マネジメント

規制強化のため改正された法令の5つのポイント

 AIJ事件の後、AIJ事件で判明した事実からの教訓を踏まえ、投資一任業者などに対する規制強化を図るため、金融商品取引法、信託業法および保険業法と、それらの関係政省令などが改正されました(これらを「改正法令」と総称します)。その5つのポイントを紹介します。

 1つめは、第三者による投資先ファンドのチェック機能強化です。AIJ事件で、ファンドの運用結果について虚偽の報告が可能となった理由として、第三者がファンドのモニタリングを行う仕組みが不十分であったことが挙げられます。

 投資一任業者と投資一任契約を締結した顧客は、信託銀行に運用資産の管理を委託するのが通常ですが、改正法令では、投資一任業者が顧客資産を運用する際の投資先であるファンドについて、原則として第三者の信託銀行などが情報チェックを行うことを求めることとしました。

 具体的には、信託銀行がファンドの基準価額をその算出者から直接入手できる措置を取ることが必要となることに加え、ファンドには独立監査人による監査が求められます。これらの情報を受領した信託銀行には、報告された金額や情報を照合し、その結果を顧客に通知する体制を整備する義務が課されます。

 2つめは、投資運用顧客(特に年金基金)への情報開示の強化です。改正法令では、投資一任契約の締結時に顧客資産を投資する予定の投資対象ファンドがある場合、投資一任業者は、顧客に交付する法定書面で当該ファンドの名称、基準価額の算出および開示方式、投資対象ファンドに関与する関係者の名称、役割と関係、独立監査人による監査の有無といった情報を説明する義務が課されています。

 投資実行後も、投資一任業者が顧客に定期的に交付する運用報告書に、運用財産の運用の経過や推移などを記載することが求められます。

 3つめは、顧客のプロ成りの制限です。これまで述べた規制は、顧客が「特定投資家」と呼ばれるプロ投資家である場合には、適用されません。大規模な年金基金を除いて、年金基金の多くは本来特定投資家には該当しませんが、金融商品取引法上、投資一任業者の同意を得た上で、特定投資家として取り扱いを受けることを選択できます。

 しかし、特定投資家になることを自由に認めた場合、改正法令の顧客保護という目的が達成できない恐れがあります。改正法令は、厚生年金基金については、インハウス運用を行うに足る体制整備がなされている場合を除き、特定投資家への移行ができないものとしました。

 4つめは、年金の資産運用に関する投資一任業者等による法令順守の内部体制の整備です。

 例えば、現行の厚生年金保険法では、厚生年金基金は投資一任業者に資産運用を委託する場合には、投資判断の全部を一任しなければなりません。この点、厚生年金基金から特定の有価証券の投資または処分の指示を受けた場合でも、投資一任業者はその指示に従ってはならず、また具体的な投資を指示するように顧客を仕向けるような方法で、商品のマーケティングや運用成績の説明を行ってはならないことが明確化されました。

 5つめは、投資一任業者などの違反に対する罰則の強化になります。改正法令では、投資一任業者などによる偽計(相手方に誤解を生じさせる不公正・詐欺的な行為)、虚偽告知や虚偽記載に関する刑事罰について法定刑を引き上げ、投資一任業者などによる不正行為に対するけん制の強化を図っています。

年金基金に影響を与えるその他の最近の展開

 最後に、日本の年金基金に影響を与えるその他の最近の展開をいくつか取り上げます。

 AIJ事件を踏まえて厚生労働省は、厚生年金基金の資産運用に関するガイドラインを改正し、厚生年金基金に対して政策的資産構成割合および集中投資に関する方針の策定を義務付けました。また、オルタナティブ投資を行う場合には基本方針を策定して適切な審査を実施することを求めています。

 厚生年金基金が公の厚生年金の一部を国に代わって支給する代行制度は、実質的に年金の運用資産を増やし、スケールメリットを享受することで効率的な資産運用を目指すものでしたが、AIJ事件を契機に構造上の問題も明らかになりました。2002年の厚生年金保険法の改正によって、厚生年金基金は運用を代行していた資産とともに、代行部分の年金給付義務を国に返上できることになりましたが、代行返上に必要な資金が足りず、中小規模の日本企業の厚生年金基金をはじめ多くの厚生年金基金は代行を返上できずにいます。13年6月成立の「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法などの一部を改正する法律」では、全体の約1割を占める健全な基金を除き、厚生年金基金は、解散か他の形態の企業年金に移行させるものとしています。

 13年4月1日に始まった事業年度から、従来の退職給付会計基準ではオフバランスとされていた未認識数理計算上の差異と未認識過去勤務費用について、連結貸借対照表のその他の包括利益累計額として計上することが必要になりました。これにより、年金基金の運用結果が加入企業の純資産に直接影響を与えることになります。

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