政治・経済

道の駅「川場田園プラザ」のこだわりとは?

 地域経済を振興しまちづくりを進める拠点として、道の駅を活用する動きがますます高まってきた。その代表例が、道の駅「川場田園プラザ」を軸に活動する群馬県川場村だ。

 ブランド商品を開発したり、地域農業の再生に役立てたり、地場産品の6次産業化を目指したりと、道の駅を活用した事業は多様な広がりを見せる。年に120万人が訪れ、雇用の場も創出する田園プラザは、まさに村づくりを象徴する施設である。

観光客が好んで訪れるミート工房。

観光客が好んで訪れるミート工房。山賊焼が人気だ(川場村)

 田園プラザは県北部、人口約3500人の川場村が1996年に登録した道の駅だ。関越自動車道の沼田ICから車で約10分、県道沿いの村の入口付近に立地している。

 緑豊かな約5ヘクタールの敷地内にはプラザセンター、ビジターセンターとともにビールやミート、ミルクなど6つの工房や農産物直売所「ファーマーズマーケット」などの施設が併設されている。

 施設は33億円を掛けて村主導ですべてを整備した。借入金を10年に完済したので、「その後さらに5億円投資し、施設を拡充した」とは関清・川場村長の説明だ。運営主体は第3セクターの「㈱田園プラザ川場」(永井彰一社長)だが、一部施設は民間資本が村から施設を借りて経営している。

 田園プラザはいつ訪れても観光客で賑わっている。松井精一常務によると、週末には1日に1万人近い日があり、2013年度の来場者は120万人に達した。14年度に入っても活況が続き、4〜7月は前年同期比48%増という勢いだ。「春の大型連休では、渋滞が沼田ICまで続き当局からお叱りを受けた」と、関村長は苦笑いしながら打ち明ける。

 観光客を引き付けるのは施設が充実していて工夫が随所にあることと、こだわりの商品が多いためだ。

 人気の高い施設の代表がファーマーズマーケット。420人の登録農家が朝採りの農産物を出荷しており、1日3回品切れ情報を流して商品を補給する。週末などは開店と同時にどっと人が押し寄せる活況ぶりだ。そして、こだわり商品の一例が「かわばんち」提供のおにぎり。村産コシヒカリで作ったおにぎりが年に2500万円も売れる。

「好きな道の駅」で連続1位

 田園プラザは05〜09年の5年間、関東の「好きな道の駅」で連続1位を獲得した。客から寄せられる高い評価を背景に、リピーター客が増え続け、客単価も高まる一方。業績は好調で、田園プラザの売上高は開設当初の年4億円強が13年度は12億円になった。その35%を、ファーマーズマーケットが稼ぎ出す。

 各施設を見て回ると、多くの目を引く特徴に出合った。第1はヒット商品がいくつも生まれている点だ。ミート工房で作るハム・ソーセージが国際品評会で金賞を受賞し、ビール工房の地ビールが「ジャパン・アジア・ビアカップ」で金賞と銀賞を受賞するといった具合。「飲むヨーグルト」も家族連れに特に好評だ。次のヒット商品を目指して地場産品の開発意欲が高まり、新商品が相次いで持ち込まれる。

 第2は道の駅が若者の就業の場を提供している点だ。田園プラザの各施設で働く社員はパートを含め全部で110人。村内には若者が働ける職場が少ないだけに、雇用創出の面で田園プラザが果たす役割は大きい。

 第3はコメのブランド化に取り組み、農業の活性化を図っている点だ。村産のコシヒカリで食味値80点以上のものを「雪ほたか」のブランド名で販売しているが、全国の食味コンテストで5年連続、金賞を受賞し、直売所で他のコメより3割も高い値で売られるほどの高い評価だ。

 村主導で05年、71人の農家をまとめ生産組合をつくったのがブランド化への発端だった。11年には63人が出資する「㈱雪ほたか」を設立、ブランド米の収量拡大とブランド価値の向上作戦を展開している。雪ほたかは稲作請け負いが可能なため、農地の遊休化防止にも役立っている。

 村は14年9月、新しいライスセンターを建設した。場所は生品宮山地区で、総事業費は4億2千万円強。651平方メートルの機械棟と360平方メートルの低温貯蔵棟で構成する。棟内には乾燥機や籾摺り調整設備、精米設備が稼働し、50ヘクタール分の収穫米を効率良く処理できる。個々の農家が行ってきた収穫米の乾燥作業を共同化し、均一で高品質の雪ほたかを市場に送り出そうというのがこの施設の役割だ。同時に、農業に携わる若者をこの施設に呼び込むことも狙っている。

 「農業と観光が村の基本路線。農業を元気にし、観光客を村全体に回遊させたい」と話す関村長、田園プラザを活用した事業をさらに深掘りする算段を練っている。

 

【地域が変えるニッポン】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年3月号
[特集] 令和女史のリーダー哲学
  • ・元谷芙美子(アパホテル社長)
  • ・石黒不二代(ネットイヤーグループ社長)
  • ・小巻亜矢(サンリオエンターテイメント社長)
  • ・石渡美奈(ホッピービバレッジ社長)
  • ・戸田泰子(理化電子社長)
  • ・吉本新喜劇で初の女性座長は「イキらず、驕らず、高ぶらず」の支えるリーダー
  • ・敏腕ヘッドハンターが語る リーダーに求められる力は使命感に裏付けられた勇気
  • ・本と映画に学ぶ女史たちの生き様
[Special Interview]

 橋本聖子(女性活躍・東京五輪・男女共同参画担当大臣)

 女性が輝く新時代へ 政治家もOne Team

[NEWS REPORT]

◆CESでコンセプトカーを発表 ソニーが自動車メーカーになる日

◆アマゾンと提携したライフ 新規顧客獲得は成功するのか

◆ゴーン被告逃亡の影響は? 内田誠・日産新社長の前途

◆血液によるがん診断で日本の医療費は高騰する

[特集2]

 スタートアップ!関西

 日本の起業家たちが関西に注目する理由

ページ上部へ戻る