政治・経済

学校の空き教室で寺子屋 大和市の6校でスタート

 小中学生の学力を向上させようと、地域の助けを借りて放課後に補習授業を取り入れる自治体が、首都圏に広がってきた。名付けて現代版の「寺子屋」だ。神奈川県大和市が2014年度から「放課後寺子屋やまと」を立ち上げたほか、埼玉県草加市では「草加寺子屋」を、茨城県常総市は「常総ほっとサタデー教室」を実施中だ。地域の子どもの学力を底上げする新たな仕組みで、定着には学校と保護者、地域の連携が必要となる。

「寺子屋やまと」は大和市の6校で始まった。写真は林間小学校

「寺子屋やまと」は大和市の6校で始まった。写真は林間小学校

 小田急電鉄「南林間」駅から歩いて3分ほどのところにある大和市立林間小学校。午後3時頃になると、授業を終えた小学生が三々五々、「多目的教室」に集まってくる。平日の週3日、「放課後寺子屋やまと」が開かれるからだ。

 会場の床にはカーペットが敷かれ、座卓がズラリと並ぶ。児童は好きな所に陣取り、勉強ができる環境を整えている。この日出席したのは20人ほどで、それぞれが教科書や宿題など取り組みたい教材を持参し学習していた。

 「音読の宿題があったよ」と言う男の子は国語の教科書を取り出し、津波から村を守った伝記を大声で読み出す。「まるごと宿題6年」という参考書を使って自習する6年生、漢字の学習プリントをせっせとこなす4年生もいる。

 会場で対応するのは教職員OBで構成するコーディネーターと教員免許を持つ学習支援員だ。学校教育の経験や知識が豊富な地域の有志が児童一人ひとりに寄り添い、質問や分からないところなど、状況に応じて丁寧に支援する。

 大和市が立ち上げた「寺子屋やまと」は14年度、林間や大和、福田など6校で始まった。対象は小学4〜6年生で、教科は国語と算数だ。学校を通じて保護者に連絡し、希望する児童なら誰でも参加できる仕組みにした。受講料は無料だが、認知度が低いためか、出席希望者は各校15〜20人とそれほど多くはない。

 開催日は学校の空き教室を利用して平日の週3日、午後3時〜5時に行う。実証実験の意味を込めて6校で1年間実施した上、15年度からは市内19校のすべてに広げる。

 「寺子屋やまと」は正規の授業ではないし、学習塾でもない。自ら進んで学習する習慣を児童に定着させようと、地域が協力して自主学習の場を提供するのが基本だ。

 そんな「寺子屋やまと」を実施することになったのは、文科省の「全国学力・学習状況調査」の報告書が1つのきっかけだ。報告書は「学校の授業以外の学習時間が長いほど正答率が高い」と分析しており、しかも報告書で大和市の児童の学習時間が非常に短い実態も明らかになった。

 基礎学力を高めるには学習習慣を身に付けさせることがまず重要だとし、それを実現する手段として「寺子屋」事業が具体化したわけだ。「児童が放課後も学習支援を受けることで、基礎学力が向上するし、学習習慣も身に付くはず」と市教委教育部指導室の久津間仁室長は期待する。

草加寺子屋に972人 常総市はほっとサタデー

 「草加寺子屋」は草加市の小学3年生から中学3年生までを対象に、13年度から始まった放課後補習事業だ。開催日は月2回、隔週土曜日で、6月から翌年2月まで年間を通じて18回開講している。

 同市は児童生徒の学力アップを図ろうと、06年度から夏休みに同様の寺子屋を開いていたが、保護者から好評を博したため通年事業に発展拡充した。14年度には小学生が891人、中学生が81人もこの寺子屋に参加している。

 会場は小学生が市内の21小学校の教室を、中学生は公民館や福祉会館など4つの公共施設を使っている。学習は小学生が国語と算数、中学生が数学で、学年の学習進度に合わせた学習プリントを配布して勉強するケースが多い。

 会場の運営は運営管理員が当たり、学習支援は地域のボランティアで構成する学習支援員が担当している。

 一方、「常総ほっとサタデー教室」は14年度から始まった通年事業で、常総市の小学生3〜6年生が対象だ。全児童を対象に事前に出席希望を募ったところ、14年度は119人の児童が応募した。

 開催日は平日3日の放課後4時間と土曜日4時間を大枠として設定し、その中で送り迎えする保護者と児童が都合に合わせて曜日と学習時間、会場を登録している。

 会場には元教員など数名の学習指導員が配備され、児童それぞれの個別の課題に寄り添った支援を行っている。「先生より気軽に聞けるし、よく分かる」と児童の反応は良好で、出席率も高い。

 同事業の狙いについて、市教委の岡野克己指導課長は「基礎学力の向上を手助けし、学習習慣を定着させること」と繰り返し強調していた。

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