テクノロジー

 天野祐吉さんは生前「大量生産大量消費時代から文化や環境時代への脱皮」を説かれていた。

 バブル以降の20年、結果的に日本のモノづくりは停滞した。しかし、国民はいま再び「経済成長」を求める。

 国民の価値観は確かに変化してきた。しかし、日本の社会はまだ文化・社会的価値に適正な「価格」を付与できていない。

 労働の生産性を上げ、物質的豊かさを達成した国が、モノの生産量を増やさずに労働生産性だけをさらに上げると、失業率が上がる。「それなら、生産を増やすために輸出を!」と言っても、輸入を増やさない限り、輸出増加は円高を招くだけだった。

 バブル期以降25年以上も大幅な貿易黒字が続いたために、対外資産が増大し、円はとめどなく上がり、製造業は海外逃避し、国内雇用は減少した。

 円が高くなると、国民は安い海外製品をふんだんに買うことができる。その点では、もちろんハッピーであった。しかし、物価に引きずられる形で国民の平均給与も下がってしまった。新たな元気のある産業が求められるようになった。

 経済は国民が何か新しい価値に気付き、それを皆が継続的に買い求めることによって持続的な経済成長につながる。その仕事に携わる人の雇用と収入が増えるからだ。結局、1人当たりの国民の収入が増え、経済成長につながる。新たな価値は価格がつけばモノでなくてもよい。

 実は、モノは同じでも「作り方の差により大きな価値を認める」ことでも、経済成長が起こる。その例が、よりクリーンな方法で作られるエネルギーに、より高い価格を付け、国民がそれを選ぶことである。再生可能エネルギーのようなローテクでは、同じ発電量に必要な雇用は数倍も多い。失業率も改善され、社会福祉費は少なくて良くなる。

「海外の太陽光パネルが入って来るから自分は反対だ」という人がいるが、経産省調べでは6割以上が国内メーカーのものだ。そもそも、輸入が増えれば、輸出も増やすことができる。日本の輸出入はまだそれぞれがGDPの2割以下、先進国中で最低に近い。ドイツは6割である。

 重要なことは、日本が世界最大の対外資産を有している間に、理想の国の形を作っていけるかどうかである。輸入さえ増えれば、得意な製品の輸出は自然に増えるのが日本である。わが国の基盤的な技術レベルの高さを信用していいであろう。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

会員制ホテルなどを展開するリゾートトラストは4月1日付でトップが交代し、創業者の1人である伊藤與朗会長は代表取締役ファウンダーグループCEOに就いた。共同創業者の伊藤勝康社長は代表取締役会長CEOとなった。伏見有貴副社長は代表取締役社長COOとなり、創業45年で初めて代表取締役3人体制となった。聞き手=榎本正…

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る