政治・経済

さくら、石狩市に新鋭のDC 冷涼な外気を生かす仕組み

 情報化社会の進展で成長が著しいデータセンター(DC)を誘致しようと、北海道の自治体が血眼になっている。夏でも涼しい気候を生かして電力消費を大幅に削減できること、広大で安価な用地を確保できることなどが誘致する側の謳い文句だ。インターネット向け情報サービス大手のさくらインターネットやNECが先端施設を相次いで開設したほか、中堅のIT各社も駒を進めており、DC分野で北海道が存在感を高めている。

 札幌の中心街から車で北へ40分、石狩川の河口に広がる石狩湾新港地域は、札幌経済圏最大の産業拠点である。総面積3千㌶の域内には製造業や物流業など700社を超す企業が進出、活発に企業活動を展開中だ。

 その一角に2011年11月、郊外型のDC「石狩データセンター」を設けたのがさくらインターネットだ。東京ドームを上回る約5万平方㍍の敷地に総額40億円を掛けて、まず鉄骨2階建ての建屋2棟を建設した。

 同社の基盤戦略部チームリーダー、花清真氏の説明によると、サーバーを収納できる棚(ラック)は1棟当たり500個配備している。「開設時の建物は2棟だから、1千個分を収容できる。敷地は広大だし、今後いくらでも増強できます」と話す。

 DCが稼働してほぼ2年、顧客は順調に増えている様子で、早くも増設工事に入っている。3棟目の建屋は13年度中に完成する予定だが、「それ以降も順次増強し、最終的には8棟分、最大4千ラックまで増やすのが当社の戦略」と意気込んでいた。

 石狩データセンターの最大の特徴は、電力消費を減らすために取り入れた「外気空調」という仕組みだ。石狩市の年平均気温は7・7度で、東京より約10度も低い。この冷涼低温の外気をうまく活用して施設全体を冷やしているわけで、電気で空調機をフル回転させる従来型のDCとは、明らかに異なる。

 DCは運用コストの中で、空調コストが大きな割合を占める。空調にかかる電力をどう減らすかが決め手になるが、ここでは外気空調の採用でコストを半分も削減できたといわれる。

NECは札幌に4番目のDC 雪冷熱活用のDCも浮上

 率直に言って、自治体がDCを誘致しても雇用効果はそれほど大きくない。国内最大級のDCといわれる石狩データセンターでさえ、常用スタッフはわずか15人ほどだ。だが、先行き税収効果が期待できるほか、①先端情報企業の立地する都市として、都市のイメージが上がる②情報産業を集積させる誘発効果がある--など、誘致する側にも利点が少なくない。

 その誘発効果だが、石狩データセンターでも現実化している。同じ施設内に日商エレクトロニクスがいち早く進出したほか、大塚商会、アイネットなども相次ぎ追随しているのだ。新規に進出したDCの周辺に、さまざまなIT各社が次々と張り付いて情報産業の裾野を広げる構図が生まれている。

 さくらインターネットに限らず、他のIT各社もDCの道内開設に強い関心を寄せ始めた。12年4月、札幌市郊外の丘陵地に約4万平方㍍の敷地を確保し、4カ所目のDCを建設したNECが1例だ。

 施設は免震構造で自家発電機を備え、災害時のバックアップ機能を果たせる設計にしてある。もちろん、冷気を巧みに利用する仕組みも採用し、空調の電力消費を6割も削減している。
 美唄市でDC新設を計画しているのがIT関連のデータホテル(本社・東京都新宿区)と共同通信デジタル(本社・東京都港区)。立地場所は同市の空知工業団地で、こちらはサーバーの放射熱を雪冷熱で冷却しようと検討中だ。13年度中に行う実証実験の結果を見て、最終的に決断する。

 旭川の情報処理会社コンピューター・ビジネス社もDC分野への本格進出をうかがっている。

税制優遇の支援制度 優位な立地環境が謳い文句

 ビッグデータ時代の到来で、大量の情報をビジネスや日常生活で多用する社会を迎えており、ビッグデータの市場規模は今後、急拡大する見通しだ。調査会社IDCジャパン(東京都千代田区)は、17年の市場規模が1015億円と13年比で3・4倍になると予測しているほどだ。

 これらの情報はDCに集約して蓄積され、外部の複数の利用者が目的に応じてインターネットなどを通じて活用するのが普通だ。DCの将来性は非常に高いわけで、先行き成長路線を突っ走る可能性が強い。

 ただ、DCは電力多消費型産業であり、電力費や設備費などのコスト管理が極めて重要だ。その点、北海道は他県より優位な条件を備えている。①冷涼な気候と低温外気を活用できる②巨大地震や大型台風の発生する確率が低い③安価で広い用地がある--などが、その理由だ。

 北海道には20施設ほどのDCが稼働しているそうだが、優位な立地条件を根拠に「施設数が向こう5年以内に2倍に増えるかも」と、道産業振興局のスタッフは楽観論を披露する。

 そんな見方に刺激されてか、道内自治体ではDC誘致熱に拍車が掛かる。典型例が石狩市で、DC誘致を目指す2つの支援策を講じている。優先誘致業種にDCを追加し、税制面で優遇する「企業立地促進条例」と、省エネ効果の高いDCを優遇する「グリーンエナジーDC立地促進条例」の2つがそれだ。

 美唄市は「ホワイトデータセンター」構想を掲げて誘致活動を展開中だ。雪冷熱でサーバーを冷やす技術を確立し、それをテコにDC誘致を狙うのが同市の戦略だ。一方、道は首都圏での大規模災害に対応する「北海道バックアップ拠点」構想を推進している。この面からもDCの道内立地が促進されそうだ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年5月号
[特集]
進化するチーム

  • ・総論 姿を変える日本の組織 個人とチームが互いに磨き合う時代へ
  • ・小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)
  • ・稲垣裕介(ユーザベース社長)
  • ・山田 理(サイボウズ副社長)
  • ・鈴木 良(オズビジョン社長)

[Special Interview]

 南場智子(ディー・エヌ・エー会長)

 「社会変革の今こそ、組織を開き、挑戦を加速する」

[NEWS REPORT]

◆社長になれなかった松下家3代目がパナソニック取締役を去る日

◆DeNAとSOMPOが提案する新たなクルマの使い方

◆ここまできたがん治療 日の丸製薬かく戦えり

◆ブレグジット目前!自動車各社は英国とどう向き合うか

[特集2]九州から未来へ

 九州一丸の取り組みで生まれる新しい産業

ページ上部へ戻る