
辞任ドミノを恐れた安倍内閣の大幅改造
連休明けの11月4日から永田町に解散話が出始めた。本誌発売時は、衆院選真っただ中だろう。

イラスト/のり
相次ぐ閣僚の「政治とカネ」の問題で国会審議がなかなか進まない中、そして消費税の税率引き上げの判断時期が迫ってきて、景気状況が好転しないまま増税実施の判断をすれば、一気に内閣支持率が急落するからだ。野党の選挙準備がほとんど進められていない中で増税実施時期の先送りをしてその是非を問う形で総選挙に持ち込んでしまえば、自民党の〝負け幅〟は最小限に抑えられるとの判断があるからだ。
今年9月ごろまでは、来年6月解散、7月総選挙で自民党が勝利し、安倍晋三首相の長期政権確実との見方が大勢を占めていた。それが急に慌てふためくような解散風が吹き荒れたのは、改造人事の失敗が最大の要因だったのだが、なぜ人事に失敗したのか。
自民党の閣僚経験者の秘書は語る。
「安倍首相にとって大きな誤算だったのは、5月17日に有名歌手Aが覚せい剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されたことにより、Aが出入りをしていた仁風林の存在がクローズアップされたことでしょう」
仁風林は、政財界の要人や官僚、さらに親しい芸能人らが懇親会を開いていたとされる施設。安倍首相も野党時代、何度か招かれていた場所だ。
しかし、問題だったのは、現役閣僚が仁風林に通っていたことだった。前出の秘書は語る。
「今年2月、安倍首相が夏に改造人事に着手すると語った時、党内では待機組が『次は入閣する』と前のめりになり、くすぶっていた不満も収まりました。いわば、アメをぶら下げて、官邸の力が一層強まったわけです。しかし、順風満帆に進んでいた内閣で、交代するのは3〜5人の小幅、ないしは中規模と見られていました」
まさか2ケタに及ぶ改造はないとの見方が大勢を占めていたのである。
しかし、Aの逮捕によって安倍首相の思惑は一気に消し飛んでしまった。
「仁風林に通っていた現職閣僚は12人いたのです。思い返せば第1次安倍政権時、佐田玄一郎規制改革担当相が政治資金収支報告書の問題で辞任し、柳澤伯夫厚労相が『女性は子どもを生む機械』発言で辞任、松岡利勝農水相の自殺、久間章生防衛相は『原爆投下しょうがない』発言で辞任、松岡氏後任の赤城徳彦農水相も事務所費疑惑で辞任と、〝辞任ドミノ現象〟で末期症状を迎えた。二度と過ちは繰り返さないためにも大幅改造に切り替える必要があったということでしょう」(政治ジャーナリスト)
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