文化・ライフ

守備重要のサッカーを強調したアギーレ

 どこか既視感がある。前回の反省を踏まえ、今回はうまくいけばいいのだが……。

アギーレ監督

独自路線を打ち出してきたアギーレ監督(Photo:時事)

 サッカーJ2横浜FCのカズこと三浦知良が現日本代表監督のハビエル・アギーレと8代前の日本代表監督パウロ・ロベルト・ファルカンの近似性について日本経済新聞(9月19日付)の自らのコラムでこう述べていた。興味深い内容だったので紹介したい。

 〈自分の日本代表での経験でいうと、ファルカン監督は前の代のオフト・ジャパンをかなり変え、壊してでも新しいものを打ち出した。〉

 〈アギーレ監督はファルカンのように自分の色やポリシーをすぐ出してきた感じがする。サッカーのやり方もガラッと変わり、ザックさんとまた違うアプローチが楽しみでもあるだろうね。でも代表は時間がありそうで、そんなにない。1月のアジアカップまでにいろんなことは試せない。〉

 カズが指摘するように、前任者のやり方をガラッと変えたという点において、確かにアギーレのやり方はファルカンに似ている。

 ここでブラジルW杯を簡単におさらいしておこう。

 前任者のアルベルト・ザッケローニは攻撃サッカーを標榜して大会に臨んだが、勝ち点1しか挙げられず、グループリーグで敗退した。

 退任表明の席でザッケローニは言った。

 「方向性は間違っていなかった。今後も日本サッカーは、私が4年間やってきた道を継続して進んでいくべき」

 原博実・日本サッカー協会専務理事も異口同音に言った。

 「目指している方向性は、結果どうこうで変えるものではないと、個人的には思っています」

 これを受け、日本サッカー協会が「ザックスタイルの継承」をテーマに後継者探しに乗り出したことは言うまでもない。

 ところが新監督に就任したメキシコ人のアギーレは記者会見で「特に守備ができることが重要。守るというのは守備陣だけの話ではない。FWにもMFにも同じことを求めたい」と守備重視の方針を打ち出した。「継承」という言葉は一度も口にしなかった。

 カズの目に、今回の政権交代は20年前のそれに重なるらしい。

問われるサッカー協会のサポート体制

 1994年の米国W杯出場にあと一歩のところにまで迫った初の外国人代表監督ハンス・オフトは、たとえて言うならば教師タイプだった。

 オフトが代表監督に就任したのは92年4月、つまりJリーグがスタートする13カ月前だ。日本サッカーがW杯出場に本腰を入れ始めた時期と重なる。

 当時、ラモス瑠偉やカズなど有能で個性的な選手はいたものの、何しろ代表はW杯未出場なのだ。オフトは自らの指示や戦術を浸透させるためにキーワードを駆使した。

 アイコンタクト、トライアングル、スモール・フィールド……。例えばトライアングルとは、常に3人が三角形を保ったポジショニングをとることを指す。スモール・フィールドとはFWと最終ラインの距離を常に35㍍以内におさめることを意味する。

 近代サッカーにおいて選手の連動は不可欠であり、それはコンパクトな陣形を保つことで初めて成り立つ。オフトはこうした約束事の重要性を丁寧に選手に説き、キメ細かい練習を通して具現化していったのである。

 短期間で日本代表の強化に成功した手腕を評価して「オフト・マジック」なる言葉がメディアをにぎわせたのは記憶に新しい。

 だがオフトの後を受けたファルカンは前任者のやり方を踏襲しなかった。前任者のオランダ人が、選手としての経験はそれほどなかったのに対し、ファルカンはブラジル代表としてジーコ、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾとともに〝黄金のカルテット〟を形成した名選手である。来日前にはセレソン(ブラジル代表)の指揮も執っていた。

 そんなファルカンからすれば、約束事の多い前任者のサッカーは児戯に等しいものだったかもしれない。

 それまで代表の「10番」はラモスが背負っていたが、ファルカンは若い岩本輝雄を司令塔に指名した。ほかにも小倉隆史や前園真聖ら伸び盛りの選手を積極的に起用し、代表の様変わりを印象付けた。

 結局、ファルカンは94年の広島アジア大会準々決勝で韓国代表に敗れた責任を取らされるかたちで解任された。結果に責任が伴うのは当然だが、もう少しファルカンの目指すサッカーを見たいな、と思ったことも事実である。

 日本サッカー協会は「(選手との)コミュニケーション不足」を解任の理由に挙げたが、一方で協会のサポート不足を指摘する声もあった。

 ファルカンのようにアギーレを短命に終わらせないためのサポート体制は、どうあるべきか。同じ轍を踏んではならない。

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