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「仕事」はまず、社会性を考える--江戸英雄×升田幸三

江戸英雄氏(左)×升田幸三氏(右)

 今号の特集は「TOKYO創生」。今、東京のいたるところで街が生まれ変わっているが、50年程前も、敗戦を乗り越え、新たな東京が生まれていた。都市復興、東京勃興をけん引した立役者のひとりが三井不動産の江戸英雄氏。棋士、升田幸三名人との対談で壮大な計画を語っている。

(1981.2.10号)

財閥解体が人生が変わった三井不動産の江戸英雄氏

江戸 私、昭和2年に学校を出まして三井に入ったんです。團(琢磨)さんの時代ですよ。團さんの側近として4年、池田(成彬)さんの側近として5年。だけど当時は三井十一家の人たちは團さんや池田さんを呼び捨てでね、とてもウダツがあがらんと思いました。

 55歳で定年になったら茨城に帰って、村長になってドン底状態の村の経済を建てなおそうと考えたんです。財閥解体がなければそうなっていましたな。あれは一種の革命です。

升田 そういっていいでしょうね。戦前の三井家なんて、まさに雲の上……。

江戸英雄

江戸英雄(えど・ひでお)
(1903〜1997)茨城県出身。東京帝国大学卒業後、同年、三井合名に入社。戦後、三井不動産に転じ55年社長、74年に会長に就任する。三井グループの重鎮として長きに渡って活躍した。また、音楽振興や教育にも尽力した。

江戸 総本家の三井八郎右衛門さんという人の屋敷は1万5千坪あった。自動車が珍しい時代に外車を12台持っていましたよ。

升田 ほう。

江戸 それでね、サーバントが百人いた。本邸だけでね。大磯の別邸が2万3千坪、小涌園は1万2千坪、京都の二条城前に約1万坪の別邸……。図抜けた日本一の金持ちでしたからね。世界の5本の指に入ってました。

升田 ケタはずれですな。大変な財閥だ。

江戸 そういうところへ田舎っぺが入っちゃった(笑)。

 平穏無事に世の中が移っていたら、私など絶対にメが出なかったでしょう。

升田 財閥解体であなたの運命も変わったわけね。

江戸 はい。三井さんがプライベートに持っていたものを活用するために三井不動産ができた。私はそこへ入ったわけですが何かと苦労しましたよ。

 株の買い占め事件とかね。朝鮮戦争前ですと都内の一等地にタダ同然のものがいっぱいあったんです。

 例えば、ホテルニューオータニは全部で、80万円で申し入れがあった。だけど銀行は不動産を丙ランクにしていたので金を貸してくれない。

升田 隔世の感あり(笑)。

棋士、升田幸三名人が考えるトップとは

江戸 最初から積極果敢にやろうと思っていましたが、思う存分やれるようになったのは昭和30年以降ですね。埋め立てなんかうまくいきました。千葉県の市原沖なんかね。

升田 埋め立ていうのは当時気が付かなかったでしょ。

升田幸三

升田幸三

江戸 松永安左エ門さんとか加納久朗さん(元千葉県知事)なんかおっしゃっていましたよ。加納さんは東京湾の3分の2を埋め立てるという構想を打ちたてられた。埋め立ての土は房総半島の山を原子力で削るっていう。そうすると、東京の気温が冬は5度あったかくなり、夏は5度涼しくなるという。素人の発想ですけどね。

升田 へぇ。

江戸 松下幸之助さんも対談の折、日本の山の2割も削って埋め立てをして平地をつくれば食糧問題その他が一気に解決するとおっしゃっていました。これは、今世紀中かけて研究し、来世紀から始める。

 とにかく、われわれは三菱と違って土地が無かったので、「よし、土地をつくろう」と始めたんです。現在は大工業地帯になっていますし、千葉市などは市役所や銀行なども新しい土地に移って旧千葉より大きくなっています。

升田 超高層ビルも最初だったですね。

江戸 埋め立てをやっている頃、霞が関ビルの問題が出ました。私は仕事をやる時、社会性をまず考える。そうでないと若い連中は燃え立ちません。

 霞が関ビルは一種の都市再開発なんです。36階を建てると7割が空き地になり、そこに噴水をつくったりして小さな公園ができあがった。都市再開発のモデルケースですよ。東京はどうしても再開発をやらなきゃならないですね。

升田 成功者、奇人、達人、天才といわれる人は既成概念にとらわれない。陋習を打ち破っている。しかも、過去のよさは残しています。ですから、保守という意味合いをよく知っています。将棋の世界でも、既成概念にとらわれ過ぎると新しい戦略、戦術、定跡はうまれません。

 新しいものをつくると自信がつき信念がうまれる。そのうちに本来の創造力が身につく。

 トップというのは自信、信念がなきゃいかんが、創造性もなきゃいかん。松永さんとか加納さんという人は創造性があったということでしょう。創造性は、トップに限らず、肉体は衰えていても精神は若くなきゃなりません。若くないと感動性、ものを比較する目、創造性がなくなります。年に関係なくね。

江戸 新しい定跡は次々と出てるようですね。

升田 定跡というのはつくりだすものです。トップというのは、定跡をつくりだす人でなきゃならないですからね。

 

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