政治・経済

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックという明確な目標ができたことで、今年は東京の再開発が加速した。森ビルの虎ノ門ヒルズ開業をはじめ、いくつかの大型プロジェクトが進展している。

オリンピック後を見据え東京の再開発が進展

 2014年は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が本格的に動き出した年となった。

 肝心のオリンピックスタジアムこそ解体業者の受発注に問題が生じ、国立競技場の解体工事が遅れている。

 また難易度の高い建築デザインの実現が疑問視される事態となっている。

 その一方で、選手村が予定される晴海エリアの開発をはじめ、オリンピックを機に東京の再生を目指す都市整備や開発が着々と進められつつある。

辻 慎吾(森ビル社長)

辻 慎吾(森ビル社長)

 その中で、今年まず注目を集めたのが、森ビルが6月に開業した虎ノ門ヒルズだ。虎ノ門ヒルズは、「幻のマッカーサー道路」と呼ばれていた環状2号線を跨ぐ形で、道路の上に高層ビルを建設し一体整備する画期的なプロジェクトとなっている。

 環状2号線は、オリンピックの選手村などが予定されている湾岸エリアと国立競技場を直結する「オリンピックロード」となる。このため、虎ノ門ヒルズは、オリンピックを見据えた東京再生の1つのシンボルと言える。

 森ビルでも虎ノ門ヒルズ開業に当たり、東京の未来はここから始まるとの意味を込めた「Hello,Mirai Tokyo!」というメッセージを発信した。

 ただし、20年のオリンピックはあくまで1つの目安にすぎない。重要なのはオリンピックを通過点とし、その先までを見据えて東京を強い都市にすることだという。

 

東京各地域の再開発を通じて国際都市間競争で勝つ

 森ビルでは、虎ノ門ヒルズを起爆剤に周辺開発を誘発し、一帯を国際新都心とするために都市づくりを続ける構えだ。虎ノ門ヒルズ周辺を含め、今後10年間で10のプロジェクトを1兆円規模で展開する予定。そこには国際都市間競争に勝たなければいけないという想いがある。

 現在、国際都市間競争で日本および東京の地位は相対的に低下している。

 英会計事務所のプライスウォーターハウスクーパースが発表した「世界の都市力比較2014」によると、東京は総合ランキングで30都市中13位となっている。ロンドンやニューヨークとの差が広がるだけでなく、アジアの中でも国際ビジネス都市としてシンガポールや香港に遅れを取っている。このため、「世界の都市間競争に勝てる都市づくり」は、業界全体のコンセンサスになっている。

 一方で、東京の中でも都市開発の競争が行われている。

 23区内を見ても、森ビルの六本木・虎ノ門だけでなく、三菱地所の丸ノ内、三井不動産の日本橋、東急グループの渋谷、西武グループの紀尾井町で都市開発のプロジェクトが進められている。銀座にいたっては、森ビルと東急グループが競合している。それぞれの都市開発を通じて、東京が国際都市間競争に勝つための一翼を担う構えだ。

三枝利行・東急不動産社長

三枝利行・東急不動産社長

 三井不動産社長の菰田正信氏は、「都市間競争に勝つためには、国際ビジネス拠点にふさわしい魅力的な都市空間の創造が求められる」と都市再生の意義を語った。また、東急不動産社長の三枝利行氏は銀座の開発について「われわれの責務は、海外からも訪れてもらえる魅力的な施設を作ることです。多くの観光客が来れば、日本は活気づく。われわれは短期的に都市開発を見ていません」と語っている。

 森ビル社長の辻慎吾氏は東京の都市開発を次のように語った。

 「東京でしっかりした都市づくりができれば、アジアのヘッドクォーターが集まり需要が生まれます。だから、六本木や虎ノ門がさらに魅力的な街になればいいし、丸ノ内など各地が良くなり、全体で東京が強くなればいいのです。加えて、東京が日本のエンジンとなり、それが地方に波及すればいいと考えています」

 各地域の開発の相乗効果で国際競争力が向上し、東京の再生につながる。

(文=本誌/村田晋一郎)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る