マネジメント

人材育成とは、その人の未来に期待すること

 「人材」という言葉を辞書で引いてみると「才能があり、役に立つ人」と書いてあります。また、「人材育成」とは「将来のために、有用な人物、専門的な知識を持った人物を育てること」。つまり、人材育成には、「将来のため」という視点が必要だというわけです。

 新卒社員に限らず、若い社員に接する場合には、その人の現状だけでなく、その人の「将来性」を感じ取る、鋭い感覚が経営者には求められるとも言えるでしょう。

 その人に「将来性」があるかどうかを判断する際、ひとつのポイントになるのは、「成長しようという意欲」、すなわち上昇志向が感じられるかどうか。最近は上昇志向がない若者が増えた、などと言われますが、それは必ずしも事実ではないと私は思っています。確かに「やる気を言葉や態度で前面に押し出す」ことをしない若者は増えているかもしれませんが、だからと言って彼らに上昇志向がない、というわけでは決してありません。上昇志向のあるなしを、表面的なイメージだけでとらえてしまうと、その人の本当の将来性を誤って判断してしまいますから、注意が必要だと思います。

人材育成の視点 その1 要領が悪いほど上昇志向が強い?

 子どもの場合も、「元気があって、体を動かすことが大好きで、物怖じしなくて、積極性があって、誰とでも仲良くなれる」というのを、多くの人が理想の子どもの姿としてイメージしがちです。

 けれども、その子の「将来」という視点で考えるならば、そういう現在進行的で、表面的な(さらに言えば、じつは幻想にも近い)理想形を追い求めるより大事なことは、いかにしてその内面に上昇志向を抱かせ、それを刺激してやるか、ということです。

 その子なりの上昇志向を図る基準として、個人的に間違いないなと感じているのは「妥協しない姿勢」です。例えば絵を描いていて、「ここには緑を塗りたい」と思っているのに緑のクレヨンがないという場合、ほかの色で済ませるという「妥協」をなかなか受け入れられない子どもがいます。「青でもまあいいや」と言って済ませることができる子どものほうが、親や保育士にとっては扱いやすく、都合はよいのですが、妥協を受け入れない強さは、上昇志向の強さだとも言えるのです。

 まわりにいる大人はそれに付き合う姿勢を示すことが必要で、目先の煩雑さを避けたいがゆえに、あきらめることを強いたり、ほかで代用する要領のよさを求めてしまうと、せっかくの上昇志向を子どもはどんどん失っていきます。

人材育成の視点 その2 表面的なイメージで将来性は図れない

 大人の場合も、その人の上昇志向の強さは、「妥協しない姿勢」に現れます。納期を徹底的に守る、営業目標の達成に最後の最後までこだわる、納得するまで何度も企画書を書き直す……という姿が垣間見れるとしたら、仮にその人が「やる気を前面に押し出す」タイプではなかったとしても、将来有望な人物だと判断してよいと思います。

 人材育成という視点で見れば、指導者に求められるのは、そういう妥協しない取り組みを評価する姿勢。社会的な経験の未熟さから、こだわった挙げ句に結果が伴わないケースもあるかもしれません。

 でも、結果だけにフォーカスするのではなく、そこに至る前の粘り強い取り組みを認め、励ますことが大切です。そうすることで、彼らの上昇志向は刺激され、「人材」として大きく成長していくでしょう。

 逆に表面的にはやる気に満ちあふれているように見えても、何事にも妥協する人、つまり、1日くらい遅れてもいいや、とか、100%ではないけど90%は達成できているから満足という発想の人は、最初こそ要領よく渡っていけるかもしれませんが、現状以上の成長はあまり見込めません。

 上昇志向というのは、「妥協しないでやり遂げることでの達成感」の積み重ねによって育まれるものです。子どもの頃からの小さな成功体験の積み重ねがあれば、多かれ少なかれ上昇志向は身に付いているものですが、それが持てないまま大人になってしまう人は結構います。そういう人に対しては、その体験のやり直しをさせる必要があります。妥協しそうな様子が見えたときには、あと一歩進んでみる勇気や機会を与える、それをひたすら繰り返していくほかはありません。

 時間はかかりますが、将来に向けての土台作りのためには欠かせない指導だということをぜひ心に留めておいていただきたいと思います。

上昇志向を刺激してこそ、優秀な人材は育つ

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