政治・経済

 「ドイツが来年には新規国債ゼロに、1969年以来初」

 ショイブレ独財務相は9日、来年には1969年以来初めて、新規の国債発行がゼロになる、との見通しを明らかにした。

 一方で、欧州連合(EU)の安定成長協定の達成にはまだほど遠い、とも主張、ドイツが今後も財政の健全化努力を続けることは正当化される、との認識を示した。(後略)』(ロイター通信2014年9月9日)

財政均衡の理想的な形とは

 「大原則」だが、この世界で、「全員が同時に貯蓄を増やす(あるいは負債を減らす)【資金余剰】状態になることはあり得ない」。誰かが貯蓄を増やす資金余剰の反対側で、必ず別の誰かが貯蓄減少(「負債増加」を含む)という資金不足の状況になっている。理由は、所得創出のプロセスを整理すれば理解できる。

 ある国に、A氏とB氏とC氏が住んでいたとする。それぞれの所得は100万円で、合計は300万円である。3者が100万円を稼ぎ、20万円を預金(銀行は存在する)した。すなわち、消費もしくは投資として、それぞれが80万円を支出したわけだ。

 すると、「次の段階」の3者の所得の合計は、300万円から240万円に減少してしまう。所得とは「消費、投資として使われた金額」という定義になる。

 この時点で、銀行には3者の預金(貯蓄)が合計60万円存在する。銀行で凍り付いた貯蓄分(預金)を誰かが借り入れ、消費や投資として使ってくれなければ、各人の所得はひたすら減少していく。何しろ、貯蓄とは、消費や投資として使われなかったお金、という意味を持つのだ。

 一定期間の各経済主体、すなわち家計、企業、政府、外国という、各経済主体の資金の過不足を示す資金循環統計を「資金過不足」と呼ぶ。

 現在の日本は、家計と企業が資金余剰(貯蓄増)の状況が続き、反対側で政府の資金不足が継続している。すなわち、政府が負債を増やしているという話だが、現在の日本が、「政府は借金をするな(=資金不足を解消せよ)」などとやってしまうと、国民の所得が激減する。すなわち、所得の合計であるGDPが大幅なマイナス成長になるだろう。

 資本主義経済とは、誰かが貯蓄されたお金を借り入れ、消費・投資として使わなければ、成長のしようがないのだ。

 理想的には資金過不足は以下の組み合わせが最適になる。

・家計:資金余剰

・企業:資金不足

・政府:収支均衡(=財政均衡)

 最も脆弱な経済主体である家計が預金(貯蓄)を増やし、企業が借り入れ、設備投資に使い、政府は財政均衡を維持するわけだ。

 とはいえ、バブル崩壊後にデフレに陥った国では、企業が借金返済や銀行預金(共に「貯蓄」)に走るため、政府が資金不足(負債増加)にならざるを得ない。

 現実の資金過不足の統計では、上記3つに加え「外国(日本では「海外」と呼ぶ)」という経済主体が存在する。

 繰り返すが、上記4つの経済主体が、同時に資金余剰状態にはなれない。ある経済主体が資金余剰(貯蓄増加もしくは負債減少)になったとき、その分、別の経済主体が必ず資金不足(貯蓄減少もしくは負債増加)になる。さもなければ、その国の国民経済は「GDP激減」という憂き目に遭うことになる。

ドイツの財政均衡の手法は日本には不可能

 現在のドイツは、家計と企業が資金余剰状態にある。長期金利が1%未満と、極端な水準にまで落ち込んでいることが、その証しである。ドイツでは、民間の資金需要が細っているのだ。結果的に、銀行は預金を国債で運用せざるを得ず、長期金利は低迷している。

 それにもかかわらず、政府までもが財政均衡を達成するということは、「家計」「企業」「政府」以外の誰かが資金不足を引き受けていなければならない。ドイツの場合、もちろん「外国」だ。

 外国に経常収支の赤字(ドイツから見ると黒字)という資金不足を押し付け、ドイツは「家計」「企業」「政府」が同時に資金余剰(もしくは収支均衡)になるという離れ業を実現したのだ。

ユーロ主要国の経常収支の推移 ドイツは08年までは、為替レートが変わらない「共通通貨ユーロ」を活用し、ユーロ圏内への輸出を増やし、経常収支黒字を拡大していった。

 08年にユーロ危機が勃発すると、ユーロの為替レートは他通貨に対し、大幅に下落した。すると、今度は「ユーロ圏外」への輸出を増やし、経常収支の黒字を維持した。

 ドイツの財政均衡は外国の経常収支赤字、すなわち「外国の資金不足」により達成されたのである。同じ真似は、ユーロ加盟国ではない日本には不可能だ。

 日本には、資金循環統計や、ドイツが「なぜ、財政均衡になったのか」を全く理解せず、単純に「ドイツに学べ」と言う論者が少なくないので、注意が必要だ。

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