国際

米国政治はねじれによってバランスを保つ制度

 米国の中間選挙は、共和党の圧勝に終わった。

 下院は、2年に1度、全議席が改選される。11月10日時点の結果では、共和党245議席、民主党184議席と大差がついた(6議席未確定)。上院は、2年に1度、100議席のうち3分の1ずつが改選される。これも共和党52議席、民主党46議席と大差がついた(2議席未確定)。

 全体では、共和党297議席、民主党230議席である。その結果、共和党が上院、下院で多数を占める一方で、大統領は民主党所属と、ねじれ現象が起きることになった。

 日本とは異なり、米国では、ねじれ現象は政治の不安定さを示すとは限らない。上院、下院の多数党と、大統領の所属政党は、ねじれるのが普通だ。

 上院、下院の多数党と、大統領の所属政党が一致したのは、過去50年間で通算16年間にすぎない。大統領制の米国では、適度にねじれることにより、権力のチェックアンドバランスが働くのだ。

 米国の政治制度は、日本のそれとは大きく異なる。

 例えば、米国大統領は予算案をつくる権限がない。大統領は予算教書によって、予算に対する基本的な考え方を示すのみであり、実際の予算、および予算関連法案はすべて議会がつくる。

 ただし、大統領は拒否権を持ち、法案に署名しない限り、法律は成立しない。拒否権発動時には、上院、下院の3分の2以上の賛成でオーバーライドできるのだが、これは著しくハードルが高い。

 こうした複雑な制度のために、議会と大統領はさまざまな駆け引きを使って、互いの主張を通そうとする。ただし、最終的に、両者はうまく妥協することが多い。

 むしろ、ねじれが解消したときに極端な政策が発動され、その後の摩擦の原因になることがある。

 2009〜10年は、上院、下院の多数党と、大統領の所属政党がいずれも民主党となった。10年に医療制度改革法案オバマ・ケアが成立したものの、オバマ・ケアは共和党が多数を占める議会が予算をつけなければ、実質的に機能しない。これが今も続く対立の原因だ。

 米国では、政治のねじれが悪で、ねじれ解消が善という単純な話ではない。政治のねじれが経済や金融市場に対して悪影響を与えることはないため、中間選挙後に、米国株相場は史上最高値を更新している。

中道派から強いリーダーが出にくい米国の政治構造

 米国では、構造的に、ヒスパニックなどの低所得者の人口が増えている。このため、弱者にやさしい所得再配分政策を掲げる候補者が大統領選挙で支持を得やすい。

 その点、労働者を支持基盤とする民主党の候補は有利だ。オバマがそうであるように、民主党の中でも弱者にやさしい左派の候補が勝ちやすい。

 一方で、共和党では、それらに反発する保守派のティーパーティが力を持つ。富裕層を支持基盤に持つティーパーティは、その資金力を背景に、共和党の左派候補を集中的に攻撃する。このため、共和党の左派に強いリーダーが育ちにくい。

 その結果、米国では、民主党右派、共和党左派(つまり、米国全体では中道派)から、強いリーダーが出づらい。これは構造的な現象であるだけに、今後も、幅広く支持を集める強いリーダーの出現は容易でない。

 残念ながら、現在の候補の顔触れを見て、強いリーダーの出現は期待しづらい。16年の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントンが最有力とされる。ただし、就任時に69歳、2期務めると退任時には76歳と高齢になるヒラリーが、当選後、どこまで指導力を発揮できるかは不透明だ。

 歴史的に、中東戦争、イラン革命、湾岸戦争、イラク戦争と、中東の不安定化は、世界経済と株式相場を大きく揺るがしてきた。オバマ大統領が「米国はもはや世界の警官ではない」と宣言した時の国務長官がヒラリーだった。ヒラリーが勝てば、米国は海外の軍事介入に消極的な姿勢を続けるだろう。

 それでも、外交において、米国大統領が強い指導力を発揮することができれば、世界の安全保障の秩序は保たれよう。しかし、強い指導力を発揮できないとなると、ウクライナ、イスラム国などの地域紛争が長期化、または激化する可能性が高まる。

 あるいは、08年にリーマンショックが発生した時に、既にレームダック化していたブッシュ大統領が、適切な対策を実行できず、株価が一段と下落したこともあった。平時はともかく、経済危機においては、大統領の指導力はたいへん重要だ。

 米国大統領の指導力は、政治のみならず、安全保障、経済、市場に大きな影響を与えてきた。今後の米国の政治情勢は世界の経済、株式相場に対しても、潜在的に大きなリスク要因となる。米国株は史上最高値を更新中で、株価水準は高い。政治というリスク要因が過小評価されているのかもしれない。

 その意味でも、今後の注目点は、次期米国大統領がかつてのような強いリーダーになれるか、ということだ。今後も、米国の政治情勢から目が離せない。

 

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