政治・経済

 全国各地でイルミネーションが瞬いている。LED(発光ダイオード)電球の普及で電飾は年々華やかさを増し、大規模な集客につながるため冬以外の季節に展示されることも珍しくなくなった。関連市場は急拡大しているが、その半面課題も少なくない。

LEDがもたらしたイルミネーションの二期作

 神戸ルミナリエに東京ミレナリオ、仙台市の光のページェントなど、かつてクリスマスシーズンになると期間限定で街頭に登場していたイルミネーション。年末の風物詩になっていたが、この頃は少し様子が違う。

 ハウステンボス(長崎県佐世保市)や大阪城(大阪府大阪市)、江ノ島(神奈川県藤沢市)など全国各地の観光地やテーマパークではウインターイルミネーションとして年が明けても点灯されているのだ。APAリゾート上越妙高(新潟県妙高市)のように8月からサマーイルミネーションが輝いている施設もある。

イルミネーションが見られるようになった

LEDの普及で多くの地域でイルミネーションが見られるようになった(Photo=時事)

 こうした変化はLED電球の普及と無縁ではない。1個当たりの単価は従来の白熱球より5倍ほど高いが、消費電力が少なく、熱を発しないため周辺の環境に優しく、風雨にさらされる戸外でも耐久性が高い。2014年のノーベル物理学賞を受賞した青色LEDの開発で3原色が揃い、複雑な光の演出も可能になった。

 メンテナンスが楽でコストも低いため多数のLED電球を使って華やかな飾り付けができる。大規模な施設では電球100万個以上というところも珍しくなく、その展示を観にお客が集まるようになった。中にはイルミネーション効果で1年間の集客数が10万人以上伸びる施設もある。仮に入場料が600円とすると、入場料だけでも6千万円だ。これに施設関連の物販、飲食費などが加わる。球切れが多い白熱電球に比べてLEDは一度購入すれば数年は保つので、毎年同じ予算を掛けなくてもいい。演出が成功すればお客が来て収益は年々上がっていく。

 やがて施設側は、せっかく100万個を超す電球を揃えているのに、次の冬まで使わないのはもったいないということに気付いた。イルミネーションを飾る土地や建物さえあれば〝二期作〟ができるではないか、と。

 江ノ島には「湘南の宝石」と名付けられた暖かい灯りを観るために夏より人が集まる。それまで湘南と言えば夏のイメージで、江ノ島近辺の観光施設も冬は閉めて春までお休みというところが多かったが、今は1年中利益を得ることができる。イルミネーションの経済効果は大きい。

 電球や部品機材、プログラム作成に設営、交通に宿泊など、もとは電球1つから始まったまっさらの市場は、今、数千億円規模と試算されている。「この先も伸びない理由が見当たらない」と業界関係者の鼻息は荒い。

LEDイルミネーションは環境にやさしくない?

 一方でイルミネーション業界には課題も多い。第1は人材の育成だ。イルミネーションの演出には音、光に最近では映像も加わっている。技術の進歩が早く、お客のニーズに応えることも必要なため、就業者には思考が柔軟でフットワークの軽い20代、30代の若手が多いが、イルミネーションの基礎知識を持つ専門家はまだ少ない。

 イルミネーションはもともと地域の電気店や造園業者が手掛けていたため、照明の専門学校などで系統だった育成ができていない。LEDの演出全般を手掛けるプロデューサーや飾り付けたときに綺麗に見える電球の向きを知っているデコレーターなど専門家の育成が急務だ。

 業界の環境整備も緒に就いたばかりだ。「空間の演出」をするディスプレー業者には従業員20人以下の中小企業が多く、ごく少数の大手企業との格差は大きい。経営体力に劣る中小は1年後の見通しすら立てることが難しく、業界自体に対する認知度も低い。

 環境保護団体の反発もある。イルミネーションを取り付ける木が傷み、周辺の生態系に影響を与えかねないという見方だ。反対派はLEDは太陽光と全く違う光なので、紫外線がないと生きていけない生物に悪影響を及ぼし、また直進性が強いので、ずっと当てっぱなしにしていると不都合が生じるのではないかと懸念している。

 さらにはLEDは白熱電球の10分の1の電力消費量だが、1つの電球の使用電力が小さくても100万個単位で大量に使えば省エネの役には立たないという批判もある。人が集まることによるゴミや騒音も問題だ。

 こうしたイルミネーション反対派と業界関係者が共生・共存していくためにはお互いの立場を尊重したルールが必要だろう。環境庁は06年に生態系や周辺住民への配慮を求める「光害ガイドライン」を策定したものの、明確なルールづくりはこれからだ。

 先行きへの不安もある。少子高齢化が急速に進展する日本では、やがて家族や友人・知人と戸外へ灯りを見に出掛ける人が減ってしまうのではないかという指摘だ。

 だが、業界関係者たちの見方は楽観的だ。口々に「そうなったら、世界の子どもたちに灯りを届けていけばいい」「自分たちの施設だけにとどまらず、技術と人と商品を海外に送り込み、そこでビジネスをしていけばいい」と話す。日本のイルミネーション技術や編集力を海外に持って行き、クールジャパンのコンテンツとして輸出すればいいと言うのだ。

 LEDという日本が開発した新技術で生まれたイルミネーション業界をさらに発展させるために、その歩みを見守りたい。

(文=ジャーナリスト/梨元勇俊)

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