政治・経済

市有地に12棟の植物工場新規雇用22人でフル操業

 東日本大震災から3年7カ月。温度や光、水などをコンピューターで管理し、年間を通じ野菜や果物を安定的に生産できる植物工場が、震災地の農業復興に威力を発揮している。

 何よりも頼もしいのは、津波の塩害や原発事故の風評被害に左右されずに早期に農業再生を図れる点だ。雇用創出効果も大きく、地域復興へ先陣を切る産業として地元の期待が高まっている。

 大震災で1735人もの死者を出し、街が壊滅した岩手県陸前高田市。あれから4年目に入ったのに、復興はなお道半ばだ。市街地をかさ上げする工事、海岸に防潮堤を築く工事がやっと本格化した。海に向かって土を運ぶ総延長3キロのベルトコンベアーが活動し、10トントラックがひっきりなしに走り回る。

ドーム式植物工場の栽培現場。作業は少人数でこなす(グランパファーム)

ドーム式植物工場の栽培現場。作業は少人数でこなす(グランパファーム)

 がれきに覆われた農地は塩害の影響が大きく、一部でようやく稲作が始まった段階だ。農林業の再開は厳しく、廃業に追い込まれた農家も少なくない。そんな中で、野菜栽培をフル稼働させているのがグランパ(横浜市、阿部隆昭社長)の植物工場だ。

 立地場所は水田地帯の市内米崎地区。県道45号線沿いの市有地2ヘクタールを借地し総事業費4億8千万円を投じて太陽光利用型のドーム式工場8棟を建設、2012年8月から出荷を開始した。販路の開拓が進んだため、14年2月に2億2千万円を掛けて4棟を増設、現在は12棟体制でフル操業を続ける。

 運営主体はグランパ傘下の農業生産法人「グランパファーム」だ。陸前高田の岩渕充由農場長によると、栽培品目はフリルレタスやグリーンリーフレタス、ホワイトセロリなど数種類の葉物類で、1日に1棟当たり400株程度の収穫が可能だ。

 従業員はパートを含め22人で、1棟に1・8人くらいが張り付き、朝8時から午後3時まで農作業に従事する。収穫した野菜はパックに詰め、全国スーパーのイオンや地場スーパーのマイヤなどを軸に東北一円に出荷している。

 夏場は地場産の露地栽培ものと激しい競争を繰り広げるが、秋〜冬はグランパの競争力が一気に高まるそうだ。

グランパの放射能フリーの農業 南相馬、亘理でも展開

 グランパの育苗施設や栽培方法は一種独特だ。直径29メートルの円形ハウスは集光と断熱効果に優れた樹脂フィルムで覆われ、内部に設置した直径20メートルの円形水槽に養液を入れて循環させながら水耕栽培する仕組みだ。

 水槽に浮かぶ250枚のフロートの中心部にまず、苗を定植する。苗の成長に従ってフロート上の苗がゆっくりと外側に向かい、外延部に到着すると収穫できる。工場では播種から収穫、出荷まで一貫生産。定植して約50日で出荷できるという効率の良さだ。

 「1棟で常時、1・5万株の作物を安定的に栽培できる」と阿部社長は説明、作業効率が良く、高効率の野菜生産が確保できると強調した。

 津波の塩害に悩んだり放射能の汚染を心配したりする被災地にとって、植物工場は利点が多い。養液栽培なので土を使わず、塩害被害の農地でも早期に農業を再開できる。密閉式の工場内での作物栽培だから、食の安全が確保され、放射能汚染から完全にフリーな農業が可能なのだ。

 植物工場では温度や湿度、CO2や養液などを電算管理し、作物に適した環境をつくり出せるので、周年栽培・周年収穫が可能となる。陸前高田のような雪国にとって、この点も大きな利点だ。

 初期投資に費用が掛かり過ぎる、運営コストがかさむ、露地物より値段が張るといったデメリットは確かにあるが、「被災地にとって植物工場はメリットのほうがずっと大きい」(陸前高田市復興対策局)と地元は評価する。

 陸前高田市で始まった東北でのグランパの植物工場事業は、福島県南相馬市や宮城県亘理町にも広がった。南相馬の場合は、復興交付金を活用してグランパが直径29メートルのドーム式工場2基を建設、市に無償で貸与した。

 市はこの植物工場と太陽光発電を組み合わせた「南相馬ソーラー・アグリパーク」を13年春に開設。植物工場は農業法人の「泉ニューワールド」が運営し、レタスなどを水耕栽培している。これに売電事業を加え、農業復興の一助にするのが市の狙いだ。

 亘理町のほうはドーム式工場2基を15年2月に建設、トマト栽培と海外輸出を目指す実証実験を経産省と連携して行なおうと狙っている。

 グランパに限らず、東北ではあちこちで植物工場が目立ち始めた。「運動靴を履いてできる農業、就職できる農業として期待している」と陸前高田市の戸羽太市長も、植物工場の進出を歓迎している。

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