国際

写真:AFP=時事

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オバマは国民に語り掛けた。

“Many people have advised against taking this decision to Congress, and undoubtedly, they were impacted by what we saw happen in the United Kingdom this week when the Parliament of our closest ally failed to pass a resolution with a similar goal, even as the prime minister supported taking action,

〈多くの人がこの決断を議会にかけるなと助言してきましたが、その助言は明らかに、今週、われわれと最も近しい同盟国の英国の議会で、同じ目的の決議が、英首相自らの梃入れにもかかわらず、否決されてしまったという事実を受けてのことです〉

 議会にかけると英国のように頓挫するから大統領命令で派兵しろ、という助言が多かったようだ。

“Yet, while I believe I have the authority to carry out this military action without specific congressional authorization, I know that the country will be stronger if we take this course, and our actions will be even more effective.”

〈議会の承認を得なくとも私には軍事行動を起こす権利が付与されておりますが、しかし尚、こうした手続きを踏むことによってわが国はより強固になることが分かっておりますし、また、われわれの行動も強化されていくのです〉

 実際米国では、多くの軍事行動は1973年成立の戦争権限法に基づき大統領が決断してきた。米憲法は議会に宣戦布告権限を認めているが、第2次大戦後に議会が宣戦布告した例はない。2002年10月に、議会が大統領の対イラク武力行使を認める決議を成立させた例があるだけで、戦争権限法の規定では、大統領は軍事行動開始から48時間以内に議会に報告書を出し、議会が90日以内に承認すればよい仕組みだ。米下院の超党派の議員116人は28日、シリア攻撃の議会承認を求める書簡を大統領に送ったが、同法の手続きに従えば、短期間の限定的攻撃は大統領の独断で十分可能だった。オバマは、しかしそれをせず、8月30日夜に突然、マクドノー大統領首席補佐官に議会承認を求める考えを打ち明けた。ホワイトハウスは急きょ2時間に及ぶ会議を開き、議会承認を求める方針に転換した。最大の同盟国・英国の攻撃からの離脱が、方針転換の決定打になったことは確実とみられる。

この号が出る頃には米国の議会がシリア派兵への結論を出していることだろう。多分、派兵はされない。英国の議会の動きをオバマは、「しめた」と考えたのではないか。

 シリアのアサドはクーデターで全権を掌握した独裁者ハフィーズ・アル=アサドの次男だ。気の弱い優男風である。ダマスカス大の医学部を卒業後に英国留学してロンドンのウエスタン眼科病院で研修していたという地味さだ。後に妻となるアスマーと出会っているが、彼女の方は英国生まれのスンニ派シリア人でロンドン大キングスカレッジを卒業後、JPモルガンの投資銀行部門でM&Aを手掛けていた。彼女は見た目も華やかで、ファッション誌『ヴォーグ』の11年3月号に登場し、中東のダイアナとか「砂漠の薔薇(A rose in the desert)」と冠されて騒がれた結果、仏週刊誌『パリマッチ』が「東のダイアナ」とする記事を掲載したり、ファッション誌『エル』も「世界の政界で最もドレッシーな女性のひとり」と持ち上げたりしたが、アラブの春後の争乱と今回の毒ガス事件以降、最初の『ヴォーグ』の記事が、アメリカの大手PR会社BLJ Worldwideの仕込みだとすっぱ抜かれてしまった。アスマ夫人の記事掲載を助ける名目で10年11月、シリア政府とBLJが契約に合意していたのである。

 独裁者といわれる元眼科医と、その妻、投資銀行にいた才媛と、欧米の広報会社。一体このアサドとは、何者なのか? 元国務長官のパウエルは、かつて、この眼科医上がりと会ったことがある。全米テレビCBSで最近語っていた。

“I have no affection for Mr. Assad,”

〈アサドさんには全く親愛の情を抱いていません〉

“I’ve dealt with him, I know him.

〈彼とは対峙しましたし、彼のことは知っています〉

And he is a pathological liar with respect to my interaction with him.”

〈そして彼は、私がやりとりしてきたところから分かった限りでは、病的な嘘つきでした〉

 pathologicalとは、病理学的な、という意味である。with respect toというのは、~に関しては、という意味で頻出する熟語である。覚えておこう。


[今号の英語]prevail

 prevailとは、勝つ、広がる、適用される、という意味である。
 元国務長官のパウエルはテレビで訴えかけていた。
“We shouldn’t go around thinking that we can really make things happen,”
〈われわれは何でも実行できると思い至ってはいけないのであります〉
“We can influence things, we can be ready to help people when problems have been resolved or when one side has prevailed over the other, that’s when I think we can play a role. 
〈われわれは影響を与えることはできますし、問題解決の糸口が見えた時や、どちらか一方が勝利を得た時に、そちら側を助けることはできますし、それこそわれわれの役割だと考えております〉
“But to think that we can change things immediately just because we’re America, that’s not necessarily the case.
〈しかしながら、われわれは米国人であるから直ちに物事を変えることができると考えるのは、この場合、どうかと思われます〉
 パウエルも派兵には反対なのである。パウエルは軍隊の頂点を極めた男だ。黒人初の国務長官でもある。オバマを支持してきた。オバマと電話で話すくらいのことは繰り返していることだろう。
 強硬派に弱腰とは見せないよう強い口調で米大統領がシリアを非難しつつ、世論を反映させた議会の総意で断念させる、というシナリオは、ブッシュの周りにいてイラク戦争をたき付けたタカ派とそりが合わなかったパウエルなら書けたろう。

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