政治・経済

江崎利一と松下幸之助

 牡蠣の煮汁のグリコーゲンを原料に「グリコ」を開発し、江崎グリコを一流企業に育て上げた江崎利一。筆者が氏と出会ったのは、証券担当の記者時代。ほぼ半世紀前のことだ。

 江崎グリコの社外重役の中に松下幸之助の名を発見して以来、しばしば大阪西淀川区の会社を訪れ、江崎の生きざまを取材した。

 最大の興味は、グリコが大阪・三越に販路を求め、断られ続けても日参し、ついに老舗を根負けさせた粘り腰。三越での販売開始を機に、江崎は朝日新聞・毎日新聞に、「栄養菓子グリコ、三越さんでも売っています」との突き出し広告を展開。これは、当時の松下が2股ソケットや電熱器などの新聞広告を繰り広げていたのと同じパターンだ。

 新聞社らが熱海のホテルに広告スポンサーを招待した際、江崎と松下は偶然にも同室になった。以来、境遇の似た2人は意気投合し、〝文なし会〟を結成。会は、壽屋(サントリー)の鳥井信次郎や中山製鋼所の中山重隆などの参画で有名になった。

菓子業界に旋風を起こした江崎利一

 昭和8年、江崎は新製品「ビスコ」を開発。「第2の創業」を謳い文句に菓子業界に旋風を巻き起こす。

 「頭の中は常に新機軸。意見を聞きつつ、自ら決断する。僕は創業者だから知恵を絞り、情報集めに百貨店や船場の菓子問屋などを歩き回った」と江崎。同様に松下も知恵を絞った。社内報向けに相撲番付に似た表を作り、アイデアを活字化する。番付の横綱は常に松下自身。その事業化で業容を拡大していった。

 だが、日本は軍国化。第2次世界大戦中、グリコも松下も軍需工場に指定され、米軍の爆撃対象になった。その上、敗戦で日本軍が消滅し、被害補償はゼロ。「戦後復興を叫べど、会社は借金まみれ。まさに前途多難だった」という。だが、朝鮮動乱を経た昭和30年代、日本経済は成長期に突入。グリコに追い風が吹き、松下は電化時代の到来で飛躍的な事業拡大の機をつかむ。その波に乗り、江崎・松下は人材育成を加速させ、同時に孫の成長にも期待をかけた。

 ある日、松下は江崎から「孫の勝久をよろしく。神戸大卒後、松下で2年修業して入社しました」と紹介されたが、彼は現江崎グリコ社長。一方、松下が期待をかけた孫の正幸も現パナソニック副会長で関経連副会長。衣鉢を継いでいる。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年11月号
[特集]
大丈夫? 御社の危機管理

  • ・サイバーセキュリティ後進国日本の個人情報流出事件簿
  • ・「リアル」「バーチャル」双方で企業を守るセコムとアルソック
  • ・南海トラフ地震、首都直下型地震は、今そこにある危機
  • ・「いつ来るか分からない」では済まされない──中小企業の事業継続計画
  • ・黒部市に本社機能の一部を移転したBCPともう一つの狙い(YKKグループ)
  • ・高まる危機管理広報の重要性 平時の対応がカギを握る

[Special Interview]

 大谷裕明(YKK社長)

 「企業の姿勢や行動が危機対策以上の備えになる」

[NEWS REPORT]

◆胆振東部地震で分かった観光立国ニッポンの課題

◆M&Aでさらなる成長を期すルネサスの勢いは本物か

◆トヨタは2割増、スズキは撤退 中国自動車市場の明暗

◆このままでは2月に資金ショート 崖っぷち大塚家具「再生のシナリオ」

[特集2]

 利益を伸ばす健康経営

ページ上部へ戻る