政治・経済

 安倍晋三政権が成長戦略の柱の1つに掲げるインフラの海外展開。その〝キラーコンテンツ〟となる新幹線の輸出に向けた機運が高まってきた。新幹線を運行するJR各社は4月に「国際高速鉄道協会(IHRA)」を設立し、理事長に元国土交通事務次官の宿利正史氏が就任。10月20日には、政府と民間企業が共同で出資してインフラの海外展開を資金面で支援する「海外交通・都市開発事業支援機構」が発足した。政府は国土交通省を中心に新幹線輸出を後押しする姿勢で、官民一体での取り組みの成果が期待される。

 新幹線の最大のセールスポイントは、50年前の東海道新幹線の開業から今日に至るまで乗客の死傷者がゼロという抜群の安全性だ。平均遅延時間が1分未満というダイヤの正確さも大きな特徴と言える。にもかかわらず、輸出実績は2007年開業の台湾高速鉄道のみで、後がなかなか続かないのが現状だ。

 安全性や信頼性の高さには定評のある新幹線だが、ノウハウや実績で勝る欧州勢、価格の安さや国を挙げて売り込みを図る中国勢を相手に、受注競争で優位を築くのは容易でない。

 安倍政権は発足以降、新幹線輸出で「トップセールス」を積極的に手掛けている。安倍首相は昨年2月、オバマ米大統領との首脳会談で超電導リニア技術の供与を提案。今年9月のインドのモディ首相との首脳会談でも、新幹線導入を働き掛けた。太田昭宏国交相も今年8月のマレーシア訪問で、同国の要人に新幹線の採用を訴えた。こうした政権の姿勢には鉄道業界からも肯定的な意見が少なくない。

 IHRAは10月22日に東京都内で300人規模の国際会議を開催。高速鉄道計画がある米国や豪州、インド、マレーシア、シンガポールの運輸関係者は新幹線の特徴を高く評価したが、自国での採用について踏み込んだ発言はなかった。

 「新幹線は価格が高い」というイメージを払拭するための徹底したコスト削減策、有望な高速鉄道計画に初期段階から食い込むためのコンサルティング能力の強化など、課題は少なくない。太田国交相は海外交通・都市開発事業支援機構の発足式で「(インフラの海外展開は)国として総力を挙げることが大事だ」と語ったが、その目玉となる新幹線輸出で台湾に続く成果を早期に出す上では国交省の役割も大きく、手腕が試される。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る