文化・ライフ

サプリメント・健康食品は薬にあらず

 最近、「サプリメント・健康食品」が効くかどうかの質問をよく受ける。どうも、多くの方がサプリメント・健康食品と「薬」とを混同しておられるようだ。初めに断っておくが、サプリメント・健康食品は薬ではない。法的にも「医薬品」とは区別された、「食品」にすぎないのだ。

 とはいえ、ヘルスケア系の食品には、いくつかの種類があり、その分類の複雑さも消費者の混乱を生む一因になっているようだ。

 そこでまずは、この分類をざっと整理しておこう。

(1)特別用途食品:病者用食品などを指す。「特別用途」の表示が可能な食品で、消費者庁の審査が必要。

(2)健康機能食品:「特定保健用食品」(トクホ食品)と「栄養機能食品」の2タイプがある。前者は、「トクホ」表示ができ、消費者庁の審査が必要。後者は、特定のマークは ない。

(3)健康食品:これは一般の食品と同類。「効果・機能」の表示は許されず、サプリメントもこれに含まれる。

 このようにサプリメント・健康食品の場合、単なる食品の一種で、「効果・機能」の表示は許可されていない。そのため、効果を調査で証明する必要もなく、動物実験なども行われていない。にもかかわらず、サプリメント・健康食品の広告・テレビCMは、あたかも効果があるかのような演出・商品訴求を行い、「(効果については)個人の感想です」といった「言い逃れ」のただし書きを目立たぬように表示させている。このような宣伝を見せられた消費者が、サプリメント・健康食品と医薬品とを混同してしまうのも無理からぬことだろう。

サプリメントよりはトクホ食品の効果の方が信頼はおける理由

 一方、トクホ食品についても、医薬品との明確な違いがあまり理解されていない。トクホ食品の申請に必要な試験には、「動物実験」や「試験管試験」、「人を使った試験」などがあり、動物実験・試験管試験をクリアした段階で、人による試験に進む。人を使った試験には、「(1)使用量設定試験」と「(2)有効性評価ヒト試験」、「(3)過剰摂取安全性試験」、「(4)長期摂取安全性試験」の4つの試験があり、これらの調査を経て有効性・安全性が確認できれば、トクホとして認められることになる。

 試験には1億円以上の費用が掛かるが、被験者の数は多くても数百名程度。医薬品などに比べると対象数は少ない。加えて、医薬品では必ず行われる「プラセボー(偽薬)」との比較調査は行われない(つまり、二重盲検法は用いられていない)。そのため、食べる側は、「それが何かを知りながら検査を受ける」ことになり、統計学的な信用度もかなり低くなる。むろん、研究調査を一切していないサプリメント・健康食品に比べれば、研究データがある分、トクホ食品の効果のほうが信頼は置ける。それでも、医薬品と同レベルでの有効性は保証されていないのが現実である。

サプリメント業界にとっても大きな衝撃となった論文とは

 現在、米ジョンズ・ホプキンス大学などの研究者らが米国内科学会誌に載せた『もう十分:ビタミンやミネラルのサプリメントにお金を浪費するのは止めにしよう』との論文が話題になっている。

 ジョンズ・ホプキンス大学のエドガー・ミラー教授は、「サプリメントの長期的な恩恵を裏づける証拠はなく、脳卒中・心臓発作を予防する効果もない」と断言する。

 この論文では、マルチビタミンに関するさまざまな論文・研究を総括しており、例えば、27件の研究(調査対象者合計45万人)を取りまとめた結果として、「マルチビタミンに循環器疾患やがんを予防する効果はない」と結論づけている。しかも、「喫煙者がベータカロチンサプリメントのみを服用していると、かえって肺がんのリスクが高まる」という。さらに、65歳以上の男性約6千人を被験者として、一方のグループにはマルチビタミンを、残りのグループには偽薬を12年間使用させたが、「認知機能に差は出なかった」としている。

 サプリメントの利用は、日本よりも米国のほうが進んでいる。その米国でこのような論文が発表されたことは、消費者にとっても、サプリメント業界にとっても大きな衝撃だろう。

 そもそも、サプリメントは健康な人には不要なものだ。また、現代社会で普通の食事をしている限り、「何かの栄養素が欠乏する」ことはまずあり得ない。例えば、野菜を一切食べないなど、極端な偏食の人にはサプリメントも有効かもしれないが、「より健康になるためにサプリメントを使う」というのは無意味だ。宣伝に登場する芸能人や友人・知人の勧めに従うのもいいが、それで健康になる医学的な根拠はどこにもない。

 

(よねやま・きみひろ)作家、医師(医学博士)、神経内科医。聖マリアンナ大学医学部卒業。1998年2月に同大学第2内科助教授を退職し、著作活動を開始。東京都あきる野市にある米山医院で診察を続ける一方、これまでに260冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修も行っている。NPO日本サプリメント評議会代表理事、NPO日本プレインヘルス協会理事。

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