政治・経済

再生医療輸出に向けた重要プロジェクト

 経済産業省が成長戦略の柱に据える医療インフラ輸出で、再生医療技術が脚光を浴びている。

 富士フイルムなどが年内にタイ、中国で人工皮膚、人工軟骨の製造・販売を目指し、調査に着手。最先端の「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」など再生医療研究で日本が先行する分野だけに期待が大きいが、製品化での出遅れは鮮明で、経産省は「ガラパゴス化」を避けるために巻き返しに必死だ。

「日本の再生医療が世界市場を見据える足掛かりとなる重要なプロジェクトだ」。経産省幹部は8月5日に今年度の「医療機器・サービス国際化推進事業」の1つに選ばれた富士フイルムと、グループ会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の中国、タイでの実証調査の意義をこう強調する。

 両社は既に現地の規制や有力な提携病院を調べるため、担当者を派遣。経産省から数千万円の補助金を得て、来年3月までに現地で5~10例の臨床試験を実施する。そのデータを基に2014年に現地当局、15~16年度にも両社が出資する現地製造拠点を設立し、提携病院に販売する計画だ。

再生医療のデファクトスタンダードづくりで送れる日本

 再生医療は、京都大の山中伸弥教授らがあらゆる細胞に分化する能力があるiPS細胞の開発でノーベル医学・生理学賞を受賞し、日本の技術力を生かせる分野として期待は大きい。だが、経産省の報告書によると、昨年12月時点で、日本で市場投入された再生医療製品は、J-TECの人工軟骨と人工皮膚の2品目のみ。韓国の14品目、米国の9品目に比べて、大きく遅れているのが実情だ。

 経産省は、「他人から培養した人工皮膚などを使う海外の方式に比べて、日本製品は副作用の心配が少ない」と品質の高さを強調するが、同時に「再生医療のデファクトスタンダード(事実上の標準)づくりで出遅れている」と認める。

 12年の再生医療の周辺装置なども含めた市場規模は国内が260億円に対して、世界は3400億円と10倍以上に上る。経産省は産業の旗振り役として再生医療をより大きなフィールドとなる世界市場に売り込めるか。「ガラパゴス」と呼ばれる独自の進化を遂げた日本の「モノづくり」を、文字どおり「再生」させられるかどうかの瀬戸際に立っている。

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