マネジメント

 2013年7月に東京証券取引所と大阪証券取引所(現大阪取引所)の現物市場を統合し、その後もデリバティブ市場の統合を果たすなど、市場改革を進める日本取引所グループCEOの斉藤惇氏。トップ就任以来、「世界の投資家にとって魅力ある市場」を実現するための取り組みを進めている。

 斉藤氏は、野村証券副社長や、住友ライフ・インベストメント社長などを経た後、産業再生機構の社長として、数多くの企業再生案件を手掛けてきた。これらの経験を通じて、企業の利益率の向上やコーポレートガバナンスの重要性についても思いを強くした。

 日本企業が競争力を高めるために必要なことは何か、また、さまざまな経験を経て得た信条についても語ってもらった。

分配を考える前にまず成長を

── 東証と大証の統合からもうすぐ2年がたちますが、想定していた効果は出ていますか。

斉藤 デリバティブ市場の統合まで完了したのが今年の3月で、社員同士の融合に関しても壁はなく、うまくいったと思います。効果という点では、安倍内閣の誕生と時を同じくしたという点で、ラッキーだったという側面もありますが、現物株では出来高の面で統合効果が出ていますし、TOPIXを中心とした派生商品については、われわれが予想していた以上に伸びました。日本の金融が再び世界で重要な位置を取れるようにするという狙いに向けて、想定より早く進んでいると思います。

 経営統合のもう1つの目的は、もう少し商品の種類を整理・拡大して、世界から参加者が増える市場にすることです。そのために今、現物、派生商品のシステムともに、キャパシティの拡大や処理スピードの向上など、機能拡充を図っています。

斉藤 惇

斉藤 惇(さいとう・あつし)
1939年生まれ。熊本県出身。63年慶応義塾大学商学部卒業後、野村証券入社。副社長などを経て、99年住友ライフ・インベストメント社長に就任。同社会長職を退いた後の2003年産業再生機構社長に就任。数多くの企業再生案件を手掛けた後、同機構解散後の07年に東京証券取引所社長に就任する。13年大阪証券取引所との経営統合に伴い現職。

── IPO件数は増えていて、アベノミクス効果もあって株式市場自体は好調と思いますが、この勢いは年内にも失速するのではという声も出ています。

斉藤 表面的に株価が上がったから儲かった、下がったから損をしたという見方をするような人にとってはそうでしょう。しかし、安倍さんがチャレンジし、関係者がそれに応えるべく、非常に大きな問題に取り組んでいるということを、国民にもっと知ってほしいと思います。日本は長い間、企業の利益を真ん中に据えて、事業をジャッジするということをあまりやってこなかった。利益が出なくても、ダラダラと設備投資をして人を雇い続けて事業を続けてきました。いわゆるゾンビ事業(リスクに見合ったリターンを挙げられない事業)を抱えたままの企業が増えた結果、世界的に見ると利益率では下位になってしまいました。日本の経営の成績を5段階で付けると1とか2しか付いてないのに、この20年間は分配論が先になって、成長・供給論というのが、消えていたんです。

 1990年ぐらいまでは、日本でも成長・供給論が強かった。ところが、自分で企業経営をしたことがない学者や評論家などが、分配論をものすごく強調するようになって、原資がないのに分配論が先に出てくるようになってしまいました。原資を作ることにブレーキを掛けながら、分配論だけが拡大した20年だったわけです。アベノミクスでは、分配はもちろん大事だが、原資がなければダメだということで、企業利益というものに注目したのです。それを一時的な現象ではなく定着させるために、いろんな会議や委員会で提案が始まっており、こうした動きにわれわれも積極的に取り組んでいるということです。

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