国際

 国民党内部に問題があったことも事実である。実は、今回の選挙戦で、国民党は馬英九派と王金平立法院長派に分裂してしまった。これでは、まともな選挙戦は不可能である。

 台湾国民の間で国民党の特権階級(「太子党」と呼ばれる)への不満が高まっていることも影響している。6直轄市の北部3市では、台北市の連勝文、新北市の朱立倫、桃園市の呉志揚は、すべて太子党だった。もともと台湾のマスメディアは国民党に肩入れしていたが、Facebookをはじめとするソーシャルメディアの普及によって国民の情報収集手段が多彩になったことで、メディアの偏向状態が解消され、選挙戦は公平さを増したとも言える。

 また、中国大陸で働く台湾のビジネスマンの票も結果を大きく左右する。前回の総統選の際、中国大陸で働くビジネスマンが大挙して台湾に帰国し、票を投じた。その数は25万~30万人と言われているが、今回の選挙では5万人程度だったようだ。

中国への接近を忌避する若年層

 学生の票も無視できない。未だに尾を引いているのが、14年3月から4月にかけて起きた「ひまわり学生運動」による影響である。ひまわり学生運動とは、13年に中台間で締結した「両岸サービス貿易協定」を批准する直前、同協定に反対する学生が立法院を占拠し、それを阻止した事件である。

 多くの学生は、馬政権が両岸の経済的統合へひた走るのを見て、「中台統一」への危機感を募らせてきた。例えば、11月に開催された北京APECの際も、馬総統がAPECへ参加し、「第3次国共合作」について話し合うために習馬会談が行われるのではないかと推測されていた(実際には、習近平主席は馬総統のAPEC出席を拒んだため実現しなかった)。

 台湾では、政治的にも経済的にも中国の影が大きくなればなるほど、「台湾人アイデンティティ」が増大する傾向にある。特に若者にはその傾向が強い。

 ひまわり学生運動は、政治的無関心の若年層(20~35歳は約500万人おり有権者の約30%を占める)に政治がいかに大切であるかを示した。そのため、政治的アパシー(無関心)だった若年層に“政治的覚醒”が起き、「反国民党」票が中台接近を忌避する民進党へ流れたと考えられる。

 民進党にとっては、香港の「雨傘革命」も好材料となったと言える。14年9月に習主席が「一国両制」で台湾との統一を言明したが、台湾の有権者が「今日の香港は明日の台湾」と考えても不思議ではない。

 このように、今回の選挙は、国民党にとって強い逆風の中で行われたのである。

 

【国際】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

ページ:
1

2

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る