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経済同友会“次期”代表幹事に内定した 三菱ケミカルHD小林喜光社長への期待と不安

ニュースレポート

 経済同友会の次期代表幹事に、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長が決まった。発信力低下に悩んできた同友会にとっては、待望久しい巨大企業トップによる“本格政権”だ。「小林同友会」は同友会の復権を果たせるだろうか。

 小林喜光氏だけでなく、藤森義明氏・新浪剛史氏も候補に挙がる

 小林氏が同友会の副代表幹事に就任したのは2011年4月。武田薬品工業社長(現・会長)の長谷川閑史氏が代表幹事に就任するのと同時だった。その当時から、次期代表幹事の最有力候補と目された。

小林喜光社長

三菱ケミカルHDの小林喜光社長(Photo=時事)

 小林氏もまた、旧三菱化成の元社長・会長で日本経営者連盟(日経連)会長だった鈴木永二氏以来となる財界首脳の座に強い執着があった。しかし日経連を統合した経団連の役員ポストは、同じ三菱グループの御三家(商事・重工・銀行)が押さえている。トップを狙うなら同友会しかなかったわけだ。

 小林氏が実際に後継指名を受けるまでの4年間、ずっと代表幹事レースを独走していたわけではない。最初に立ちはだかったのは藤森義明氏。米ゼネラル・エレクトリックの日本法人会長として副代表幹事に就任した藤森氏は、住生活グループ(現・LIXILグループ)の潮田洋一郎会長(当時)にスカウトされ、同社社長に転じた。

 同友会は経営者個人が会員として加入する組織で、立て前としては出身企業がどこであるかを問わない。しかし大企業出身ほど発言に重きを置かれる面は否定しがたい。藤森氏は、GEのジャック・ウェルチやジェフリー・イメルトに学んだ経営者としての力量に加え、出身企業の規模が大きくなったことで一躍、小林氏の対抗馬となった。

 もうひとり、対立候補に浮上したのが新浪剛史氏である。ローソンの社長として副代表幹事に就任した新浪氏は、周知のようにサントリーにスカウトされて社長に就任した。この9月からは、小林氏と交代する形で政府の経済財政諮問会議の民間議員に抜擢された。経済界代表の民間議員は経団連の榊原定征会長(東レ会長)と新浪氏の2人だけ。「同友会の次期代表幹事はこれで決まった」という声が聞かれたほどだった。

 しかし藤森氏、新浪氏とも移籍会社の経歴の短さが〝弱点〟になった。藤森氏のLIXIL移籍は11年。新浪氏は今年サントリーに移ったばかりだ。財界活動よりも移籍先で実績を上げることが優先されるのは当然だろう。しかも藤森氏は63歳、新浪氏はまだ55歳と若い。同友会の代表幹事の任期は2期4年である。つまり藤森氏は4年後、新浪氏は8年後でも挑戦できる。このことも68歳で代表幹事になるラストチャンスの小林氏の指名に有利に働いたと言われる。

本格政権に期待される発言力向上のカギを握る小林喜光氏

 とはいえ小林氏は、決して消去法で残った次期トップではない。特に同友会の事務局には、三菱ケミカルという小林氏の出身企業に対する期待が大きかったという。

 歴代の同友会トップには論戦に長けた理論派がズラリと並ぶ。出身企業を問わずに個人の能力で選任するから当然とも言える。しかし半面で「口先ばかりの評論家集団」という有り難くない評価があることも否定できない。

 近年の代表幹事と出身企業をさかのぼって列挙すれば、長谷川氏(武田薬品)、桜井正光氏(リコー)、北城恪太郎氏(日本IBM)、小林陽太郎氏(富士ゼロックス)、牛尾治朗氏(ウシオ電機)といった具合だ。なるほど著名企業が並んでいる。しかし、その規模は概して新日鉄やトヨタ自動車など経団連の中核企業より小さい。

 出身企業の規模や取引関係が小さいことは、代表幹事の発言の影響力を低下させる。もともと同友会は財界4団体の末席だった。最も影響力のある経団連が日経連を統合して以降、トップとの距離が開いた同友会は自らの発信力の低下に苦しんできた。「いかに弁舌さわやかでも、コンサルタント会社の社長のような人が代表幹事になったら、マスコミも関心を持ってくれなくなる」との危機感すらあった。

 同友会事務局にとって、3兆円を超す規模があり、また三菱グループの有力企業の1つでもある三菱ケミカルは、願ってもない代表幹事会社なのだ。なにしろ経団連会長会社の東レと同じ素材産業の中にあって、東レよりも売り上げ規模が大きい。

 同友会の歴史を見ても、1985〜91年に代表幹事だった石原俊氏の日産自動車以来の大手メーカーの登場。かつての同友会なら、「中立性の原則」を掲げて財閥直系の三菱系企業をトップにすることに反対する声が上がったかもしれない。しかし結果的には、次期代表幹事を決めた幹事会は全会一致で小林氏を認めたという。小林氏による〟本格政権〟発足に大きな期待を寄せていた事務局から「歓声が上がった」(関係者)というのもうなずける。

 小林氏が挑むのは、こうした事務局の期待に応えて同友会の発言力を高めることだ。小林氏は政府の諮問会議の前議員であり、現在は産業競争力会議の議員として安倍晋三首相ともパイプが太い。そうした政権との関係も、活用していくことになるだろう。

 最後に1点だけ指摘しておきたい。小林氏は三菱ケミカルの現職社長だが、財界活動に専念するのであれば会長に就任するのが自然だ。無事に代表幹事の指名を受けて、三菱ケミカル社内ではトップ交代の準備が進んでいるはずである。発表は、そう遠くないかもしれない。

(文=ジャーナリスト/根島隆明)

 
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