政治・経済

 財務省は10月1日、日本郵政の新規株式公開(IPO)を引き受ける主幹事証券会社11社を決めた。2015年秋ごろの上場に向けて、最大のヤマ場は公募価格の仮条件の決定だ。財務省は東日本大震災の復興財源として4兆円を当て込むが、もくろみどおりいくのだろうか。

復興財源4兆円の皮算用

 日本郵政上場の具体的なスケジュールや国内外の販売比率などを取りまとめる「グローバル・コーディネーター」に野村証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券が決まった。このほか、「国内」「海外」「国内特定」の各区分の主幹事には大和証券、JPモルガン、岡三証券などが選ばれた。

 最後の国営会社IPOの主幹事業務は莫大な手数料収入にとどまらず、日本郵政株式の追加売り出し、子会社の金融2社の上場に向けた主幹事業務も視野に入っている。うま味のある案件だ。

 主幹事選定は8月から始まり、書類審査に名乗りを上げたのは21社、通過したのは15社。財務省は、「政府株としても過去に例がないほどの巨額の規模で、米ゼネラル・モーターズ(GM)、AIGなど海外の大型上場を参考にしながら選んだ」とし、最終的に日本郵政の上場アドバイザーを務める野村など国内大手5社がすべて入り、最終的に11社の大主幹事団となった。

西室泰三社長

2015年春までに上場準備を整えるとする西室泰三社長(Photo=時事)

 日本郵政の帳簿上の純資産は約12兆4千億円で、NTT(1987年2月上場)、JR東日本(93年10月上場)、JT(94年10月上場)をしのぐ。国有財産最後の大型上場は来年10月に予定される消費再増税に向けた景気下支えの役割も担う。

 今後の最大のヤマ場は公募価格の仮条件の決定だ。財務省の八幡道典室長は「東日本大震災の復興財源として4兆円を充当する。売却益が最大となるように時期、相場の環境を見極めたい」としたが、市場関係者からは「4兆円は難しいのではないか」という声も出ている。

 公募価格を決める際には類似の上場企業の実力などを勘案するのが一般的だ。ゆうちょ銀とかんぽ生命保険、日本郵便を傘下に抱える金融持ち株会社・日本郵政の場合、銀行株や保険株が類似業種になる。問題は、ゆうちょ銀の株主資本利益率(ROE)、株価純資産倍率(PBR)の低さだ。

 成長性の指標であるゆうちょ銀のROEは、2014年3月期で4・26と民営化の時点からは改善されているが、それでも都銀の7レベルからは大きく離されている。投資の安全度を示すPBRも0・20と、メガバンクの0・80程度から大きく見劣りする。

 財務省は日本郵政のPBRを「1」倍として試算しているからだ。財務省の皮算用では株式を3年に1回放出すると仮定し、00年のNTT株式の第6次売却1・23兆円を根拠に1回の売却収入を1・3兆円と算定。「1・3×3=3・9」で約4兆円、という筋書きだ。日本郵政を支えるゆうちょ銀のPBRは0・22程度。このままだと上場しても、4兆円どころか1兆円をやっと超える水準にとどまる可能性すらある。

ページ:

1

2

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る