文化・ライフ

 来年還暦を迎えるとは思えない若返りに成功され、多くのメディアで話題になった医師の南雲吉則さんにご登場いただきました。南雲先生には、どのような意識でアンチエイジングに取り組むべきなのか、健康であり続けるために必要な考え方について、お聞きしました。

ナグモクリニック南雲吉則総院長の考える売れる本とは

佐藤 南雲先生は、とても若々しく、実年齢には見えません。

南雲 来年、還暦を迎えます。

南雲吉則

南雲吉則(なぐも・よしのり)
1955年東京都生まれ。81年、東京慈恵会医科大学卒業。東京女子医科大学形成外科研修、癌研究会附属病院外科勤務、東京慈恵会医科大学第一外科乳腺外来医長を歴任。90年、医療法人社団ナグモ会ナグモクリニックを開業。東京慈恵会医科大学、近畿大学の非常勤講師、などとして教育にもたずさわる。テレビではコメンテーターなどで出演多数。主な著書に『50歳を超えても30代に見える生き方』(講談社+α新書)、『ゴボウ茶を飲むと20歳若返る』(ソフトバンククリエイティブ)など。

佐藤 先生の健康法や若返りについては多くの人が注目し、著書『Dr.ナグモの「元気塾」医者いらずで生涯現役!「男のミラクル健康習慣」』など、お書きになった本も販売が好調だそうです。以前、先生にお話を伺った際に「本をどんどん書いたほうが良い」とおっしゃられていましたよね。

南雲 ただ書くだけではなく、「売れる本」を書かなければいけません。

佐藤 南雲先生の考える売れる本とはどのようなものなのでしょうか? 出版社としてとても興味があります。

南雲 筆者が言いたいことを伝えるだけでなく、読者がどのようなものを求めているのかを考える必要があります。疑問に対して答えになる本でなければいけません。

 最近、医師が多くの本を出版していますが、健康にはりんごが良い、納豆が良いなど、さまざまな情報が世の中にあふれ返っています。しかし、そこからは何ら本質が見えてこないんです。いくつかの本の論理を突き詰めて行けば、野菜や果物の皮に含まれているポリフェノールが良いといった共通点が見えてきます。本質というのは単純なもので、それが分かれば、読者はどのように行動すべきか分かります。だから、実は健康法や若返りに必要な本質はごくわずかで、それから派生したものが多いだけなのです。どの食材がいいという情報ではなく、物事の本質を伝える本は売れると思います。

ナグモクリニック南雲吉則総院長がアドバイスしたいこととは

佐藤 私の周囲にも、ウオーキングをしていたり、食事から健康に気を遣っていたりする経営者は多いのですが、彼らにアドバイスはありますか。

南雲 後ろが見えるような人間であってほしいと思います。

佐藤 後ろが見える人間とは?

南雲 例えば、電車に乗っているとキャリーバッグを持った乗客がいらっしゃいますよね。キャリーバッグを持っていると、周りのスペースを使っていて、混雑している場所では迷惑になります。携帯電話を使いながら歩いている人も同じです。自分のことばかりで、周囲の状況に気付いていない人が多い。

佐藤 確かにそういう方はいらっしゃいますね。

対談の様子南雲 健康やダイエット、若返りも自分が良くなるためのものなんです。しかし、そもそも何のために健康であり、若返り、長生きしたいのかということが明確であることが必要だと思います。皆さん健康にとって何が良く、何が悪いか分かっているはずです。分かっていて実践できていないのであれば、それは真剣に考えていないだけで、行動すれば人間の体は変わってくるものです。

佐藤 耳が痛いお話です(笑)。

南雲 若い人たちから侮られないような美しい外見を保つことは重要です。外見は内面の健康の現れですから。それに、私たちはいざというときに体を張り、若い人の盾にならなければいけません。昨今、災害が多発していますが、手を伸ばせば助けられたという声がよく紹介されています。僕はこれまで体を鍛える必要がないという意見を持っていましたが、いざというときに家族や周囲の仲間を助けられるように体を鍛えておくことは必要だと考えるようになりました。

「父の死を機に弟子を育てた」と語る南雲吉則院長

南雲吉則

佐藤 南雲先生がお父様の病院を継がれたのはいつでしたか。

南雲 38歳の時で、まだ大学病院で乳がんの専門医としてキャリアを積んでいました。父が心筋梗塞で倒れて、跡を継がなければいけなくなったのですが、美容整形は経験がなく、プレッシャーがありました。当時は美容整形が軽んじられていて、僕自身、大学病院で乳がんを専門に扱う医師のほうが格上という考えがありましたので、自分のアイデンティティを作り直すことには苦労しました。

佐藤 苦労しながらも、病院を継いでいくことができたきっかけが何かあったのでしょうか。

南雲 父の死をとおして、2つの気付きがありました。1つは、自分が自己中心的な人間であったということ。もう1つは父の人生は僕ら子どもたちを守るための人生だったということです。僕は父に何か返せていたのかと反省し、それからは周囲が見える人間となって、弟子を育てたいと考えるようになりました。今では名古屋や大阪などのクリニックは弟子に引き継いでいます。今後も若い人たちの独立を支援していきます。

南雲吉則院長の思い「医者に必要な能力の3本柱」

対談の様子佐藤 経営に対するお考えもしっかりお持ちですね。

南雲 立派な病院をつくっても、患者の命を救える技術がなければ意味がありません。技術があっても、理想の医療を実現する経営手腕が必要です。経営がうまくても、実績を世に広めるために学会で発表したり論文を書いたりする科学者としての姿勢も不可欠です。医者は技術者であり、経営者でもあり、科学者です。その3本柱が成立しなければ医者として成功しないと考えています。

佐藤 そんな南雲先生も、来年は還暦を迎えられます。今後の目標などはあるのでしょうか。

南雲 来年からは手術を弟子に任せ、僕は助手として弟子をサポートし、65歳ぐらいで手術室に入るのをやめようと思っています。

佐藤 お弟子さんたちは、嫌がりませんかね。

南雲 チャンスだと思うでしょう。学会などでの講演依頼も多いのですが、昨年からはできるだけ講演も弟子に行かせるようにしています。人脈を作り、業績を上げてもらうために、自分のチャンスを弟子たちに分け与えているのです。

佐藤 とても戦略的に考えていらっしゃいますね。

南雲 一方で、僕は高齢者の手本となれるように自分自身が若々しく、健康であり続けたいと思っています。10年たっても外見が変わらなければ、南雲の提唱する医療は正しいと信じてくれるはずですからね。


対談を終えて対談を終えて

59歳とは思えない若々しさの南雲先生は、お話をすると病院経営者として揺るぎない考えをお持ちの「哲学者」のような一面もある魅力的な方です。10年たっても若々しく、健康であり続けたいとおっしゃられていましたが、その頃に元気な姿にお会いできることを今から楽しみにしています。

 

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