マネジメント

 1999年に立ち上げた「アースミュージック&エコロジー」は、2011年、ヤングカジュアル衣料の領域で売り上げ日本一を達成。石川社長は「人と違うことを考える」「思いついたら、即、実行する」という考えの元、今秋立ち上げた新ブランドを核に、世界展開を目指している。

 

クロスカンパニーの新ブランド「KOE」が岡山にオープン

 

 「アースミュージック&エコロジー」などを展開するアパレルメーカーのクロスカンパニー。1994年の創業で、99年に立ち上げた同ブランドを主力に、グループ全体の店舗数は国内外で約1千を数える。9月26日には、グローバル展開を視野に入れた新ブランド「KOE(コエ)」の1号店を創業地・岡山市にオープンした。

 これを皮切りに国内の出店を加速し、2016年には欧米進出とIPOも視野に入れ、20年にはブランド単体売上高1千億円、将来的には1兆円を目指すという。

石川康晴氏

石川康晴氏。社内の打ち合わせなども行うバーコーナーにて

 「コエは『Mode for everyone』をコンセプトに、動きやすく、着心地のいいモードスタイルを手ごろな価格で提案します。資源、原料や生産環境にもこだわるフェアサプライチェーンを目指します」

 ファストファッションは低賃金労働や地球環境への負荷など負の面もあるためである。

 同社を率いる石川康晴社長は、70年岡山市生まれ。岡山大学経済学部を卒業し、京都大学大学院に在学中。祖母や母親が日本舞踊をしていたことから、帯や着物の生地や色についての話が飛び交う環境に育つ。

 自身も小学校1年まで日舞を習っていた。子ども時代はマンガやゲームなどには興味がなく、お年玉はすべて洋服につぎ込む。地元・岡山にあるDCブランドのショップスタッフから、「そんなに洋服が好きなら洋服屋になったら?」と言われたことを引き金に、大手紳士服メーカーで働いた後、23歳で起業する。13年度の売上高は764億円、社員数2750人の規模になっている。

 順調に成長を遂げてきたように見える同社だが、これまで3回の危機があった。

 

「アースミュージック&エコロジー」の誕生

 

 1回目は99年。欧米からデザイン性の強い高額品を輸入していたが、これが行き詰り、赤字に陥る。社員の多くも退社していく。夜中にひとりで店を掃除していると、「社長がばかだから会社を辞めます」と書かれた手紙がレジの裏から出て来た。信頼していた社員が友人に宛てたものだった。石川氏はショックを受けたが、同時に自分の誤りに気付き、自社生産・販売のSPA(製造小売り)に切り替える決断をする。「アースミュージック&エコロジー」の誕生だ。

 これが当たり、一転V字回復。資金繰りが急速に好転した02年、岡山に本社を建設すると、またもや危機が忍び寄る。

 「本社建設にうつつを抜かし、社業を疎かにしたためです。ラフォーレやパルコなどのファッションビルにテナントとして出てアースは人気ブランドになっていましたが、世間の流行がストリート系からキレイめファッションに移りつつあった。これを機に駅ビルへの展開にシフト。ターゲットをヤングからOLにし、Tシャツやトレーナー中心だった商品構成を、ワンピースやブラウスなどに変えました」

 

ファッションの流行を先読み、グローバル展開

 

 この路線変更が見事に当たり、03年には再び成長軌道を描いていく。すぐに他の先進的なアパレルメーカーも追随してきたため、07年ごろからはあちこちの駅ビルの売り場がファッショナブルに変身していく。

 「当社は先行していたので数年は非常に好調でしたが、すぐに他社も真似てくるため、どこも似たような売り場になり、埋没してしまいました。そこで05年からは郊外の大型ショッピングセンター向けに、『グリーンパークス』という低価格路線のブランドを立ち上げました」

 大型SC展開は役員全員が反対したが、マイクロバスを仕立ててSCに視察に行き、郊外でも流行に敏感な若者が多いことを見せて、帰りには賛同を得る。

 「SPAではベネトンやGAPを研究しましたが、『グリーンパークス』では『しまむら』や『鈴丹』、福島の『ハニーズ』などを研究しました」

 とはいえファッション分野は他のメーカーの追随が避けられない。何で優位性を保つか。石川氏は、ヤングおよびOLのセグメントではどこもやっていなかったテレビCMに賭け、アースミュージック&エコロジーのブランドキャラクターに女優の宮㟢あおいを起用した。アパレルの売上高に占める広告費率が平均2%といわれる中で、同社は8%を投入。結果は、社員のモチベーションが向上し、ブランド知名度も上がり、前年比140%の売り上げにつながった。

 「コエのコンペティターはユニクロ、H&M、ZARA、GAPなど時価総額3兆円超の企業です。これまでのドメスティックな企業から、グローバル展開をしていけば、決して夢物語ではないと思っています」

 既に08年には台湾、11年中国に現地法人を設立し、09年には米国アパレルブランドにも出資している。巧みなマーケティング戦略で、危機を逆手にとってきたクロスカンパニー。「〝フェア〟なファッションで世界の先頭に立ちたい」と願う石川氏の野望は、大きく膨らんでいる。

(文=本誌編集委員/榎本正義)

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る