国際

「反日」を掲げる中国の思惑

 

 1949年の新中国成立以来、毛沢東、周恩来、鄧小平など同国の主要なリーダーは皆、基本的にリアリストであった。彼らは日本に対し、好き嫌いの感情はなかっただろう。

 仮にあったにせよ、反日の言動をとることはなかった。なかでも、1980年代に活躍した胡耀邦は親日派として知られ、当時の中曽根康弘首相と親しい間柄だった。

 新中国になって初めて露骨な“反日カード”を切ったのは、おそらく江沢民だろう。

 同氏の実父である江世俊は、日本の傀儡(かいらい)と言われた汪兆銘政権で宣伝部副部長を務めていた。つまり、江沢民の父親はわが国と関係が深かったのである。

 また江沢民は、汪兆銘政権下において、南京の国立中央大学(現・南京大学)に入学している(卒業は第2次世界大戦後で、上海交通大学だった)。だが、公式記録によると、江沢民は、すでに亡くなっていた叔父(実父の弟)であり中国共産党員だった江上青の養子となっている。

 江沢民は、自らの出自に対して疑惑の眼を向けられないために反日を掲げる必要があったのかもしれない。

 また、毛沢東や鄧小平と違って軍歴がなく、指導者としての資質にも欠けていたので、反日を掲げることで国内をまとめようとしたのだろう。

 江沢民氏の後を継いだ胡錦濤政権は、必ずしも反日というわけではなかった。だが、次に「中華民族の偉大なる復興」を掲げて登場した習近平は、実力不足のためか、江沢民と同様に反日で国内をまとめあげようとしている。

 また、習近平は、党の集団指導性を無視して、再び毛沢東のような“皇帝型政治”を志向しているように見える。同時に、「養光韜晦(とうかい)」(能ある鷹は爪を隠すの意味)政策を放棄し、露骨な反日で安倍晋三政権に対峙している。

 ここ最近、中国は経済成長が鈍化しつつあるので、習近平の本音としては日本からの投資拡大を望んでいるに違いない。少なくとも、深刻な環境汚染問題に対処するために、習政権は高い技術力を持つわが国と交流を図り、環境保全に力を入れるべきだろう。

中国に幻惑される韓国

 

  産経新聞の加藤達也ソウル支局長(当時)が今年4月、韓国フェリー「セウォル号」転覆事故の際、朴大統領が男性と密会していて7時間も連絡が取れなかったというコラム記事を日本へ発信した。加藤前支局長は、あくまでも韓国内の情報をもとに記事を作成したわけだが、同氏はその記事を書いたためにソウル地検に起訴された。

 朝鮮・韓国事情に詳しい拓殖大学海外事情研究所の荒木和博教授によれば、韓国で最初に反日カードを切ったのは、金泳三政権だという。

 その後、韓国では、政権が末期に“レイムダック”化すると、反日カードが切られてきた。李明博大統領もその1人である。

 日本と関係が深かった朴正煕の娘、朴槿恵は、大統領就任以降、あからさまに反日を掲げた。

 彼女は、日本陸軍士官学校へ留学した父親が親日だったため、江沢民同様、反日を掲げる必要があったのかもしれない。親日の態度を取れば、たちまち野党やマスコミに足元をすくわれるおそれがあるからである。だから、朴槿恵は青瓦台に入って以来、反日で突っ走っている。

 そのため、朴政権は、外交の幅を狭めてしまっている。実際、先ごろ北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、期待されていた公式の日韓首脳会談は実現しなかった。

 その一方で、韓国は経済的に中国への依存を強めつつある。北京APECでは、懸案の韓中自由貿易協定(FTA)が自動車や米・ニンニクなどの農産品以外でおおむね合意に至った。だが、頼みの中国は成長にかげりが見えるので、韓国も苦境に陥っている。

 現在、中国と韓国は、反日でスクラムを組んでいる。これに米国は困惑の色を隠せない。

 本来、自由や民主主義という「普遍的価値観」を共有する日米韓で、一党独裁体制の中国や北朝鮮に立ち向かうのが筋だろう。だが、東アジアでは、韓国が中国に接近し、北朝鮮が日本に接近するという、まさかの「ねじれ現象」が起きている。

 歴史的には、朝貢・冊封体制を基本とする「中国的世界秩序」では、朝鮮半島は、歴代中国王朝の忠実なるミニチュア国家だった。そして、朝鮮民族は強い国家へなびくという「事大主義」でその生存を確保してきた経緯がある。

 だから、現在、韓国は、世界第2位の経済大国になった中国に“幻惑”され、過去へ回帰しているのではないだろうか。

 

【国際】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る