政治・経済

高い糖度を生み出すアメーラ独特の栽培方法

 野菜や果物の新顔が続々と登場しているが、トマトの分野では静岡生まれの高糖度トマト「アメーラ」が市場の評価を急速に高めている。2003年夏に大型農園を稼働させて以来、生産施設は今や、13農場に拡大、周年栽培で大都市市場に大量出荷している。消費者からの高い支持を背景に生産規模の新たな増強を進めており、栽培面積の拡大と雇用創出を通じ地域経済を元気づける効果は大きい。

「アメーラ」の大量栽培に自信を示すサンファーマーズの稲吉正博社長

「アメーラ」の大量栽培に自信を示すサンファーマーズの稲吉正博社長

 営農組合アメーラ倶楽部が経営する静岡県焼津市の大井川農場。「甘さ」が自慢のアメーラを大量栽培するサンファーマーズ(稲吉正博社長)傘下の大型農場だ。総事業費6億円、年出荷200トンを目指して03年7月に動き出した最初の量産施設である。

 延べ床面積2・5ヘクタールの大井川農場に近づくと、16棟の連棟式農業ハウスが林立する姿に、圧倒される。ハウスは1棟1485平方メートルあり、ハウスごとに鉄パイプで組んだベッド(栽培床)が16列も並ぶ。各ベッドには2列ずつ、ポット栽培のトマトの苗が配置され、水や養液、温度を制御して栽培している。

 生い茂る濃緑の葉から青いトマトや赤く色づいたトマトがあちこちで顔をのぞかせる。手に取ると、実は引き締まりさわやかな香りを放つ。齧ると、甘さが際立っていた。

 苗は背丈ほどの高さしかないが、これがアメーラ独特の栽培方法だ。トマトの苗は通常、葉の数で12段まで育つが、アメーラは3段で先端を切り成長を止める。「低段で高さを抑えて密植し、養液を苗全体に行き渡らす技術。これが7度以上の高い糖度を生み出す」と、稲吉社長は話す。

 農場内には光と水、CO2を自動管理した育苗施設があり、保水性の高いココピート(ヤシの実の皮)の培養土で種から苗を育てている。25日で苗になり、ハウスに定植して2カ月半で収穫が始まる。

 収穫は朝8時から昼過ぎまでで、16人の女性パートが忙しく働いていた。採ったトマトはJA大井川の集荷場へ運び、静岡経済連を通じて東名阪の市場に出荷する。販売は市場出荷が99%を占める。ネット販売はするが、契約販売はしないそうだ。

アメーラトマト3つの力の源

 アメーラを栽培する農場は静岡県に12カ所、長野県軽井沢町に1カ所ある。栽培面積は合計15ヘクタールに及び、グループ内で時差生産方式(各農場で時差栽培)や産地分散方式(4〜6月は暖地の静岡県で、7〜8月は高冷地の軽井沢でそれぞれ重点栽培)を採用するなどして、周年出荷体制を確立している。

 大震災のあった11年を除くと、過去10年間で出荷量は右肩上がりで増えている。つれて販売総額も堅調に伸び、13年度は13億円に達した。

 糖度を売り物にするトマトが最近、とみに増えてきたが、アメーラは甘さと酸味のバランスが絶妙で、東京・大田市場では「アメーラが糖度の基準」とまで言われるようになった。消費者の指名買い、リピート購入の比率も高い。

 こうした評価を支えるのがアメーラの持つ商品力だ。消費者には糖度7度以上という高品質のトマトを提供し、流通業界には周年出荷で安定供給を確保する、そして、各種GAP(品質管理認証)を取得し食品の安心安全を保つ︱︱この3点がアメーラの力の源泉だ。稲吉社長は「アメーラならではの差別化が、商品価値を高める」と力説する。

 サンファーマーズはアメーラを栽培する農業生産法人10社が株主の会社で、ブランド管理や、販売管理、販促活動、栽培技術指導、経営支援などに従事。ブランド確立を最優先し、整合性のあるグループ活動を指導するサンファーマーズの活動も、アメーラの商品価値を高める重要な要素だ。

 サンファーマーズが今、掲げている経営目標の1つが年間販売額20億円の達成である。そのために打ち出したのが2つの生産施設増強作戦だ。

 1つが静岡県富士宮市に設ける朝霧農場である。床面積1・8ヘクタールの新鋭施設で、15年春から稼働を始める。運営主体は営農組合サンファーム朝霧で、販売額は年1億5千万円が目標だ。

 もう1つが静岡県小山町に新設するサンファーム富士小山の農場である。床面積4ヘクタールのハウスでアメーラとミニトマトを量産するのが狙い。稼働は16年夏で、年出荷250トンを目指す。植物工場による育苗や木質バイオマスによる加温など次世代型の機能を持つ珍しい施設だ。

 サンファーマーズで働く従業員は現在200人強。富士小山農場が稼働すると、そこだけで30人の雇用が生まれる。アメーラの普及は農業の成長をけん引し、雇用の創出を通じて地域を元気付ける大きな活性効果が期待できる。

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