政治・経済

不祥事を起こした直系の創業家が去ってもなお、コンプライアンスやガバナンスが問題視される大王製紙。非直系の創業家が裏で影響力を保持し、経営体制が改善されたとは言い難い。同社の病巣の深さが浮き彫りになる事態が続出している。 (本誌/村田晋一郎)

杜撰な経営が現在も継続

 本誌3月19日号で報じたように、大王製紙のコンプライアンス問題は非常に根が深い。そして、改善に向かっているとは思えない事態が今も続いている。

 まず決算発表について、いくつか怪しい内容がある。先日発表した2013年3月期の連結決算は売上高が4074億円、当期純利益が151億円で、2期続いた赤字から黒字に転換したとしている。しかし、特別損益には、創業家から子会社株購入による段階取得にかかる差益194億円を上期の特別利益として計上。これは現金流入を伴わない会計上の数字であり、この194億円を差し引くと実際には43億円の当期純損失で、3期連続の赤字となる。また、子会社の大宮製紙鷹岡事業所を閉鎖したにもかかわらず、減損処理をしていないという疑惑もある。

 14年3月期は、売上高4300億円、当期純利益50億円を見込んでいるが、この見通しも怪しい。為替は現在1㌦=96円前後で推移しているが、この見通しは1㌦=101円で計算したものだという。1㌦=96円で計算すると純利益は26億円にとどまる。黒字にはなるが、見込みとの差は大きい。また、見込みの50億円の内訳は、上期が5億円、下期が45億円。下期の販売価格上昇を織り込んだものとしているが、上期からの改善幅が大き過ぎる。会計処理の杜撰さがここからもうかがえる。

 さらに会計処理について、創業家である井川家に利益が流れる仕組みができ上がっている。11年の巨額借り入れ事件によって、当時の社長だった井川意高氏や意高氏の父である高雄氏ら直系の井川家は大王製紙の経営から外れている。しかし高雄氏の弟の井川俊高・大王製紙特別顧問や井川英高・大王製紙専務ら非直系の井川家がいまだに強い影響力を有しているのが実情だ。非直系の井川家が株を保有する子会社が存在。その子会社経由で大王製紙はパルプや紙製品などを取り引きし、子会社に眠り口銭を落とす形で、井川家に利益が回っている。

 中でも大王製紙の連結子会社である東京紙パルプ・インターナショナル(TPI)は3月まで井川英高氏が代表取締役を務め、俊高氏と英高氏は同社の大株主でもあった。TPIについては国税局も問題視し、数度にわたって税務調査を行っている。既に英高氏はTPIの取締役を辞任し、英高氏、俊高氏ともにTPI株を大王製紙に売却したが、調査結果次第では、追徴課税は免れないとの見方もある。

期待外れの外部委員会の調査

 大王製紙の筆頭株主である北越紀州製紙は、こうしたガバナンス上の問題を正すため、第三者による特別調査委員会を設置するように求めてきた。調査対象は大きくは、かねてより問題になっている川崎紙運輸による外形上インサイダー取引と疑われかねない北越紀州製紙株式の買い付け、海外関連会社の投融資の損失処理、元従業員による内部告発の3点。大王製紙側では調査委員会の設置を拒否していたが、4月に外部委員会の設置を発表し、検証を開始した。

 しかしこの外部委員会は、北越紀州が求めた日弁連第三者ガイドラインに沿った形での公平かつ客観的な調査とは程遠いものだった。そもそも大王製紙の企業統治改革委員会の委嘱の下に設置された組織であり、人選には大王製紙側の意向が反映され、独立性に欠ける。また委員会を2つに分け、第1外部委員会がインサイダー問題を、第2外部委員会が海外の投融資の損失処理と内部告発を調査。しかも第2外部委員会は、公認会計士のみで構成され弁護士が含まれていない。弁護士が含まれない第三者委員会など存在自体が怪しいが、調査対象を限定するための方策ともとれる。

 北越紀州側では、前述の3点の調査について、6月の株式総会で株主提案権を行使することを選択肢に考えていたが、結果的には留保した。これは、大王製紙が自浄作用を発揮する最後の機会に望みをかけたためである。しかし調査報告書は、北越紀州が重視するガバナンス、コンプライアンス、組織風土の問題は検討されていない内容であり、懸案の3つの問題についても問題はないとの結論。また、問題のある部分の調査は浅く、問題のない部分の調査は深くなった印象を受ける。本筋とあまり関係のないところを詳述した部分で、大王製紙の嘘がばれるという皮肉な結果となっている。

 一例を挙げると、今年2月21日付の大王製紙のプレスリリースによれば、川崎紙運輸による北越紀州株の買い付けは大王製紙が指示・要請したものではなく、川崎紙運輸の独自の経営判断によるものとなっている。しかし調査報告書では昨年7月、大王製紙特別顧問の井川俊高氏の指示によるものだという。また、取得目的を「今後の営業活動に役立つ」としている点や、北越紀州製紙から本件買付けの事実を知らされて初めてその事実を知った」などとしている点も、調査報告書により大王製紙の嘘が明らかとなった。

 このように大王製紙が発表したリリースや公の場での発言が、調査報告書によって事実と異なっていることが判明したが、いまだ何ら釈明もせず、責任の所在も明確にしないこと自体、大王製紙のガバナンス・コンプライアンス問題が解消されていないことを物語っている。

 北越紀州では現在、株主総会での対応を協議中。筆頭株主といっても議決権ベースで22%の株しか保有していないため、やれることは限定的となる。

 「当社が目的とする業界の第3極グループの形成のためには、大王製紙のガバナンス・コンプライアンスの是正が不可欠であり、今ここで当社が何もしないと、当社が大王製紙に投資していることについて、ステークホルダーへ説明できない。当社としては、かかるガバナンス不全の事態を容認している非直系の井川家と佐光正義社長に対する不信任の姿勢をアピールしていく」(北越紀州関係者)

 北越紀州としては、今後も大王製紙のガバナンス不全を正す取り組みを継続する構えだ。

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