マネジメント

 銀行融資の構成をどうするか――つまりは、「どの銀行から、いくらの融資を、どう受けるのが適切なのか」は、企業にとっての悩みどころの1つです。そこで今回は、銀行融資の構成を考える上でのポイントについて解説します。

融資構成のために、まずは「借入一覧表」の作成から

 銀行融資の構成を考えるうえで、まず行うべきは「借入一覧表」の作成です。この一覧表に記載すべき項目は次のとおりです。

・銀行名

・現在の融資残高

・返済方法(返済間隔、返済金額)

・金利

・担保の設定状況(根抵当権・ 抵当権の別、設定額)

・信用保証協会の保証付きかどうか

・資金使途(運転資金・設備資金など)

・当初借入日

・最終返済日

・当初借入額

 この一覧表の作成で、現状の融資構成が把握できるようになります。その作業を終えたら、次に融資構成が適切かどうかを点検します。その際のチェックポイントは大きく2つ。以下、各ポイントについて説明しましょう。

融資構成(1)融資シェアは適正か

 銀行から融資を受けるうえで、最もやってはならないのは、融資取引の相手を1つの銀行に絞ることです。理由はシンプルで、「銀行間の競争原理が働かず金利が高止まりする」リスクや、「1つの銀行に融資を断られると、銀行から融資を受けるすべを失う」危険性があるあるからです。

 業歴が長い企業の経営者の中には、「○○銀行とは先代からの付き合い。他行から融資を受けるような裏切り行為はできない」と考える方もおられます。

 ですが、当の銀行サイドは、他行から融資を受けることについて、「裏切り」とは考えませんし、さして気にもしません。融資を受けている銀行が1行しかないのであれば、2つ目、3つ目の銀行を探すべきなのです。

 一方、既に複数の銀行から融資を受けているのであれば、必ずチェックすべきは「融資シェア」です。例えば、融資構成が次のようになっているとしましょう。

・A銀行:6千万円

・B銀行:3千万円

・C信用金庫:1千万円

・総額:1億円

 この場合、融資シェアはA銀行が60%でB銀行が30%、そしてC信用金庫10%となります。このシェアを考えるうえで最も重要なのは、メーン銀行のシェアを高くし過ぎないことです。理想は、メーン銀行のシェアを40%以下に抑えることですが、最低でも60%を超えないようにしたいところです。

 メーン銀行とは、その企業が最も多く取引している銀行のことです。取引の領域は、「設備資金」や「運転資金」の融資のみならず、「振込・口座振替」、「売掛金入金受入れ」、「当座預金取引」などに及ぶのが通常で、融資シェアについても大抵はメーン銀行が最大となります。

 企業にとってメーン銀行は経営を下支えしてくれる大切な取引先ですが、メーン銀行側にも、融資以外の取引でも収益が稼げるという利があります。

 とはいえ、企業の業績悪化などでメーン銀行が融資を止める可能性はゼロではありません。しかも、メーン銀行への融資依存度が高い企業では、他行から運転資金の定期的な融資を受けていないことが多くあります。そんな中で、メーン銀行による融資が止まった場合、他行も新規の融資に及び腰になり、企業は運転資金を得る手だてを一挙に失いかねません。そうならないためにも、複数の銀行からバランス良く融資を受けておくことが重要なのです。

融資構成(2)担保・協会保証の状況はどうか

 融資シェアに次いで重要なチェックポイントが、「担保」と「信用保証協会保証」の状況です。

 まず、担保は、メーン銀行に優先的に入れるのが普通です。例えば、新たな担保として銀行に入れられそうな不動産があった場合、メーン銀行に相談もなく、メーンではない銀行に担保として入れるのは──特別で明確な理由がない限り──避けるべきです。仮に、それを行うと、メーン銀行との関係は悪化します。

 また銀行は、貸し倒れの少ない「信用保証協会保証」付きの融資を好みます。この保証のない融資は「プロパー融資」と呼ばれますが、メーン銀行にプロパー融資ばかりを引き受けさせ、他行には保証付き融資を引き受けさせていると、メーン銀行の不満が募ります。ですから、メーン銀行と他行との間で保証付き融資とプロパー融資のバランスを取っていくことも大切なのです。

 

筆者の記事一覧はこちら

経済界電子版 銀行関連の記事一覧はこちら

経済界電子版 金融関連の記事一覧はこちら

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年12月号
[特集] 沸騰する食ビジネス!!
  • ・食ビジネスが熱い!! 未来型食品が社会課題を解決する
  • ・市場規模70兆円! 食ビジネスが過熱するわけ
  • ・完全バランス栄養食で誰もがラクして健康になれる
  • ・人工光型植物工場で世界の食と農に新しい常識を
  • ・宇宙食ビジネスで勝ちに行く 10年後に5千億円市場創出へ
  • ・“大人の給食”で栄養の基盤をつくる
  • ・人工肉で糖質制限者に無制限のおいしさを
  • ・テクノロジーで高品質なジビエ調達が可能に
  • ・昆虫食ビジネスの時代到来
[Special Interview]

 伊藤秀二(カルビー社長)

 掘り出そうカルビーの未来

[NEWS REPORT]

◆エンジニアへの高額給与で 富士通は生まれ変われるか

◆豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

◆消費増税で現金主義は終焉 キャッシュレス時代が到来した

◆加速するeスポーツ市場! インテルが東京で世界大会を開催

[総力特集]

経済界創刊55周年記念 新しい日本のかたち

東京1964からの55年と東京2020以降の日本の姿

ページ上部へ戻る