政治・経済

アリババが海外進出を目指す中小・ベンチャー企業をサポート

 2014年の世界の株式市場で、大きな話題となった中国アリババ・グループ・ホールディング。9月にニューヨーク証券取引所に上場を果たし、時価総額は2300億ドル(約25兆円)に達した。今、世界で最も注目されている企業である。

香山 誠

香山 誠(こうやま・まこと)
1957年生まれ。86年にソフトバンク入社。ソフトバンク・イーシーホールディングス取締役を経て、2000年ソフトバンク・ヒューマンキャピタル社長。06年マイスペース社長を兼務。08年社長退任後、アリババ社長に就任。

 設立は1999年。企業間取引サイト「アリババ・ドット・コム」のほか、消費者向けショッピングサイト「淘宝網(タオバオ)」や「天猫(Tモール)」などでも展開する。創業者のジャック・マー氏は孫正義・ソフトバンク社長と親交があることでも知られ、現在ソフトバンクはアリババ株の30%強を保有している。

 わずか15年ほどで、一介のベンチャーから世界的な大企業に躍進したアリババだが、一方で同社が提供するサービスを利用して海外進出を目指す、中小・ベンチャー企業のサポート役を果たしている。

 アリババ日本法人社長の香山誠社長によれば、同社のサービスを通じて海外市場を目指す日本企業は着実に増加しているという。特に力を入れているのがBtoB領域の「ワールドパスポート」と呼ばれるサービスで、現在は中小企業を中心に約4千社の顧客が、外国企業に自社の製品、サービスの売り込みを図っている。

 「とにかく成功事例を増やしたい。当社サービスの潜在的利用者である製造業、商社、卸などの企業は国内に20万社くらいあるので、将来的にはそのうちの10%程度は取り込んでいきたい」と、香山氏は語る。

 課題は、グループ全体で全世界に囲っている約4千万社のバイヤー企業に対して、いかに日本企業がアプローチしていくかだ。この点に関して香山氏はこう述べる。

 「日本企業はインターネットの世界で商売をすることに対して、世界でもかなり下手なほう。交渉しても結論から言わないとか、ベストプライスを最初から提示しないとか、世界のシンプルなビジネスのやり方が身に付いていない。独特の商慣習が仇になっている」

 もともと産業材の分野において日本製品は強いため、特別な工夫がなくても売れるという。一方で、消費財に関しては赤ちゃん用品や女性用下着など、機能性で勝負するものでは強みを発揮する傾向にある。日本製の化粧品やサプリメントなども人気がある。

 とはいえ、アリババのサービスを使えば、簡単に海外進出が成功するなどというおいしい話ではもちろんない。

 「ほとんどの中小企業は、海外事業で短期の大きなリターンを狙うが、アリババは魔法の杖ではなく、あくまでもツールにすぎない。バイヤーからコンタクトがあったときに期待値を超えるメールを返し、成約したら適切なフォローをし、違う商品も買ってもらうといった基本的なことが大事。こういう当たり前のことができる会社は、あっという間に数億円のビジネスができる」(香山氏)

 いずれにせよ、アリババのようなサービスが出現したことによって、多くの中小・ベンチャー企業にもグローバル展開のチャンスが広がっていることは確かだ。

アリババ香山社長が方針転換、「利用者拡大より顧客価値の向上」

 アリババでは海外市場に興味がある企業向けにセミナーを開き、意欲のある企業にはアドバイザーを付け、支援している。国内市場の縮小に直面し、海外に活路を見いだそうとする中小企業も多い。

 目下の課題は、顧客数の増加による社内の人材育成だ。サプライヤーの取引を成功させるためのアカウントマネジャーの部隊が、経験を積むことによって力を付けてきたという。

 実は、同社には過去に苦い経験がある。日本法人の立ち上げ直後、規模の拡大を目指して、一気に数千人規模の利用者を獲得したことがある。しかし、成功事例がほとんど生まれず、まさに死屍累々の状態になってしまったと香山氏は述懐する。

 「その気になればいくらでも利用者は増やせるが、それでは意味がない。顧客価値が上がり続ければどこかでブレークするので、どんと構えてゆっくりやろうと方針を変えた。ちなみに今回の上場についても、孫とジャックがとことん話し合って、急ぐ必要はないという結論に達したのでこのタイミングになった。上場後も成長できる素地をしっかり作らないと、上場してから身動きが取れなくなる」

 新興国では60年代の日本と同じことが今起きていると語る香山氏。そこにインターネットが加わることによって、爆発的な破壊力を持って消費が増加している。このパワーをどれだけ取り込めるか、規模、業種にかかわらず、チャンスはすべての企業の眼前に広がっている。

(写真=佐藤元樹)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年8月号
[特集]
パナソニック新世紀

  • ・総論 家電事業でもB2Bでも根底に流れる「お役立ち」
  • ・樋口泰行(コネクティッドソリューションズ社社長)
  • ・B2Bに舵を切るパナソニック
  • ・パナソニックのDNA 家電事業の次の100年
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・パナソニックの家電を支えた“街の電気屋”の昨日・今日・明日
  • ・テスラ向け電池は量産へ 成長のカギ握る自動車事業
  • ・パナソニックとオリンピック・パラリンピック

[Special Interview]

 津賀一宏(パナソニック社長)

 変化し進化し続けることでパナソニックの未来を創る

[NEWS REPORT]

◆商品開発に続き環境対策で競い合うコンビニチェーン

◆サムスンを追撃できるか? ようやく船出する東芝メモリの前途

◆スバル・吉永泰之社長はなぜ「裸の王様」になったのか

◆「ニーハオトイレ」は遠い昔 中国を席巻するトイレ革命

[政知巡礼]

 木原誠二(衆議院議員)

 「政治が気合を持って、今のやり方を変えていく覚悟を」

ページ上部へ戻る