
最近になって、「信託」に関する質問をよく受けるようになりました。いよいよ日本も、「信託の時代」に突入しつつあるようです。
ということで今回は、数ある信託の中でも、特に使い勝手の良い「自己信託」の概要と活用法について説明することにしましょう。
心得1 自己信託とは
自己信託とは、「委託者自らが受託者となる信託」のことです。
自己信託では、当事者(委任者)が、管理者(受任者)を兼ねることができます。平たく言いますと、信託の設定後も、本人が管理者となり、その財産の決裁権・裁量権を持つことができるわけです。
例えば、将来もめそうな財産を自己信託にすることで、受益者の相続人を特定・指定しつつ、生きている間は、当事者(本人)がその財産を自由に管理することができます。この点が、生前贈与と自己信託の大きな違いなのです。
心得2 自己信託は自社株承継にも有効
自己信託は、自社株を後継者に承継させる際の手段としても有効です。
例えば、自社株の後継者が決まっている場合も、いきなり譲渡するのではなく、まずは自己信託にします。すると、本人(当事者)が、管理者として議決権を有することになり、経営権をオーナーに残したまま、後継者への株式移転が可能となるのです。
また、「受益者連続信託」の仕組みを使うと、例えば、「当初の受益者は後継者の子A、子Aが死亡した場合は次の後継者の孫Bが受益者となる」といった指定を行うことができます。
心得3 自己信託の受益者の指定はタイミングを大切に
自己信託で受益者を指定すると、その時点で資産を移転したと認識され、贈与税が発生します。ですから、資産を移転するタイミングをはかることが非常に重要になります。
ちなみに、自己信託はよく、認知症になる前、あるいは進行する前に、財産の相続者を特定・指定するための手段(要は、認知症対策)として使われます。その意味でも、タイミングが大切と言えそうです。
税務・会計心得帳 本郷孔洋氏の記事一覧はこちら
雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら
経済界電子版トップへ戻る
好評連載
年収1億円の流儀
一覧へ起業して得られる経験・ノウハウ・人脈は何ものにも代え難い。--鉢嶺登(オプトホールディングCEO)
[連載]年収1億円の流儀

[連載]年収1億円の流儀
5時間勤務体制を確立した若手経営者 フューチャーイノベーション新倉健太郎社長
[連載]年収1億円の流儀
新倉健太郎氏 ~経営者は、相手の立場に立つことだと16歳の身で悟った~
[連載]年収1億円の流儀
南原竜樹氏の名言~人生の成否はDNAで決まっている 要はDNAの使い方だ~
[年収1億円の流儀]
元マネーの虎 南原竜樹 儲かるからではなく、「楽しいから」やる、と言い切れるか。
銀行交渉術の裏ワザ
一覧へ融資における金利固定化(金利スワップ)の方法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)
定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)
メインバンクとの付き合い方
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)
銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)
融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける
元榮太一郎の企業法務教室
一覧へ社内メールの管理方法
[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)
タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)
ブラック企業と労災認定
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)
電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)
女性の出産と雇用の問題
温故知新
一覧へ[連載] 温故知新
エイチ・アイ・エス澤田秀雄社長が業界各社に訴えたいこと
[連載] 温故知新
小山五郎×長岡實の考える日本人の美 金持ちだけど下品な日本人からの脱却
[連載] 温故知新
忙しい時のほうが、諸事万端うまくいく――五島昇×升田幸三
[連載] 温故知新(第19回)
最大のほめ言葉は、期待をかけられたこと--中條高德(アサヒビール飲料元会長)
本郷孔洋の税務・会計心得帳
一覧へ税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」
[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)
グループ法人税制の勘どころ
[連載] 税務・会計心得帳(第17回)
自己信託のススメ
[連載] 税務・会計心得帳(第16回)
税務の心得 ~所得税の節税ポイント~
[連載] 税務・会計心得帳(第15回)
税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~
子育てに学ぶ人材育成
一覧へ意欲不足が気になる社員の指導法
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)
子育てで重要な「言葉」とは?
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)
女性社員を上手く育成することで企業を強くする
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)
人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)
人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へ総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)
広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

新社長登場
一覧へ森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは
前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

イノベーターズ
一覧へ20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔
自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …
