロジェクトを抱える三井不動産だが、今後も街固有のアイデンティティを見いだして都市開発を進められるのか。三井不動産が仕掛け人として、また、地権者との調整役として大役を果たせるかに注目したい。

(文=本誌/長谷川 愛)

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