霞が関ウオッチング
消費税増税が決定し経済失速させず 景気回復するか頭痛める--財務省
2013年10月15日

10月1日、安倍晋三首相が消費税の増税を決断した。1997年4月に3%から5%に引き上げられて以来、17年ぶりで、来年4月、現行5%の税率が8%に引き上げられる。低所得者の家計負担を和らげるため、一部の品目に限った軽減税率も検討されるが、適用のやり方しだいでは財源不足などの問題も出てくるため、財務省としても頭が痛い。
「国の信認を維持し、持続可能な社会保障制度を引き継ぐ」。この日、開かれた政府与党政策懇談会で、安倍首相は消費税率の引き上げについて、こう説明した。麻生太郎財務相も経済財政諮問会議で、「日本政府や国債への信認が不可欠だ」と述べ、消費税増税の意義を強調した。政府は景気腰折れを防ぐため、6兆円規模の経済対策も閣議決定した。
政府は増税に合わせ、低所得者に限って現金を支給し、家計の負担を和らげる対策をとる方針だ。来年4月に税率を上げた後、「年収が一定以下」といった条件を満たす世帯に対し、1人当たり1回1万円を給付し、年金受給者には5千円を上乗せする。支給は7~9月ごろになるとみられる。
さらに、2015年10月の10%への増税を見越し、食料品などに限った軽減税率の導入も検討する。欧州などでは広く採用されており、公明党が主張している。
だが、適用範囲をめぐっては課題もある。例えば食料品の場合、高級な食材にも課税するのか、また、高級なものと、そうでないものの区別をどうつけるのか。食料品以外では、新聞や書籍への課税を低減すべきとの声も多い。税率が異なる品目が多いと消費者が混乱する上、範囲が広がり過ぎれば、財務省としては、財源不足に悩むことになる。
同時に決まった経済対策は企業の優遇がもっぱらで、家計への支援は手薄だ。97年の増税時はアジア通貨危機も重なって、経済が失速した。今回は財政をうまくコントロールしながら、同じ轍を踏まずにすむのか。財務省を中心とした政権の舵取りが問われている。
雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら
経済界電子版トップへ戻る
好評連載
深読み経済ニュース
一覧へ増刷率9割の出版プロデューサーが明かす「本が売れない時代に売れる本をつくる」秘訣
[Leaders' Profile]

[連載] 深読み経済ニュース解説
2015年の経済見通し
[連載] 深読み経済ニュース解説
再デフレ化に突入し始めた日本経済
[連載] 深読み経済ニュース解説
消費税率引き上げ見送りの評価と影響
[連載] 深読み経済ニュース解説
安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由
霞が関番記者レポート
一覧へ財務省が仮想通貨の規制に二の足を踏む本当の理由――財務省
[霞が関番記者レポート]

[霞が関番記者レポート]
加熱式たばこ増税に最後まで反対した1社――財務省
[霞が関番記者レポート]
下水道に紙おむつを流す仕組みを検討――国土交通省
[霞が関番記者レポート]
NEMの大量流出で異例のスピード対応 批判をかわす狙いも――金融庁
[霞が関番記者レポート]
バイオ技術活用提言 遺伝子の組み換えで新素材や医薬品開発――経済産業省
永田町ウォッチング
一覧へ流行語大賞に見る2017年の政界
[永田町ウォッチング]

永田町ウォッチング
支持率低下で堅実路線にシフトした安倍改造内閣の落とし穴
[永田町ウォッチング]
政治評論家、浅川博忠さんの「しなやかな反骨心」で切り開いた政治評論家への道
[永田町ウォッチング]
無党派層がカギを握る東京都議選の行方
[永田町ウォッチング]
東京都議選は“小池時代”到来の分岐点か
地域が変えるニッポン
一覧へ科学を目玉に集客合戦 恐竜博物館に70万人超(福井県勝山市、福井県立恐竜博物館)
[連載] 地域が変えるニッポン(第20回)

[連載] 地域が変えるニッポン(第19回)
コウノトリで豊かな里山 自然と共生する町づくり(福井県越前市、里地里山推進室)
[連載] 地域が変えるニッポン(第17回)
植物工場、震災地で威力 雇用創出や活性化に効果(岩手県陸前高田市、グランパ)
[連載] 地域が変えるニッポン(第16回)
道の駅を拠点に村づくり(群馬県川場村、川場田園プラザ)
[連載] 地域が変えるニッポン(第15回)
好評ぐんぐん、高糖度トマト「アメーラ」が地域に活気、雇用を創出(静岡市、サンファーマーズ)
実録! 関西の勇士たち
一覧へ水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る
[特集 新しい街は懐かしい]

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)
稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)
三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)
住友の天皇・堀田庄三の人生
[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)
商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へ総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)
広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

新社長登場
一覧へ森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは
前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

イノベーターズ
一覧へ20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔
自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …
