政治・経済

 豊富な海外経験を持つニュースキャスターから政治家に転身して20年余。細川、小沢、小泉、安倍と時の権力者の傍らで常に政界の中心にいた小池百合子氏に徳川宗家19代の政治評論家、德川家広氏が鋭くせまる。

 閣僚を2回務めただけに、小池百合子氏は本格的な政治家であると感じた。国際派ジャーナリストへの道を取り上げた前回に続き、今回は政治家デビューの経緯、防衛大臣経験者としての安全保障観などを語ってもらった。

 

小池百合子の本音―「閣僚だけでなく地方にもっと女性議員を」

 

德川 第1次安倍内閣では首相補佐官でした。今回の安倍政権をご覧になっていて、守るべきもの、変えるものは同じでしょうか。

小池百合子

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年兵庫県芦屋市生まれ。カイロ大学卒業後、通訳、ジャーナリスト、キャスターとして活躍。92年日本新党公認で参議院初当選。93年衆議院に鞍替えし8期連続当選。新進党、保守党を経て自民党入党。環境大臣、防衛大臣、総理大臣補佐官、自民党広報本部長、総務会長を歴任。著書に『女子の本懐』、『自宅で親を看取る』など多数。

小池 基本的に安倍総理は2度目の登板で、1期目の悔しい思いをエネルギーにしておられると思います。ですから、教育や、憲法、国の守りなど、テーマは何も変わっていない。1期目の積み残しを仕上げようとしているのだと思います。

 その中で新しく加わったアベノミクスや、女性の活用などはまだまだ借り物、つまり自分がずっと考えていた課題はうまくやられるけれど、新しい課題はまだよく本質がお分かりでない。これからでしょう。

德川 女性閣僚を大量登用しようという試みも、既に2人が撃墜されています。

小池 実は私自身が2030(にいまるさんまる、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標)を言い出して、そのことを総裁選の時に全候補者にお願いをして、全員が「これは良い政策だ」と言って取り入れていただきました。結果として安倍総理が誕生し、実践しておられる。20年に30%というのは相当の大変化ですから、今、仕込みをしておかなければ間に合わないんです。

 日本は国内だけ見ていますと、黒々とした国会は当たり前のように見えますが、世界から見るとちょっと気持ち悪いですよね。だから都議会で下品な野次が飛んだりして、世界標準ではないんです(笑)。レプリゼンタティブであるならば、国民の半分である女性をちゃんとレプリゼントするべきである、と。

 それから、少子化対策は喫緊の課題でありながらこの30年間さぼってきたんですよ。これだけ専業主婦がたくさんいる国なのに、じゃあ子どもを産んでいるかというと、そうではないんですよね(笑)。高学歴であろうとなかろうと、女性たちの多くは働く意志を持っているわけですが、そのような自己実現ができない国なのは、良くないと思います。

 今回あらためて思ったのは、女性閣僚は上澄みの部分で、それをいっぱい置いても、自民党の地方議員に女性のいないことは甚だしい。だったら4月の統一地方選で、地方議会にもっと女性議員の候補を立てればいいんです。

 内閣をわーっと女性で賑やかにしていても、地方はオジサンさんばっかりですよ。地方のボスみたいな人たちが、自分のライバルになるような女性を立候補させないわけでしょう。ならば、安倍さんが自民党総裁として自民党の各支部に対して、統一地方選挙で必ず1人以上の女性候補を入れなさいという指示を出せばいいんです。

 まだまだ女性にとって政治は遠い世界なので、背中を押してあげればよいのです。最大の問題点は、国家としての意思決定の場にあまりにも女性が少ない、そのことを誰も不思議に思っていないことではないかと思いますね。

 

小池百合子が日本新党から出馬した真意

 

徳川家広・政治経済評論家

徳川家広・政治経済評論家

德川 1993年に日本新党から出馬することになった経緯は。

小池 私がアンカーをやっていたワールド・ビジネス・サテライトに、日本新党の結党宣言を掲載した『文藝春秋』の早刷りが来まして、細川さんがゲストとして来られました。その後しばらくして、細川さんの朝日新聞の鹿児島支局時代の上司だった伊藤正高さん(故人)から「細川が困っているので出てくれないか」と言われて、「えーっ」と思って(笑)。その時、私は現役のキャスターでしたから、考えられないとお断りしました。

 じゃあ、誰か友だちで出馬する人はいないかと言われて探しましたら、みんなノーと言います。別にそこで私が責任を取る必要もないんですけれども、断った皆さんの言いようが、「そんなどうなるか分からない政党から出馬するようなリスクは冒さない」というものでした。結局、私はリスクテイカーなんだと思います。そこで私は出馬するというリスクを取ったわけです。

德川 細川内閣は1年で崩壊するわけですが、細川さんの近くにおられていかがでしたか。

小池 殿さまでしたよ(笑)。非常に大局観はありますよね。で、大局観があり過ぎた、という意味で殿さまでした。

德川 90年代に話を戻しますと、朝鮮銀行問題に意欲的に取り組んでおられた理由は何ですか。それと、北朝鮮問題は中東問題とどう関係してくるのか。

小池 朝銀は、誰も知らない間に国民の税金が1兆3千億円も注ぎ込まれるという事態になっていましたから、これを国民にきちんと知らせるべきだと思いました。調べてみると、パチンコ・マネーも含めて、結局莫大な金が北朝鮮に運ばれて、ミサイルや核の開発資金になって、日本が標的になるという冗談のような話でした。

 細川さんが首相だった時に金日成が亡くなって、北朝鮮の暴発の懸念もありました。そこへカーター元米大統領が乗り込んだんです。あれで、北朝鮮問題の解決は大幅に先送りになったと私は考えています。朝銀問題ですが、要は北朝鮮に日本のお金が吸い上げられているということを国民の皆さんに知らせるとともに、お金の流れを止める必要があるということで取り上げました。随分「身に危険がありますよ」と警告もありましたが、誰もやらないんだったら自分でやってみようと。そうすると面白いほどいろいろな情報が集まって来ましたね。

 中東との関係で言えば、北朝鮮の核ミサイル技術の移転が重要ですが、これはシリアでありパキスタンでありイランですよね。こういう大量破壊兵器の技術についてはじっとウォッチしていないと分からない。そういうのをしつこくやっていこうと思っています。

 

政党を渡り歩いた小池百合子

 

細川が困っているから、と頼まれリスクを取って出馬したんです。

細川が困っているから、と頼まれリスクを取って出馬したんです。

德川 細川内閣以後は、非自民の混乱を反映して、小池先生も政党を渡り歩かれます。

小池 いちばんの分かれ目は安全保障政策ですね。今また小沢一郎さんは安全保障政策の違いはどうでもいいから野党は1つにまとまろうと言っておられますが、また同じことだと思いますね。安全保障政策が1つでない民主党にこの国を背負わせて、あの3年3カ月、どうなりましたか。安全保障がまずあって、それから社会保障ですよ。国の安寧がなければ福祉も介護もあったものではありません。

德川 その後、自民党に合流されます。清和政策研究会、つまり小泉派です。

小池 ある中堅議員に誘われましたから。小泉政権でなければ私は自民党には入らなかったと思います。小泉さんはリスクテイクでしたから入りました(笑)。

小泉さんがいなければ自民党には入りませんでした。

小泉さんがいなければ自民党には入りませんでした。

德川 それから安倍政権で首相補佐官、そして防衛大臣となります。防衛大臣は適任だったと思いましたが、就任して驚かれたことはありましたか。

小池 驚いたことはなかったですね。やりがいはありました。それに尽きます。私が第1次安倍政権で担当したのは国家安全保障会議(日本版NSC)の設立でした。その法案を準備するために会議体を作って、この間亡くなった岡崎久彦さんなど皆さんにご協力いただきました。環境大臣の時にも思ったんですが、日本は国際会議の時に経産省と外務省と環境省で何を発言するかを前もっていろいろ決めておくんですね。ところが会議はどんどん進むものですから、想定外のことが出て来た時にはいちいち本国に問い合わせなくてはならない。それでは負けちゃいますよね。

 日本版NSC創立に際して、私が感心して読んだのは猪瀬直樹さんの『昭和16年の敗戦』でした。また私の座右の書は『失敗の本質』です。どちらも縦割り主義、楽観主義、精神主義がいかに国家を弱めるかという話ですが、今の日本もあまり変わっていないところがあります。それではこれからの日本の世界における存在が非常に危ういと思います。鳥インフルエンザや外国人の国債保有の問題はミサイルやイージス艦と同じくらい重要じゃないですか。ところが情報は担当各部局で持っているというか、連携が取れていません。それでは日本が本来持っている力が削がれてしまいます。ちゃんと議論をする場所さえなかったわけです。1つの役所で答を出すのではなく、国家として結論を出さなくてはならない。そういう場としてNSCには育ってほしいと思っています。

(写真=葛西 龍)

小池百合子・東京都知事候補が本音で語る半生(前編)

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